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障害者スポーツは「パラスポーツ」で普及へ 呼び方変更、みんなで楽しむ環境目指す(2021年4月9日配信『東京新聞』)

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義足クラスの男子100メートル決勝を走る山本篤選手(右)ら=東京都世田谷区の駒沢陸上競技場で

<超える・障害者スポーツの今>

 日本障がい者スポーツ協会は、これからの10年に向けた「2030年ビジョン」を3月に発表した。東京五輪・パラリンピックの開催決定に先駆けて2013年3月に公表したビジョンを見直した内容で、大きな変更の一つが、これまで「障がい者スポーツ」としてきた表記を「パラスポーツ」にした点だ。

◆もうひとつのスポーツ

 そもそも、漢字で「障害」とするか「障がい」とひらがなを使うのかも、障害というものの定義に絡みさまざまな意見がある。協会は「障がい」を引き続き使うが、ひらがなか漢字かはひとまず置き、「障害のある人が行うスポーツ」を「障害者スポーツ」と呼ぶなら、「パラスポーツ」は単にその言い換えではなく、より広い意味で使っていくというのが協会の考えだ。

 「一般的に障害者スポーツというと、障害者特有のものと考えがち。障害のある人もない人も高齢者も、みんな楽しめる『もうひとつのスポーツ』がパラスポーツ」。協会の高橋秀文常務理事はそう説明する。

 「パラ」はギリシャ語の前置詞で「横の」という意味がある。障害者スポーツの祭典「パラリンピック」は「パラ」と「オリンピック」をつなげた名称で、国際パラリンピック委員会は英語の「パラレル(並行の)」という言葉も用い「オリンピックと並列する大会」と説明。協会も「パラレル」の意味からパラスポーツを「もうひとつのスポーツ」と考えている。

◆日常的に楽しめる環境を

 パラスポーツはどうあるべきか。協会は新たに「果たすべき使命」を定めた。まずは障害のある人が日常的にスポーツを楽しめる環境を整える。学校でパラスポーツの理解促進の機会をつくり、指導できる人材を増やすことなどを目指す。パラスポーツの理解を通じ、共生社会に向けた国民の意識改革も使命に掲げる。

 東京パラリンピックに向けたこの数年は、協会も選手強化に力を入れがちだった。一部のトップ選手が世間に知られていく一方で、一般の障害者にとっては気軽にスポーツをする環境はまだ遠いのが現実だ。

 20日に東京であったパラ陸上の日本選手権。義足クラスの男子100メートルでは、東京大会代表に内定している山本篤選手に少しでも追いつこうと、必死に走る若手や中年の選手たちがいた。全力疾走した後は、山本選手も含め皆、笑顔で健闘をたたえ合った。全国大会に出る選手は、障害のある人の数からすればまだわずかな割合だ。

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義足クラスの男子100メートル決勝で一斉にスタートする山本篤選手(中)ら=東京都世田谷区の駒沢陸上競技場で

 プロのパラアスリートとして普及活動にも積極的な山本選手は、協会の新たなビジョンについて「(選手の)分母を広げていこうという話がものすごくいいなと思う」と評価。トップと一般の中間層にいる選手への支援があまりない現状は「もったいない」とも。自身も一緒にトレーニングをするなど「協力してできることがあればやっていきたい」と語った。

つぶや記
 この連載を始める際、タイトルを迷ったものの、直接的な言葉の方が分かりやすいかと「障害者スポーツ」にした。表記がどうあれ肝心なのはビジョンの中身。パラスポーツが社会でどんな役割を果たしていくのか、これからも見つめていこうと思う。(神谷円香)



障害者スポーツに国内初の「ダウン症の部」 保護者らから多くの反響、今後は団体競技でも(2020年10月23日配信『東京新聞』)

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国内初開催となった「ダウン症の部」で男子100メートルに出場した選手たち=8月30日、宮崎市で

<超える・障害者スポーツの今>

 宮崎県で8月30日にあった陸上の記録会の障害者アスリートの種目で、国内で初めて「ダウン症の部」が開かれた。県立みなみのかぜ支援学校の生徒3人がエントリーし競技場を走る姿がニュースになると、同校教諭で、日本知的障がい者陸上競技連盟の奥松美恵子理事長のもとに、保護者らから多くの問い合わせが集まった。

 「この学校に入学すれば大会に出られますか?」「特別支援学級の担任で子どもを出したいが、次はいつありますか?」。想像以上の反響に、奥松さんは「あらためてダウン症の部のニーズを感じた」と、今後、全国規模の大会でも実施を視野に入れている。

 ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」で、染色体の突然変異により先天的に生じる。多くが知的障害を伴い、身体的にも筋肉の緊張が弱いなどの特徴があるため、知的障害のみの人に比べ競技力は劣りがちだ。これまでは知的障害の競技クラスは一つだけで、ダウン症の人には不利だった。

 知的障害はそもそも定義自体が明確ではない。厚生労働省は知能指数(IQ)が「おおむね70以下」を知的障害とし各種調査を行っているが、各自治体が交付する療育手帳は判定基準がそれぞれ違う。国際知的障害者スポーツ連盟(Virtus)が定める国際大会への参加資格は、IQ75以下で社会適応に何らかの制限があり、それが18歳未満で生じていることだ。

 障害の軽重を決める難しさもあり、身体障害のような程度による競技クラス分けはなかった。しかしVirtusは2016年からダウン症など障害がより重い選手のクラス(エリジビリティグループ)を試行し、従来の知的障害のクラスと分けた。昨年10月、4年に一度の知的障害スポーツの国際大会「グローバルゲームズ」で、陸上や水泳などの個人競技で初めて新クラスの種目を行った。

 上智大講師でVirtusの谷口広明理事は「競技力に有意な差が認められる中で、クラスの新設は必須だった」と話す。多くが身体障害も伴うダウン症などの人は、競技を始めてもなかなか勝てずにやめてしまう。Virtusでは今後、団体競技でも新たなクラスを設けるという。

 国内初の「ダウン症の部」は、この流れを受けたものだ。谷口さんも理事を務める全日本知的障がい者スポーツ協会は、加盟する国内の障害者スポーツ競技団体を対象に、新たなクラスについての説明会を開き、選手の開拓を図っている。地域の医師と連携し、メディカル面での競技サポート体制も構築中だ。

 Virtusはダウン症などのクラスとは別に、IQ76以上で知的障害はないが自閉症の人を対象にしたクラスを新設する方針を示している。社会のニーズが新たな種目を生んでいる。

 つぶや記 真剣勝負で競い合うのがスポーツの楽しさの一つ。競技クラスの細分化の是非は、障害者スポーツで議論になり続ける課題だが、「自分は競えない」と舞台に立てなかった人に活躍の場ができるのは、スポーツの裾野を広げる一歩になると思う。(神谷円香)




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