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(論)[ひめゆりリニューアル] 平和のバトン次世代へ(2021年4月11日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 改装工事のため休館していた糸満市のひめゆり平和祈念資料館が12日、リニューアルオープンする。

 資料館は1989年、ひめゆり同窓会によって設立された。戦場で多くの学友を失った元ひめゆり学徒が「証言員」として展示室に立ち、沖縄戦を伝える活動を続けてきた。

 そう遠くない将来に訪れるであろう「体験者なき時代」に、沖縄戦の記憶をどう継承していくか。2000年に入って資料館が特に力を入れてきたのが、次世代に継承していくためのさまざまな取り組みである。

 リニューアルはその作業の一つ。

 1回目の改装は04年。高齢化する証言員が、自分たちが説明しなくても伝わる展示を目指し写真や映像など視覚に訴える模様替えを行った。

 翌05年、戦後生まれの「説明員」を採用した。体験者が証言員として担ってきた仕事を引き継ぐためだ。

 18年には戦後生まれの普天間朝佳さんが館長に就任し、体験者から非体験者へ戦後世代を中心とした運営に大きく舵(かじ)を切った。

 それからさらに年月を重ねた今回のリニューアルは「戦争からさらに遠くなった世代へ」がテーマ。親はもちろん祖父母も戦後世代という時代を迎え、沖縄の子どもたちにとっても戦争は実感の持てない「歴史」になりつつある。

 ひめゆり学徒が体験した沖縄戦の実相を若い世代にどのように分かりやすく伝えていくか。リニューアルが目指した最大の課題である。

■    ■

 ロビーで最初に目に入るのは沖縄戦に動員される1年前に撮られた生徒たちのにこやかな集合写真。廊下を進むと校門へ続く相思樹並木のイラストが現れ展示室へと誘う。

 新たな展示では、イメージしやすいようにイラストを多く取り入れ、楽しかった学校生活など生徒の表情が見える写真を増やした。

 動員された後、壕内で負傷兵の手術を手伝うイラストは生々しいが、平和な青春時代を見た後だけに、それを奪った戦争がコントラストをもって浮かび上がる。

 継承とは話を聞くだけの一方通行的な行為ではない。体験者と非体験者の交流の中で生まれ育っていくものだ。

 若い職員は体験者から多くを学び、体験者は若い職員の疑問や感想に触発され証言の中身を深めてきた。ともに学び合うという関係は、全国の平和ミュージアムの中でも際立ち、その成果がリニューアルにも生かされている。

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 ピーク時に100万人を超えた入館者は、減少傾向をたどり19年度は50万人を割った。新型コロナウイルスに見舞われた20年度は7万人にも届いていない。

 資料館は公的資金に頼らず入館料収入によって運営されている。まさに「コロナ後」、どのように入館者を増やしていくか、支援が欠かせない。

 日本各地にある平和ミュージアムは生存者が語る時代から場の力が重視される時代に移行しつつある。地域社会の中で資料館を自分たちのものとしてはぐくんでいく取り組みが求められる。




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Author:gogotamu2019
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