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DHC吉田会長、ネット上で「コリアン系」ヘイト声明 荒唐無稽な主張次々(2021年4月13日配信『東京新聞』)

 化粧品会社DHCの吉田嘉明会長が、再びヘイト満載の声明を公表した。企業のヘイト問題を取り上げたNHK番組に対する反発から、NHKを含むマスコミや政財界はコリアン系に牛耳られているなどと次々に「敵認定」した揚げ句、「NHKは日本の敵」と結んだ。理解不能だが、ネット上では支持する声も上がっており、影響力は侮れない。こうした思想・姿勢に社会はどう対応していくべきなのか。(石井紀代美、佐藤直子)

◆「NHKは日本の敵」「経団連にコリアン系増殖」

 「小生は日本の朝鮮化を何より危惧しているが、その元凶であるNHKからの問い合わせに小躍りした」。根拠もなく、のっけから挑発的な文言を並べる1つの「声明」。DHCの吉田嘉明会長が、同社の公式オンラインショップのホームページに掲載したものだ。

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DHCのホームページに表示された吉田嘉明会長のコメント

 色濃くにじみ出るのは、吉田氏の倒錯した認識だ。それによれば、「NHKは幹部・アナウンサー・社員のほとんどがコリアン系」だそうだ。番組の出演者も、学者や芸能人、スポーツ選手の多くがコリアン系だという。

 吉田氏はさらに「ひどいことに偶然を装った街角インタビューさえコリアン系を選んでいる」とも書いている。それは名前や顔、「何よりも後頭部の絶壁ですぐに見分けが付く」のだと主張する。身体的な特徴から人の属性を決め付ける危険な考え方だ。

 吉田氏の矛先はNHKだけではない。政治家も、自民党の一部のみならず、野党は「コリアン系だらけ」と断言。有名企業が名を連ねる経団連にも同じ視線を向ける。「ここ数十年の間に続々とコリアン系が増殖して、幹部や一般会員だけでなく、会を支える事務局員までコリアン系で占められるようになった」とし、自身はそうした状況に「呆れ果て」、すでに退会したという。

 さらに「コリアン系」だけでなく、中国への敵視もあらわだ。「コリアン系は長い歴史の中で中国を常に宗主国としてきたから、宗主国のやることには逆らえないDNAができている」のだそうだ。そして「NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう」と締めくくっている。

◆過去にも公式サイトで蔑視表現

 吉田氏のこうした声明は今回が初めてではない。昨年11月にも、「ヤケクソくじについて」と題した文章を同社ホームページに載せた。ここで吉田氏は、サプリメントの販売で競合する大手「サントリー」をやり玉に挙げ、「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人」「ネットではチョントリーと揶揄されている」と記述。在日コリアンを蔑視する表現を使った。

 NHKは、9日朝の番組「おはよう日本」で、今もこの差別表現が掲載されたままになっていることなどについてDHC側に取材し報道。これをきっかけに吉田氏が自身の考えをまとめたものが、冒頭の「声明」だ。

 いずれにしても、荒唐無稽なヘイトがあふれた内容なのだが、DHCは、このような考えを企業理念として掲げているのだろうか。また、問題だとも考えていないのだろうか。「こちら特報部」が同社に質問したところ、「ご依頼いただきました件の回答につきまして、現在折り込みチラシを作成しておりますので2~3週間お待ちいただけますと幸いです」と回答があった。

 一方、NHKの広報担当者は「(『おはよう日本』で)放送したことがすべてです」とした。

◆名指しされた団体は取り合わず

 さて、吉田氏から「コリアン系」と名指しされたところは、この声明をどうとらえたか。「他の会社のホームページに掲載されていることなので、当会として特段コメントはありません」(経団連の広報担当者)、「コメントできない」(立憲民主党本部の報道担当者)、などとまともに取り合う空気はない。

 それは同様に「コリアン系ばかり」と決め付けられたマスコミも同じ。特に民放は、前回の声明も今回の声明もほぼ報じていない。

 DHCはテレビCMも盛んで、それが影響しているのではとの見方もあるが、民放各社に聞くと、「民放連の放送基準や内規に沿ってその都度判断している」「内規や個別の案件についてはお答えしていません」などと回答した。ある民放の担当者は「そんな企業でも、個別のCM自体は問題ない場合もあり、判断は難しい」と漏らす。ちなみに本紙は「広告掲載について、一定基準に照らして判断している」(広告局)。過去には同社広告を掲載したこともあるが、近年は依頼がなく掲載していないという。

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吉田会長名の「声明」を公式オンラインショップのホームページに載せているDHCの本社ビル=東京都港区で、本社ヘリ「おおづる」から

 ただ、これだけ知名度の高い企業のトップによる、ここまで明確なヘイト声明を、このまま放置していていいのか。

 「在日コリアンが日本を支配しているなどとこれほど繰り返すのは、今どき珍しい。コテコテの、古風なネトウヨ言説だ」と語るのは、立教大の明戸隆浩助教(社会学)だ。

 「ここまで醜悪な言説が引き出されたことで、世間はもう吉田会長のひどさを疑う余地がなくなった。ネットの反応を見ると、これまで『表現の自由』のひとつと会長の発言を許容していた人も、今回は『さすがにこれはない』とドン引きしている」

 明戸氏は、今後の影響について「DHCと取引している企業やふるさと納税事業などで連携している自治体も、このヘイトを見逃して取引を続けたら同罪だ。ヘイト問題はDHC一企業の問題にとどまらなくなった」と分析する。

 実際、今月2日の衆院法務委員会で武井俊輔氏(自民)がDHCのヘイトを問題とみて質問したのに対し、上川陽子法相は「企業にはむしろ率先して、ヘイトスピーチを含めたあらゆる差別、偏見をなくし、人権に配慮した行動をとることについて考えて、深く行動していくことが大事」と答弁した。

◆政府や自治体は「存続を許さない流れ」作る必要あり

 こうしたヘイトに社会はどう向き合っていくべきか。ジャーナリストの安田浩一氏は「差別を許容してきた日本社会はDHCを甘やかしてきたが、企業は株主や従業員だけでなく、消費者や地域とつながる社会的責任ある存在だという認識を徹底しなければ」と指摘する。

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川崎市ヘイト禁止条例を批判する保守系団体の街宣活動に抗議する市民たち=11日、JR川崎駅前で

 近年では、財力と知名度がある実業家が、ヘイト的主張に染まり、政治運動を主導することさえある。「高須クリニック」の高須克弥院長は、一昨年のあいちトリエンナーレで展示された「平和の少女像」を「反日の象徴」だと批判し、昨年、愛知県知事のリコール運動を主導。8割もの不正署名が判明した後も、陰謀だなどと反論した。

 前出の明戸氏は「常軌を逸したヘイトも放置すれば巨大な勢力になり得るのは、トランプ前米大統領の存在から明らか。差別に対する社会の基準を変え、感覚をまひさせる。見逃さず、ヘイトだと確認していく必要がある」と指摘。

 安田氏は「差別やヘイトを繰り返す企業と連携するリスクを考え、ヘイトをするような企業を存続させてはいけないという流れを政治の場や自治体で作らなければならない。差別は個人のモラルのみの問題ではなく、被害者を生み出す問題としてとらえることが大切だ」と話した。

◆デスクメモ
 吉田氏は声明で、今やコリアン系は日本の中枢を占めている大マジョリティーなのだと訴える。となると、DHC商品のお客も相当数コリアン系ということになる。何しろ日本の大マジョリティーだから。お客に向かって盛大にヘイトを連発していくスタイルは同社をどこに導くのか。(歩)





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