FC2ブログ

記事一覧

新出生前診断 支える仕組みの強化を(2019年8月11日配信『茨城新聞』ー「論説」)

 妊婦の採血という簡便な方法で、胎児の染色体異常の可能性を調べる「新出生前診断」の在り方について、厚生労働省が秋にも検討を始めることになった。

 結果によっては妊婦が「産む、産まない」という重い決断に直面するため、医学系学会の自主規制により、厳しい条件の下で行われてきた検査だが、条件を緩和する案を巡り、学会間で意見が対立したのがきっかけだ。

 この検査の普及は「病気の子どもの存在を否定しかねない」などの懸念が指摘されている。倫理的な課題をはらみ、かつ進展が急で利用への関心も高い医療技術とどう向き合うか。広く社会で議論する好機と考えたい。

 検査は妊婦の血液中に混じる胎児のDNAを基に、胎児にダウン症、13トリソミー、18トリソミーという3種類の染色体異常があるかどうかを、確定ではないが、かなり高い精度で判定する。

 国内で始まったのは2013年4月。検査を受けるかどうか、また、受けた場合の結果をどう受け止めるかについても妊婦らが十分に理解した上で決めるべきだとして、日本医学会が遺伝医学の専門家らによるカウンセリングができる病院を実施施設として認定し、対象も高齢の妊婦らに限定して行われている。昨年9月までに約6万5千人が検査を受けた。

 16年ごろから認定外の民間クリニックが検査を始め、不十分なカウンセリングで妊婦が戸惑う事例が問題化した。それを受け日本産科婦人科学会が、研修を受けた産婦人科医がいれば小規模な施設でも実施できるようにする条件緩和策を計画。これに対し日本小児科学会などが反発したため、厚労省が「妊婦らに不安が広がりかねない」と、検討開始を決めた。

 国が議論の場を設けることは歓迎したい。まずは認定外の施設によるものの把握を含め、この検査の実施状況を評価し、必要な要件を整理し直すことは欠かせない。

 ただ、産まない選択につながり得る出生前診断は他に何種類も存在する。新出生前診断自体も、研究の進展により、検査の対象疾患は拡大している。現在は陽性の結果が出た場合、確定診断のために、おなかに針を刺す羊水検査などが必要だが、将来は精度が向上し不要になるかもしれない。高齢出産の増加を背景に、出生前診断全般への関心は高まっているといわれる。国の検討はこうした広がりを見据えたものであってほしい。

 特に妊婦や女性への支援の観点で注文したいことがある。現行の認定施設での遺伝カウンセリングは一定の評価を得ているが、あくまで検査の前後、ごく一時期の関与にとどまる。染色体異常の可能性が高いと分かった上で出産し子育てを始める人、検査後に妊娠中絶を選択した人が、継続的に支援を受けられる機会は、いずれも非常に少ないのではないか。
 
 民間には注目すべき試みがある。医師や障害のある子どもの母親らでつくる千葉市のNPO法人「親子の未来を支える会」は、検査実施機関でも、患者や障害者の家族会でもない第三者の立場で、出生前診断に関する悩みの相談を、インターネットなどを活用して受けている。かつての相談者が相談を受ける側に回るケースもあるという。こうした新しい手法も参考に、女性らの支援を充実させる道を考えたい。






スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ