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対馬丸惨事75年の夏(2019年8月25日配信『中国新聞』ー「天風録」)

 「孫は来てよし、帰ってよし」とよく言う。水あそびして毎日が主人公=中田尚子(なおこ)。目を細め孫を見守る光景を想像してもいい。その疲れがどっと出てくる夏の終わりである

▲75年前の夏、雪を見たい、と浮き立つ子たちがいた。初めての長旅とあれば無理もない。戦局悪化の中、沖縄では本土への学童疎開が推奨されていた。だが航路は敵潜水艦が出没する魔の海域とあって、家族は不安で仕方がなかった

▲ある国民学校の校長は高齢者に、膝詰めで談判する。手放したくないという思いは、父母よりも祖父母の方が強かったからだという。やがて子らを乗せた対馬丸の沈没を知って、校長はおのれを責めた

▲生きて帰った上原清(きよし)さんの証言を聞く機会があった。乗船して救命胴衣が配られたが、中にススキの穂が詰めてあった―。船団の僚船の水兵が助けに来ると思ったが―。期待と不安がない交ぜになった旅はあまりにも突然、暗転した

▲上原さんは友だちのシーちゃんと一緒に、白い靴を新調して船に。靴は泳いでいて脱げた。シーちゃんは靴も、その身も海に没した。お孫さんが履いてきた靴をまた履いて帰るような、何げない夏の終わりを誰しも願っている。




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