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児童虐待「介入大国」から予防へ 米国の転換に何を学ぶ(2019年8月25日配信『朝日新聞』)

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デボラ・デーロ教授

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タブレット型端末のアプリを活用した東京都足立区の家庭訪問

 米国の児童虐待対策は、どのようにして「予防重視」に行き着いたのか。日本が参考にできることは。40年以上にわたって虐待対策の評価・研究や政策立案に関わってきた、シカゴ大のデボラ・デーロ教授に聞いた。

 虐待対策には、魔法のような一つの特効薬など存在しません。それなのに、虐待死が報じられるたびに世間は胸を痛め、「リスクがあるなら子どもを保護しないと」と、親子を分離する「介入」に解決策を見いだしがちです。

 日本より約30年早く児童虐待防止法が成立した米国も、同様の空気が社会を支配し、「介入大国」の道を突き進んできました。でも米国は今、予防と早期の家族支援こそ重要で効果的、という教訓を得ています。

 具体的には、米国では1980年代までに、通報・調査・保護の態勢が整いました。でも、親元に帰れない子の中には、里親家庭を何十カ所も転々とする子もいることが問題になった。分離後も子どもの人生は続くという、当たり前で重い事実に気づいたのです。

 そこで90年代になると、予防や、親子の再統合のための「親支援」の重要性が見直され始めました。なかでも、特に低所得・初産の家庭を看護師が妊娠期~2歳に定期訪問するNFPというプログラムは、虐待が半減するなどの効果が実証された。私も開発に参加した、5歳まで通うHFAという家庭訪問プログラムと合わせて全米で支持され、爆発的に広がりました。

 妊娠期は、女性にとって大きな変化の時です。助けを必要としやすく、信頼感の中でケアを提供できれば、人生を変える機会になり得る。育児だけでなくパートナーとの関わり方、メンタル、雇用や金銭管理など、幅広い問題に関われます。パートナーとも接触しやすく、支援も円滑に進めやすい。

 こうした問題が悪化してから親子を分離したり、家族を丸ごと支援したりするのは、コストもかさむ上に効果が得にくく、当事者の親子も支援者もしんどい。予防を重視した、多様な支援が大切です。

 ただ米国でも、2010年にオバマ政権が予防の柱である家庭訪問に連邦予算をつけるまでの道のりは、長いものでした。子どもの命を救うことに異論を唱える人はいなくても、「ダメ親」に税金を使うのはおかしい、という意見が根強くあるからです。多くの人にとって、虐待する親は別世界の人間で、虐待するような親は子どもを持たない方がいいと思っている。この壁を乗り越えるためには、社会を説得するための効果の検証が不可欠です。

 そして虐待の原因は必ずしも親だけではなく、環境にある場合もあります。単純に親を再教育すればよいというものではなく、頼れる人やサービスなど家庭支援の多様な「資源」を地域に作ることも大切です。

 残念ながら、どんなに支援しても育てられない親もおり、介入も必要。その場合は、的確にリスク判断をして分離した後、子どものために永続的な家族を見つけてあげる態勢を整えることも不可欠です。

 経済の成長期に虐待という問題を「発見」した米国と異なり、日本は低成長の時代に入ってから虐待対策を手厚くしなければならない難しい状況です。予防や介入、家族の再統合。どこにどれだけ予算をつけるのか、効果的な手法は何か。よく考えて進むべき局面だと思います。その意味で米国の曲折は、日本にとって参考になるでしょう。

家庭訪問にアプリ…日本でも予防目指す動き

 日本でも、米国の取り組みなどにならい、より効果的な虐待予防を目指す動きが広がっている。

 「泣きやんでくれないのは気になる?」。東京都足立区の一軒家の居間で、生後6カ月の女児を抱く母親(41)に、保健師歴10年の森川千代子さん(48)が問いかけた。赤ちゃんが泣きやまないと悩んだ親が、子どもを強く揺さぶり、重い障害や死に至らせてしまうこともある。森川さんは、同区が東京医科歯科大と連携して開発・導入したタブレット型端末のアプリを母親に操作してもらい、泣きやまない時の対処法を動画も交えて伝えた。

 乳児のいる世帯への家庭訪問は、かつて国内では自治体レベルの取り組みだったが、虐待の早期発見のため、09年度施行の児童福祉法で生後4カ月までに全戸を対象に行われることになった。ただ、足立区では対象世帯5182(18年度)に対し、訪問の主力を担う保健師は約70人。限られた時間で、親たちの状態や悩みと向き合わざるを得なくなっている。

 そこで昨年度から試験的に導入したのが、このアプリだ。親に質問に順に答えてもらうだけで心身の状態がわかり、虐待リスクを把握する助けになる。育児方法やDVの相談先など、様々な動画や情報も見ることができ、より細やかな支援が可能になっている。

 森川さんは、子どものころ虐待された人が大人になった時に精神障害が現れ、生活保護を受けながら見守り対象になる例も見てきた。「負の連鎖を断ち切るには、予防的な早期支援が重要。支援を届きやすくするためなら、経験で培った直感の上に、こういうツールも必要」と話す。

 アプリを監修した東京医科歯科大の藤原武男教授(公衆衛生)は「介入も大事だが、もっと国は予防に注力すべきだ。家庭訪問の充実に加え、人も増やす必要がある」と訴える。



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