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新出生前診断(2019年8月30日配信『デイリー東北』ー「時評」)

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断について厚生労働省は秋にも、実施の在り方を議論する検討会を設置する。この方針を受けて、日本産科婦人科学会は実施施設の拡大を目指す新指針を決定しながら、運用を保留した。

 出生前診断は胎児の中絶につながりかねない。優生学的な思考を排するとともに、妊婦らの自己決定権尊重も重要で、矛盾する原則をどう調整するか、倫理・社会的な難問だ。産科婦人科学会だけで実施施設を拡大するのはやや無理があった。

 診断は技術の進歩で登場。1970年代の羊水検査、90年代の母体血清マーカー検査と20年ごとに激論を経て抑制気味に定着した。2010年代にまた新出生前診断の大波に直面した。

 新出生前診断は妊娠10週以降の初期に妊婦の血液に含まれる胎児のDNA断片を調べる。ヒトゲノム(全遺伝情報)解読とDNA解析技術の急発展で実現した。簡単な画期的方法で、当初の対象はダウン症など3種類の染色体異常。陽性の場合、羊水検査で確定する必要がある。ほかの多くの遺伝疾患の診断も可能になり、精度が上がってきた。

 欧米の検査会社が世界でビジネス化し、自費診療で20万円程度かかる。従来の出生前診断に比べて高額だが、妊娠10週以降の初期に採血するだけで済むので、診断を受ける妊婦は35歳以上を中心に増えている。

 日本では13年から臨床研究として実施された。産科婦人科学会や日本小児科学会、日本人類遺伝学会などが基準を協議し、遺伝カウンセリングができる医療機関に限定し、施設を日本医学会が認定した。認定施設は当初の15から約90に増え、18年9月までに約6万5千人が診断を受け、886人の妊婦で胎児の染色体異常が確定した。異常が分かった妊婦の大半は中絶したという。

 問題は16年以降、ネット広告を出した無認定の民間クリニックに新出生前診断が広がったことだ。美容外科などでも手軽に診断を受けられ、今や実施数は認可施設より無認可施設が多いとの指摘もある。高齢出産が急増してニーズが高まり、診断の受け皿の整備は万全でなかった。

 出生前診断は妊娠を医学的に支えるのが役割である。技術と商業化の進展が目覚ましい中で、無認定施設の横行は放置できない。その実態調査と厚労省の議論に時間の余裕は少なく、産科婦人科学会の新指針も検討に値しよう。遺伝カウンセラーらが十分ケアする態勢も急いで整えるべきだ。



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