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年金財政検証 老後への不安は拭えない(2019年8月31日配信『山陽新聞』ー「社説」)

 「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」とした6月の金融庁審議会の報告書で高まった国民の年金不安を拭えたとは言い難い。厚生労働省が先日公表した公的年金の財政検証結果である。少子高齢化の中でも制度は持続できるが、そのために給付は抑えられることが改めて示された。

 厚生年金に40年間入る平均的な賃金の夫と専業主婦の妻のモデル世帯は2019年度の受給額が月22万円で、現役世代の平均手取り収入に対する割合を示す「所得代替率」が61・7%だ。受給額は47年度に月24万円となるものの、現役世代の収入も増えるため、代替率は50・8%に下がり、実質的な価値は2割近く目減りする。

 働き方や家族構成が多様化する中、こうしたモデルに当てはまる世帯は減っている。夫婦共働きや一人暮らしなどさまざまな世帯も示し、理解を広げることが求められる。

 実際、自営業者ら国民年金だけ受給する人の影響はサラリーマン世帯より大きい。夫婦での受給額は19年度の13万円から、47年度に12万4千円と額面上も減ることになる。

 これは経済成長が標準的に進むケースで、低成長の場合は給付がさらに減る。特に低年金の人への対策は、生活保護やその手前の生活困窮者自立支援制度などの備えも含めて喫緊の課題と言える。

 財政検証は長期見通しを5年に1度試算するものだ。この結果を基に厚労省は制度見直しを本格化させ、来年の通常国会に法案提出を目指す。

 改革案の一つが、厚生年金の対象拡大である。現在、加入義務があるのは従業員501人以上の企業で週20時間以上働くといった人である。これを広げると給付水準は上がるが、企業の保険料負担も増え、反発が予想される。

 実現の可能性が高いのは、受給開始時期を70歳を超えても選べるようにして受給額を増やす案だろう。高齢者にも働いて社会の支え手となってもらう流れに沿う。

 働いて一定の収入がある60代以上の年金を減額する「在職老齢年金制度」の縮小も政府は検討している。高齢者の働く意欲をそぐなどの指摘があるためだが、現役世代の保険料負担増が必要になる。恩恵を受けるのが主に高所得者であることも議論を呼ぼう。

 こうした今回の見直しは小幅にとどまる印象が否めず、年金不安をどれだけ拭えるか不透明と言わざるを得ない。

 財政検証で看過できないのは、前回と同じ時期の6月の公表とみられていたのが大幅に遅れたことである。年金の目減りが避けられず、7月の参院選への影響を懸念した与党に配慮し、厚労省が遅らせたという見方もある。

 こうした疑念は年金不信をさらに高める。政府が年金の安心をことさらに強調するのも逆効果ではないか。見直しで大切なのは、国民が納得できる議論を丁寧に重ねていくことである。




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