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障害者対策 「仏つくって魂入れず」の日本 山田肇氏(2019年9月16日配信『産経新聞』-【iRONNA発】)

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山田肇氏

 障害のある「れいわ新選組」の2人が参院議員に当選し、障害者対策のあり方をめぐる議論が活発化している。だが、すでに日本は国連の障害者権利条約を批准し、これに沿う「障害者差別解消法」も整備済みのはずだ。同法が名ばかりと指摘される実態とは。

 そもそも、わが国は2006年に国連で採択された障害者権利条約を批准し、障害者に関わる法体系を整備してきた。それなのに現状は「仏つくって魂入れず」の典型である。

 障害者権利条約は世界約160カ国が署名している障害者に関する人権条約だ。第29条は「政治的及び公的活動への参加」で、選挙人(有権者)と被選挙人としての権利を定める。ポイントは「締約国は、障害者に対して政治的権利を保障し、及び他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を保障する」である。

 さらに、障害者権利条約の批准にあたって制定された国内法の一つである、障害者差別解消法は第7条で「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」と定めている。

 ◆現状は付け焼き刃

 「障害があるのに立候補して当選したのだから、当選後の活動が円滑に進むように手当てするのは障害を持つ議員の責任である」とは、これらの国際法と国内法からは読み取れない。障害者権利条約の根本は、障害者の社会参加への障壁を除去するのは社会の側の責任というもので、それは国内法にも引き継がれている。

 しかし、すべてが社会の側の責任といわれても躊躇(ちゅうちょ)するかもしれない。そこで、条約も国内法も「合理的な範囲での配慮を求める」となっている。莫大(ばくだい)な費用がかかる場合や、せっかく配慮しても利用される可能性がほとんどない場合を除くためだ。
 
 平成27年に東京都北区で聴覚障害者が議員に当選した際、急遽(きゅうきょ)議場に音声同時翻訳ソフトが導入された。障害者が議員になる可能性を想定して北区議会があらかじめ準備しておかなかったためだが、付け焼き刃で対応しようとする状況は今の国会も同じである。

 合理的な配慮の範囲がどこまでかについて、法の定めも、政府の公式見解も、判例もない。法体系は整備しても、その実施に不可欠な合理的な配慮の範囲について規定していなかったわけだ。だから、障害者議員の国会登院中の介護費用をだれが持つかなどについて付け焼き刃の議論が起きている。国際法も国内法も知らない論者が意見を発している恐れすら感じる。

 ◆根底に「自分は健常者」

 今、国会で進められている配慮は、ごくごく当たり前の対応である。障害を持つ国会議員がすべての審議に参加できるようにすることで莫大な費用がかかるわけではないし、実際に利用される。

 れいわの議員の介護費用について「参議院が負担するのは不平等だ」との主張もあるが、根底にあるのは「自分は健常者だ」という思い込みだろう。そもそも、自民党前幹事長の谷垣禎一氏のように、事故で脊髄を損傷して障害者になる可能性は、与野党問わずすべての国会議員にある。自分が障害を負ったときに排除されても構わないか、それを考えてから発言すべきだ。

 当たり前だが、社会が考えるべきは議員向けの配慮だけではない。聴覚障害者が議会を傍聴しても、音声同時翻訳ソフトなり要約筆記がなければ、どんな審議が進んでいるか伝わらない。

 これは障害者の傍聴する権利を制限したことに他ならないのだが、どの議会も気づいていない。車いす利用者が傍聴しようとしたら傍聴席まで車いすで入れるか心配になるが、入場できると公式サイトに明記してある議会は少ない。突然出向いたら騒ぎになるかもしれないと思い、傍聴を遠慮しようと考える車いす利用者が出るかもしれない。これも傍聴権を制限するものだ。

 法体系、つまり「仏」の形は整えても現場での対応は放置されてきた。つまり、「魂」を入れてこなかったために今の問題が起きている。国会も地方議会も、障害がある議員の有無にかかわらず、対応を急ぐべきだ。

【プロフィル】山田肇(やまだ・はじめ) 東洋大名誉教授、情報通信政策フォーラム理事長。NTT勤務後、平成14年に東洋大経済学部教授に就任。専門は情報通信政策。監修書に『ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』(小学館)など。




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