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職員の性告白を否定「市幹部を辞めさせろ」 悪意なくても「差別」、全国から批判相次ぐ(2022年5月23日配信『神戸新聞』)

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 兵庫県尼崎市保健所に勤めていたバイセクシュアル(両性愛者)の男性職員が、幹部らから公務中のカミングアウトを控えるよう指導され退職した問題で、市は幹部らの対応を、極めて不適切で人権侵害に当たると認めた。取材からは、悪意のない言動に「無自覚な差別」が潜んでいたことが浮かび上がる。組織や、私たちの社会に足りなかいものは何か。当事者を取り巻く現状から多様な性のあり方を考えたい。(広畑千春)

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【写真】「不適切とは言っていない」「否定する意図はなかった」幹部の主張が並ぶ

 「幹部を辞めさせろ」

 2021年12月、神戸新聞が問題を報じると、全国から市に批判の電話やメールが相次いだ。組織にとっては想像外の展開だった。

 さかのぼること3カ月前の9月、実は市議会の一般質問で議員の一人が問題を取り上げていた。

 「(職員は性的指向を)話したくて話したんじゃない。(職務でもめていた動物愛護団体から)結婚してるの? 彼女はいるの?と詰められる中で、苦しくて答えた。その彼に幹部は、公務員なら言うべきではない、と言った」

 これに対して総務局長の答弁は「職員研修で多様性への理解を深める」と一般論に終始する。それ以降、市は問題を掘り下げることはなかった。

 公文書の性別記入欄の廃止、パートナーシップ宣誓制度の導入…。「マイノリティーが過ごしやすいまち」を掲げる稲村和美市長にとっても痛恨の誤算となり、こう無念を口にした。

 「私たちの感度は全く追いついていなかった」

◇   ◇

 ここに市への情報公開請求で入手した36枚の文書がある。問題を検証するため、有識者らを交えてつくったワーキングチームの議事録などだ。

 職員を指導した幹部への聞き取り調査からは、性的マイノリティーを病気や借金と同じ「私的な悩み」と捉えていたことが分かる。だから動物愛護団体から「困惑した」「不愉快だ」と苦情が入ると、市民に動揺を与えるべきではないと考え、「私なら言わない」「言葉を慎む勉強をしてほしい」と指導したという。

 しかし、委員からは指摘が続いた。「病気ではなく、借金と同じでもない」「カミングアウト(性告白)を迫った動物愛護団体の質問自体がセクハラで、市は偏見をただすべきだった」「当事者に選ぶ権利のあるカミングアウトを一方的に禁じるのはおかしい」

 認識不足も追及された。

 「今回の対応はアウティングに当たる」。それは性のあり方を本人の同意なく第三者に広める行為だ。2015年、一橋大学(東京都国立市)の大学院生が同級生に同性愛者であることを暴露され、転落死したことで社会問題となった。

 尼崎市の文書によると、幹部は苦情を受け、男性の性的指向を含めた言動を内密に調べるよう職場に指示。指導の際に同席させたのは、職員が性的指向を明かしていない上司だった。

 東京都国立市や三重県は「アウティング禁止」を盛り込んだ条例を制定。それらに照らしても、幹部らの対応が人権侵害に当たるのは明らかだ。

   ◇   ◇

 「無自覚のうちに深い傷を負わせてしまった」。稲村市長は悔やんで職員研修を見直しつつ、こうも漏らした。「指導した幹部と同じ立場なら、私も同じことを言ったかもしれない…」

 市への苦情に耳を傾けようとするあまり、そこにある偏見を見逃してしまった。マイノリティーへの差別は、異性愛者ら「多数派」の視点のみで向き合ったときに生まれやすいと検証チームは記す。職員の性的指向を幹部が「私的な悩み」と決めつけたように。

【尼崎市のアウティング問題】2019年11月、尼崎市内の動物愛護団体が猫の保護を巡ってやりとりしていた市保健所の男性職員について「バイセクシュアルの性的指向を打ち明けられ、困惑した」と幹部に訴えた。幹部は職員の性的指向を知らない上司を同席させて暴露(アウティング)し、公務中のカミングアウトを控えるよう指導したが、職員は「組織に失望した」と依願退職。市は22年3月、幹部の対応を不適切とする検証結果を報告した。




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