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誤認逮捕 捜査の基本がなっていない(2019年10月9日配信『読売新聞』ー「社説」)

 あまりのずさんな捜査に唖然(あぜん)とする。警察は猛省すべきである。

 愛媛県警が、窃盗事件で22歳の女子大学生を誤認逮捕し、経緯の調査結果を公表した。

 松山市で1月、タクシーから男女4人が降りた際、助手席に置かれていた運転手のバッグ(約5万円入り)が盗まれた。松山東署は7月に女子学生を逮捕したが、松山簡裁が勾留請求を却下し、女子学生は2日後に釈放された。

 調査結果によると、捜査員がタクシーのドライブレコーダーに残された犯人の映像を見て、女子学生に似ていると判断し、捜査方針が立てられた。思い込みに基づく、危険な捜査というほかない。

 当然必要な裏付けも怠っていた。レコーダーには犯人の携帯電話や財布が映っていた。女子学生の所持品と異なっていたのに、矛盾点について調べなかった。同乗者の身元も確認していない。捜査の基本が疎(おろそ)かになっていた。

 松山東署の上司は証拠を十分検討せず、女子学生以外の犯行を視野に入れた捜査を指示しなかった。警察内部のチェック機能が働かなかったのは明らかだ。

 脆弱(ぜいじゃく)な証拠にもかかわらず、逮捕状を発付した裁判所、勾留請求した検察庁の責任も大きい。

 見過ごせないのが、取り調べである。捜査員は否認する女子学生に対し、「犯人なら目の前にいるけど」などと発言した。県警は調査結果で、「女子学生の尊厳を侵害するものだったが、自白の強要はなかった」と結論づけた。

 だが、捜査員は「懲役刑とか罰金刑とか人それぞれだけど、早く認めたほうがいいよ」「就職も決まってるなら大ごとにしたくないよね?」とも発言していた。罪を認めないと不利益になると迫る、自白の誘導ではないか。

 県警が現実にきちんと向き合い、真摯(しんし)に反省しない限り、再発防止は期待できまい。

 誤認逮捕のきっかけとなったドライブレコーダーは近年、防犯カメラとともに、事件解決の有力な武器となっているのは確かだ。

 警察庁によると、今年上半期に摘発したひったくり事件の32・5%で、これらの映像が容疑者特定の端緒だったという。

 ただ、過信は禁物だろう。昨年10月には警視庁野方署が、防犯カメラの映像を根拠に男性を窃盗容疑で逮捕したが、その後、犯人ではないことが判明した。

 客観性が高いように見える証拠も多角的に吟味し、調べを尽くす。そうした捜査の徹底が必要だ。





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