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薬が効かない耐性菌で死者1千万人? 抗菌薬をどう使う(2019年10月13日配信『朝日新聞』)

 「風邪ですが念のため」。こんなふうな抗菌薬の処方の仕方が、急速に見直されてきています。抗菌薬は風邪に効かず、副作用のリスクがあります。さらに、不適切な使い方が世界的な脅威となっている耐性菌をうみ出し、増やすことにつながるためです。
風邪に抗菌薬って効くの? 医師も学ぶ、正しい治療法

 細菌は、千分の1ミリほどの微生物です。腸管出血性大腸菌やジフテリア菌のように毒素を出す有害な菌もあれば、口や腸の中、皮膚の上に普段は無害の常在菌もいます。常在菌でも病気で抵抗力が落ちたり、けがや誤嚥(ごえん)で菌が別の場所に入り込んだりすると、重い感染症の原因になります。

 20世紀に続々と登場した抗菌薬で、感染症の治療は一変しました。抗菌薬は高度医療の立役者にもなっています。手術や、体に異物が入る人工心肺、カテーテルといった処置は、感染の危険と隣り合わせだからです。

 風邪やインフルエンザを引き起こすウイルスと違い、ヒトも細菌も細胞からできた生き物です。ヒトへの害を抑え、いかに高い効果で病原菌を倒せるかが抗菌薬のカギになります。

 英国の医師、アレクサンダー・フレミングが1928年に発見したペニシリンは、細菌の細胞壁を標的にします。細胞壁は網状に組まれた分子のあつまりで、ヒトにはありません。ペニシリンの「βラクタム環」という部分が、細胞壁を作る分子にくっついて妨害し、細菌は壁を失って壊れます。

薬の開発と耐性菌「いたちごっこ」


 ペニシリンの実用化は40年代。しかし、この頃には耐性菌の存在が明らかになり、フレミングは45年のノーベル医学生理学賞受賞時に懸念を口にしていました。

 耐性菌は、①抗菌薬の成分を壊す②薬が標的とする部分を変化させる③細菌の中に薬を入れない④薬を外へくみ出すといった能力を、もともと持っていたり、獲得したりしています。抗菌薬には、使えば使うほど、抵抗力の強い菌が生き残って増えてしまうというジレンマがあり、国立感染症研究所の菅井基行・薬剤耐性研究センター長は「薬の開発と耐性菌の出現は、いたちごっこが続いてきた」と指摘します。

 しかし、細菌との競争は、様相が変わりつつあります。新薬の開発が先細る一方、ペニシリンだけでなく他のタイプの薬も効かない多剤耐性菌が現れ、病院などで集団感染する例が出ています。特に、多剤耐性アシネトバクターや、抗菌薬の「最後の頼みの綱」とされるカルバペネムが効かない腸内細菌は、脅威とされます。

 2014年、経済学者ジム・オニール氏の報告書が、世界に衝撃を与えました。がんによる死者820万人に対し、薬剤耐性による死者は現状では低く見積もって70万人。しかし、何も対策をとらなければ、50年には1千万人に達すると推計しました。国立国際医療研究センターで、薬剤耐性問題に取り組む大曲貴夫・AMR臨床リファレンスセンター長は「新たな耐性菌を新薬で治療しにくくなっている」と懸念します。

 こうした中で、世界各国は対策を急ピッチで進めています。日本も16年に、20年までの行動計画をつくり、対策を強化しました。国内では、カルバペネムが効かないといった最も問題のある耐性菌はまだ少ないものの、本来は必要ではない風邪などで多くの抗菌薬が使われてきました。

 計画では、1日あたりの使用量を13年の水準の3分の2に下げることも目標にしています。「使わなくていいところで使わないようにする。それが一番期待しうるやり方だと思います」と大曲さんは指摘しています。

これから

 厚生労働省の報告書によると、2016年の抗菌薬の使用量は1804トン。ヒト用は591トンにとどまり、より多くが畜産や農業で動物に使われています。家畜に使われたために、ヒトの治療で重要な薬に耐性菌が生じたとみられる例も過去にありました。業界を越えた連携、対策の強化がさらに求められています。




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