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弁護士立ち会い権は?(2019年10月14日配信『東京新聞』-「私説・論説室から」)

 日弁連は徳島で開催した人権擁護大会で、取り調べの際、弁護人の援助を受ける権利の確立を求める宣言を採択した。その前提には「日本の刑事司法制度は国際的水準に達していない」という認識がある。

 例えば密室での取り調べは「冤罪(えんざい)の温床」とかねて批判されてきた。捜査機関は長時間の取り調べを行って、捜査官の見立てに沿った供述をするよう強要したり、誘導したりするケースがある。「人質司法」と呼ばれ、国際的にも悪評が高い。

 確かに取り調べの録音・録画(可視化)は6月から義務化されたが、全事件のわずか3%にすぎない。依然として問題は残る。これを是正するのが、弁護士の立ち会いで、多くの国・地域で認めている制度である。

 7月には愛媛県警が窃盗事件で女子大生を誤認逮捕した。今月3日に「裏付け捜査を怠ったことが原因」との調査結果を明らかにした。ただ、尊厳を侵害するような取り調べはあったものの、「任意性を欠く違法な取り調べはなかった」と自白の強要は否定した。

 女子大生は「自白の強要をされたという認識に変わりはない」と反論している。いまだにこんな水掛け論になるのかと嘆かわしい。「密室」でのやりとりゆえに、事後検証が不可能に近いからだ。弁護士の立ち会いが任意段階から認められていれば、誤認逮捕という人権侵害もなかったはずだ。


 日本の刑事司法制度が国際的水準に達していないことが、今、改めて国内外から批判されている。

 もとより日本の刑事司法制度は変革を遂げつつある。例えば、被疑者は、勾留段階以降に国選弁護人の援助を受けることが可能になった。極めて低い勾留却下率は、僅かながらも改善の傾向を示している。取調べの可視化(取調べ全過程の録音・録画)の義務化により、初めて取調室に光が差し込み、限られた事件ではあるものの、事後的な検証が可能になった。裁判員裁判の導入は、調書裁判と評される状況を改善し、直接主義・口頭主義に基づく公判審理を実現する可能性を開いた。

 しかし、このような変革を経てもなお取調べを中核とする捜査や人質司法と呼ばれる身体拘束は日本の刑事手続の根幹であり続けている。多くの国・地域で認められている弁護人の取調べへの立会いは許されていない。捜査機関は、長時間の取調べを行い、取調官の見立てに沿った供述をするよう強要し、憲法で認められた被疑者の黙秘権の行使は今なお容易ではない。これまで国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会から繰り返し勧告等を受けていることから明らかなように、「我が国の刑事裁判はかなり絶望的である。」と評された日本の刑事司法制度は依然として抜本的な改善を求められている。

 だからこそ、今、取調べの可視化(取調べ全過程の録音・録画)の全件への拡大を実現するとともに、憲法で保障された弁護人の援助を受ける権利を実質的に確立するために、弁護人を取調べに立ち会わせる権利を明定し、併せて取調べを受ける前に弁護士の助言を受ける機会を保障することが必要である。取調べへの弁護人立会いは、事後的な検証を可能とする取調べ全過程の録音・録画と相互に関連しながら、日本の刑事司法の根本を変える。被疑者に対する取調べが被疑者の目の前で監視され、不適切な発問に対し異議が申し立てられるとすれば、被疑者の主体性が確立される契機となる。取調室に弁護人が存在することは、捜査機関の違法・不当な取調べを抑止し、虚偽自白のリスクを低減させることができる。黙秘権の行使は容易になり、被疑者の供述の自由は真の意味で保障される。不必要な供述録取書が作成されることはなくなり、取調官の作文である捜査段階の供述録取書が公判で利用されることが抑制される。その結果、公判は捜査と切断され、直接主義・口頭主義に基づく公判審理がより一層実現される。取調べへの弁護人立会いは、将来的な課題ではなく、現実的な課題とされるべきである。

 また、固く閉ざされてきた取調室の扉を開くためには、弁護士会において対応態勢を全国的に整備する取組を行うとともに、弁護人一人一人が、立会いにおける弁護人の役割や技術を研鑽し、捜査機関に対して立会いを求め、立会いが認められなかったときには供述録取書等の証拠能力を争っていくなどの弁護実践に地道に取り組むことが求められる。

 当連合会は、刑事司法改革の最重要課題の一つが捜査段階における諸問題の改革にあると考え、また、刑事司法改革は弁護人自らがその手によって始めなければならないとの強い思いを抱いて、1989年の人権擁護大会において松江宣言(刑事訴訟法40周年宣言)を発し、刑事弁護センターの発足や当番弁護士による活動など積極的な刑事司法改革の取組を開始した。既に述べた大きな変革は、松江宣言からの30年間にわたる数多の弁護人の熱心な弁護実践の成果とこれを支える当連合会及び弁護士会の取組の成果である。そして、今後もEU諸国やアメリカ、韓国、台湾など海外の最新の動向を調査するよう努めながら、憲法や国際人権法に照らして、日本の刑事司法制度の現状や問題点を不断に検証し、改革を追求し続けていく所存である。

 以上を踏まえて、当連合会は、取調べの可視化(取調べ全過程の録音・録画)の全件への拡大を実現するとともに、憲法で保障された弁護人の援助を受ける権利を実質的に確立するために、取調べを受ける前に弁護士の助言を受ける機会の保障、逮捕直後からの国選弁護制度の実現、身体拘束制度の改革(身体不拘束原則の徹底、勾留に代わる住居等制限命令制度の導入、起訴前保釈の導入、身体拘束期間の短縮、取調べ時間の規制など)、起訴前を含む証拠開示制度の拡充と併せて、弁護人を取調べに立ち会わせる権利の確立の実現に向けて全力を挙げて取り組むことを決意するとともに、

1 国に対し、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者又は弁護人の申出を受けたときは、弁護人を取調べ及び弁解の機会に立ち会わせなければならない旨を刑事訴訟法上に明定するよう改正すること

2 検事総長及び警察庁長官に対し、前記1の法制化がなされるまでの間、各捜査機関の捜査実務において、被疑者又は弁護人が求めたときは、弁護人を取調べ及び弁解の機会に立ち会わせること
を求める。


 当連合会は、刑事訴訟法施行70周年、松江宣言30周年、裁判員裁判施行10周年に当たり、以上のとおり宣言する。
2019年(令和元年)10月4日
日本弁護士連合会


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