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不登校14歳、起業する(2019年10月17日配信『NHKニュース』)

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「どうして学校に行かなければならないの?」

誰しも一度ぐらいは考えたことがあるかもしれません。

でももし、本当に学校に行かないとしたら、あなたならどんな生き方をするでしょうか。

私が出会った14歳の少年は、不登校をあえて“選択”し、起業に挑戦してみずからの世界を広げていました。(熊本放送局記者 杉本宙矢)

出会いはオフィスで

「おもしろい子がいるんです。新しく“学校”を始めるらしくて。彼は学校に行ってないんですけど」
取材のきっかけは、熊本の教育関係者からもらった「プログラミングスクール」のチラシでした。

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学校に行ってないのに、学校を始める?

気になって、チラシに書かれた携帯電話の番号にかけてみることにしました。
「はい、こちらは肥後未来スクールです」

電話に出た男性は声こそ若いものの、はきはきしていて電話の応対は堂々としている様子。話を聞かせてほしいと依頼したところ、会うのに指定された場所は、熊本市の繁華街にあるビル。

フリーランスで働く人たちが集う共同オフィスでした。

起業家は不登校中学生

「僕はもともと学校は好きでした。けれど、一方的に教えられるだけの教育や、校則の意味を分かっていないのに指導する教員は、僕には合わなかったんです」
平日の昼間、私服姿で現れたのは、少し大人びたたたずまいの中にあどけなさも残るひとりの少年でした。
熊本市に住む野澤翼さん、14歳。中学3年生ですが、去年から学校には通っていません。

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理由を聞くと、「教師との衝突が原因です」と話します。ノートのとり方から文房具の並べ方まで統一したり、服装では靴下の色まで事細かく指導したりする教師に、野澤さんは「効率的でもないし、何の意味があるのか」と尋ねました。

しかし、教師は頭ごなしに叱るなど、正面から向き合ってくれなかったといい、納得できなかった野澤さんは、学校で学ぶことに違和感を感じるようになっていきました。

プログラマーとして稼ぐ

学ぶこと自体は好きだった野澤さん。
幼い頃から好奇心旺盛で、小学校3年生でプログラミングを始めました。

参考書やインターネットの情報で独学で学ぶうちに技術は向上。
フリーランスのプログラマーとして、知り合いの大人の紹介などで企業のホームページ制作を手がけるようになり、学校に通わなくなっていきました。

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野澤さんの選択に当初、家族は「短い青春の時間なのだから学校の友達と過ごしたほうがいい」と強く反対したそうです。

これに対し、野澤さんは「どうしても学校に行かせようとするなら、単身で東京に出て自分で仕事を始める」と主張。
母親の祥子さんは、「そこまで決心しているならせめてそばにいて。まだ熊本でできることがあるんじゃないの」と話しました。

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そっと背中を押すことにしたのです。
家族の理解も得る中で、野澤さんは依頼される仕事が徐々に増え、一定の収入を得ることもできるようになりました。

学校をつくりたい

「不登校の悪いイメージを変えたいんです。最終的な目標は学校を作って、教育を変えることです」
野澤さんは次なる行動に出ました。自分と同様、学校に違和感を持つ人の居場所をつくろうと、新たなプロジェクトに乗り出しました。

はじめにやってみたのはSNSでのつぶやき。

「僕と学校を作りませんか?ーー」

すると、思いがけず、賛同する仲間が全国から現れました。

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そのつながりを生かして、まずは将来の学校創設をめざした足がかりとして、プログラミングスクールを熊本市内の共同オフィスで立ち上げることにしました。

これまで仕事で稼いできたお金を起業の資金としてつぎ込みました。

「“積極的な不登校”ってこういう人ですかね」

仲間も野澤さんの思いに引き寄せられていました。

意外な人物がエール

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ただ、経験もないイチからの起業は、順風満帆とはいきません。

「何から始めよう」
「失敗したらどうしよう」
「責任は自分がとらなきゃ」

プレッシャーを感じる中、連日夜中まで設立準備を進めました。

そんな野澤さんにある意外な人物からエールが。
「起業は大変だけど、今は一生懸命、夢に向かって努力しているわけで、それは成功を祈っているし、もし失敗しても大丈夫」

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遠藤洋路教育長
こう話すのは、熊本市の学校を束ねる責任者、遠藤洋路教育長です。

実は、野澤さんが不登校になった際、SNSを通じてメッセージを送り意見交換する関係になっていました。

みずからも起業の経験があり、2年前まではその会社で働いていた遠藤教育長。起業にチャレンジする彼の姿勢を温かく見守っています。
「起業は大人でも難しいけれど、挑戦することに意味がある。もちろん教育委員会としては学校運営している側だから、野澤さんが来てもおもしろいと思える学校にしていきたいですけどね」

学校が始まった


いよいよプログラミングスクールの開校です。

体験授業には、小学生から社会人まで幅広い年齢が集まってきました。

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授業前、少し緊張した様子の野澤さんでしたが、いざ始まると真剣な表情。受講生一人一人に目を配り、つまづきそうな場面で声をかけます。

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簡単なゲームから始める工夫で、授業は好評のようでした。

中には、現在、自分も不登校だという中学生も参加していました。
「自分と同じぐらいの中学生がやると聞いて、最初はうそだろうと思ったけどやってみるとおもしろかったです。プログラミングの才能あるよと言われて、正直うれしかったですね」(受講者)
楽しそうな参加者を見て、野澤さんもホッとした様子。笑顔がこぼれていました。

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野澤さんは今後、プログラミングスクールの事業を発展させて、不登校の子どもどうしがつながれる新たなコミュニティーの場をつくることを目指しています。最後に、野澤さんの理想とする学校への思いを聞きました。
「自分がどう成長したいのかを、みんなが考えられるような場所にしたいです。一人一人が輝ける、多様性を認め合って自分の興味関心があることに突き進める、そんな環境を備えた学校を作りたいと思います」(野澤さん)
不登校という言葉を聞くと、ネガティブなイメージがつきまといがちですが、取材を通じて感じたのは、もっと成長したいというとめどない欲求と、貪欲な学びへの意志でした。
自分の選択肢を自分たちでつくり出せる環境が広がれば、人も学校も、そして社会も、変わっていけるのかもしれません。

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