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まずまずの災厄(2019年10月20日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 「あれが阿多多羅(あたたら)山 あの光るのが阿武隈川」。高村光太郎が詩集「智恵子抄」でうたった亡き妻の故郷は、福島県中部の町だった。その川は濁流と化し、堤を越えて家々をのみ込んだ  

▼台風19号で最も多くの犠牲者を出したのは、原発事故の傷なお癒えぬ福島県。海沿いのいわき市では、高齢で体の不自由な夫が寝室の浸水から脱出できず、握った妻の手を離れ冷たくなった。「長いこと、世話になったな」の言葉を残して

▼そんな悲劇を招いた災害を「まずまずに収まった」と評価した安倍晋三政権の幹部がいる。発生当時はそういう状況だったと反論しているらしい。結果に責任を負うのが政治家というものだ。その鉄則を知らないとは言わせない

▼自民党の二階俊博幹事長。衆院初当選時の田中派を離れて竹下派に合流。小沢一郎氏らと自民党を割って新生党を結成したが、新進、自由、保守の各党を経て自民党に戻った。政界を浮遊した末に今がある

▼「まずまず」発言の後の言動も、フラフラと的外れだ。発言を撤回したかというと、「不適切であったと言っているのだから、それでいいんじゃないか」と、はっきりしない。被災地を訪問はしたが、被災者に謝罪したとの話は聞かれない

▼「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」の例え通り、一度発せられた政治家の言葉は元に戻らない。そうした最低限の倫理も通じない今の政治の姿を、台風は暴き出した。




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