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大川小津波訴訟 防災体制を見直す契機に(2019年10月21日配信『山陽新聞』ー「社説」)

 全国の学校が、あらためて防災体制を見直す契機にしなければならないだろう。

 東日本大震災の津波で犠牲になった、宮城県石巻市の大川小の児童のうち23人の遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた裁判で、最高裁が行政側の上告を退ける決定をした。計約14億3600万円の支払いを命じた二審の仙台高裁判決が確定した。

 津波被害を巡り、事前の防災体制の不備による賠償を命じた判決が最高裁で確定するのは初めてだ。

 2011年3月11日の地震発生後、児童は教員らの指示で校庭に避難し、40分以上とどまった。堤防付近に移動を始めた直後に川を遡上(そじょう)した津波に襲われ、児童74人、教職員10人が犠牲になった。

 一審判決は津波発生後、助かる可能性があった裏山を避難先に選ばなかった学校側の対応に過失があったと認めたが、二審は震災前の防災体制について問題があったと指摘し、学校の責任の範囲を広く認定した。

 大川小は河口から約4キロ離れ、当時の市の津波ハザードマップでは浸水予想区域から外れていた。09年施行の学校保健安全法に基づき、学校は危機管理マニュアルを作っていたが、津波からの避難先は「近隣の空き地、公園など」と記しただけで具体的に決めていなかった。

 二審判決は学校側が危機管理マニュアルで避難先や避難経路を定めず、その不備を市教委も是正しなかったとして、市や校長らの震災前の組織的過失を認定。一審より賠償額を約1千万円増やした。市や県は「学校現場に過大な義務を課している」などと主張して上告していたが、最高裁が退けた。

 災害時には学校に子どもの命を守る大きな責任があると、あらためて突き付けたといえるだろう。全国の学校が大川小の教訓から学び、悲劇を繰り返さないための対策を急がねばならない。

 近い将来、発生が予想される南海トラフ巨大地震では岡山県内でも最大震度6強や、3メートル超の津波が予想されている。平野部では、深刻な液状化被害も起きるとみられている。これら、すでに想定されている以上の事態も起こり得ることは東日本大震災だけでなく、近年の風水害を見ても明らかだ。

 危機管理マニュアルは全ての学校に作成が義務付けられている。実際に使えるものになっているか、学校の立地などを踏まえ再点検する必要がある。大川小では震災当日、校長が不在でリーダーを欠いた。さまざまな場合の対応策も考えておかねばなるまい。

 現場の教員の長時間労働はすでに問題になっている。全てを現場に押しつけるのでなく、行政や専門家の支援も必要だ。マニュアルの内容は保護者や地域住民にも周知して訓練も行うなど、地域全体で危機意識を共有することも欠かせない。




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