FC2ブログ

記事一覧

点字ブロック 思わぬ危険が(2019年10月24日配信『NHKニュース』)

K10012146281_1910241403_1910241410_01_02.jpg

東京都内の駅で10月、視覚障害者の女性がホームから転落し死亡した。取材を進めると思わぬものが見つかった。視覚障害者を助けるはずの点字ブロックに危険が潜んでいた。

夫の墓参りの帰りに

K10012146281_1910241404_1910241410_01_03.jpg

10月1日、東京 葛飾区の京成押上線 京成立石駅で、目が不自由で白いつえをついていた秋谷喜代子さん(66)がホームに転落。直後に来た電車にはねられて死亡した。

事故の後、私は秋谷さんが暮らしていた荒川区のアパートを訪ねた。大家で隣の部屋に住む渡※邉秀子さんが話を聞かせてくれた。

K10012146281_1910241211_1910241410_01_04.jpg
渡※邉秀子さん ※「邉」は点1つのしんにょう。

秋谷さんは約30年前から夫とともに2人で暮らしていたが、3年ほど前に夫は亡くなったという。ちょうどその頃から視力が下がり、外出時に白いつえを使うように。

視覚障害者になってからも気さくな人柄は変わらず、近所の銭湯によく通い、常連客との交流を楽しんでいたという。

月命日に欠かさなかったのが夫の墓参り。その墓が現場の京成立石駅の近くにあったのだ。事故のあった日は墓参りの帰りだったとみられている。

「外出するときには『気をつけてね』と声をかけていたのに」

渡邉さんはやりきれない思いを抱いている。

“何かにつまずいた”

なぜ事故は起きたのか。視覚障害者の転落を防ぐために最も有効なのがホームドアだ。

ところが、現場の駅にホームドアは設置されていなかった。国土交通省によると、1日の利用者が10万人以上の駅は優先して設置することが決められているが、京成立石駅は利用者数が下回っているため、対象外だった。

警視庁によると、秋谷さんがホームで何かにつまずいたようになり、線路に転落する様子を近くにいた人が目撃していたという。いったい何があったのか。

点字ブロックの“ずれ”

K10012146281_1910241404_1910241410_01_05.jpg

「駅ホームにある点字ブロックを確認したら“ずれ”が見つかったんです」

事故から6日後、取材を進めていた私に、東京都盲人福祉協会から情報が寄せられた。ホームに設置されていた点字ブロックの高さに“ずれ”があったという。

駅にはホームの端に沿って点字ブロックが一直線に並んでいる。突起状のブロックと直線状の「内方線」がセットになっている。「内方線」はホーム内側がどちらなのかを知らせるもの。

去年3月以降、新設の駅などでは「内方線」がセットになった点字ブロックを設置することが義務づけられた。

既存の駅では努力義務となった。

京成電鉄によると、京成立石駅では去年8月に、既存のブロックに追加する形で「内方線」が設置されたという。その結果、ずれが生じていたのだ。

K10012146281_1910241404_1910241410_01_07.jpg

わずか3、4ミリのずれでも

東京都盲人福祉協会の理事、市原寛一さんとともに駅のホームで確認してみた。すると確かに直線状の「内方線」が、突起状のブロックより高くなっていた。

とはいえ計ってみるとわずか3、4ミリ。この程度のずれでつまずくことなんてあるのだろうか?市原さんに聞いてみた。
(市原さん)「視覚障害者にとって駅のホームは最も気をつける場所なんです。点字ブロックを確認するためにすり足気味になりますし、これだけの“ずれ”でもつまずくおそれがあります」

K10012146281_1910241403_1910241410_01_06.jpg
質問書提出のため現場を訪れる東京都盲人福祉協会(10月11日)

今回の事故の詳しい原因は今もわかっていないが、東京都盲人福祉協会は、亡くなった秋谷さんがこの“ずれ”につまずいた可能性があるとしている。

協会はその後、京成電鉄に改善を求める質問書を提出した。

駅の安全性をめぐる国土交通省の検討会の委員を務めた成蹊大学の大倉元宏名誉教授も現場を見たうえでこう指摘する。

K10012146281_1910241403_1910241410_01_08.jpg

「ホーム内側を示す『内方線』の設置そのものは急ぐべきです。ただ、高さにずれがあると足が引っかかり転倒するおそれがあります。『内方線』を後付けで設置した駅については点検や再設置などの対応が必要です」

京成電鉄は対策へ

京成電鉄は東京都盲人福祉協会からの質問書に答える形で、10月18日に今後の対策を示した。

K10012146281_1910241432_1910241434_01_09.jpg
京成電鉄の文書

「認識が不足していました」と不備を認めたうえで、今年度内に点字ブロックを、ずれのない一体型に改修することを決めた。

さらに視覚障害者が認識しづらい古い規格の点字ブロックが使われていたことから、これについても新たな規格のものに取り替えるという。

ほかの駅でも点検や対策を進める方針だ。

京成電鉄は「今回の痛ましい事故を受け、なお一層、安全対策に取り組んでいきます」とコメントしている。

ただ、同じ問題を抱える駅は京成電鉄以外にも多いとみられている。ほかの鉄道会社も点検や対策を進めてほしいと東京都盲人福祉協会は呼びかけている。

“声をかけてくれたら”

今回の取材で忘れられないひと言がある。冒頭で紹介した亡くなった秋谷さんが暮らしていたアパートの大家さんのことばだ。

「駅で誰かが声をかけてくれていたら…」

事故を防ぐためのハード面の整備は必要だ。ただ、それだけでなく、私たちもほんの少し「おせっかい」になってみよう。つまずく前のたったひと言の声かけで防げる事故もあるはずだから。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ