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日経実力病院調査 前立腺がん、生活の質で治療法選択(2019年10月27日配信『日本経済新聞』)

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選択肢の多い前立腺がんの治療法の説明には、模型やパンフレット、画像なども活用する(10月中旬、東京医大病院)

高齢男性を中心に年約8万人が診断を受け、がん全体で4番目に患者数が多い前立腺がんは治療の選択肢が多岐にわたるのが特徴だ。手術支援ロボットの普及が進むほか、進行が遅いため積極的に治療せずに経過観察も多い。公開データを基にした日本経済新聞の実力病院調査で症例数が多かった病院は、年齢や進行状況、後遺症の有無などを考慮しながら「生活の質」(QOL)を重視して治療方法を選んでいる。

前立腺がんは転移がなければ血液検査などの結果から低、中、高リスクの3段階に分類される。治療法を選ぶうえで、このリスク分類が目安になる。

今回の調査で「手術あり」症例数が217例と全国2位だった東京医大病院(東京・新宿)の大野芳正・泌尿器科主任教授は「手術は低~中リスクが主な対象」と説明する。

「かつては75歳以下を手術対象の目安としてきたが、近年はより高齢でも仕事や運動を続けるなど活動的な患者であれば、手術を勧めている」という。長生きする高齢者が増えるなか、手術で根治を目指すメリットが大きいためだ。手術対象の拡大に貢献したのが手術支援ロボット「ダビンチ」。同病院は06年に日本で初めて導入した。

ダビンチを使った手術は腹部の6カ所に小さな穴を開けて体内にロボットアームと一体となった手術器具や内視鏡を挿入。医師は内部を拡大した3D映像を見ながら、ロボットアームを動かして患部を切除する。前立腺付近は神経が張り巡らされているが、ロボットアームでわずかな動きを制御でき、より細かい操作ができる。

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手術支援ロボット「ダビンチ」による前立腺がん手術(10月下旬)=東京医大提供

大野教授は「出血が少なく、ほとんどの患者で輸血の必要もない。開腹手術などに比べて体への負担は非常に小さい」と強調する。ダビンチによる手術は12年には健康保険の適用対象となり、全国の病院で導入が進んでいる。

前立腺の摘出手術には、尿失禁や勃起障害などの後遺症が出るリスクがある。がんの状態によっては神経を残して後遺症のリスクを下げる方法もあるという。

同病院は「手術なし」症例も625例で全国トップだ。前立腺がんは進行が非常に遅いことが多い。低リスクの段階なら特に治療はせず、定期的な検査で様子をみるのが一般的だ。

中リスク以上で積極的な治療をする場合、放射線治療とホルモン抑制療法の選択肢があり、併用もある。放射線治療は体内から放射線を当てる小線源療法と、体外から放射線を当てる体外照射の2つに分かれる。

小線源療法は小さなチタン製カプセルに入った放射性物質を前立腺に刺し込む治療で、数日の入院で済む。体外照射はコンピューター断層撮影装置(CT)検査の結果からがんの形に照準を合わせる「強度変調放射線治療(IMRT)」などの種類があり、2~3カ月かけて35回前後の外来通院が必要となる。

今回の調査で「手術なし」症例が602例で全国3位の原三信病院(福岡市)は、黒田藩の藩医をルーツとし、19年で創立140年を迎えた歴史ある病院だ。泌尿器科を得意とする病院として全国から患者が集まる。離島への往診事業に取り組んできた経緯から、対馬や壱岐、五島列島からも患者が来るという。

泌尿器科の横溝晃・主任部長は「治療法が多い前立腺がんは、大病院でもすべての治療に対応していないこともあるが、我々はすべて提供できるのが強み」と話す。特に重視するのが患者の生活の質だ。

前立腺がんは男性ホルモンで成長し、ホルモンがなくなると死滅する。ホルモン抑制療法はホルモンの分泌を減らしたり、作用を阻害したりする治療法で、高リスク以上や転移がんでも効果が期待できる。だが肥満や糖尿病の悪化、筋力低下などの副作用もあり、日常生活への影響が大きい。

横溝主任部長は「がんの悪性度だけでなく、年齢や仕事の有無、男性機能維持の希望などを踏まえ長所と短所を総合的に判断する必要があり、個人差が大きい」と指摘。「他の施設の医師の意見を聞くセカンドオピニオンを希望する患者も多い。じっくり検討したうえで納得して治療法を選択してもらうように心がけている」と説明する。

同病院の泌尿器科だけで年間患者数は外来が延べ約4万8千人、入院が延べ約2万4千人に達する。約20人いる泌尿器科医が多数の患者をこなせるよう、外来では医師1人に1人ずつメディカルクラークと呼ばれる医療事務の専門職が配置され、文書作成などで医師の業務を支援している。

ほかのがん疾患を幅広く診療する態勢がないことから、国のがん診療連携拠点病院には指定されていない。14年に院内に「がん相談支援センター」を設置し、患者からの幅広い相談に応じている。前立腺がんに特化した「特定領域がん診療連携拠点病院」の指定を受けるため、福岡県に推薦を申請中という。

■重粒子線、保険適用に

前立腺がんは高齢化や食生活の欧米化で増加傾向にあり、PSA(腫瘍マーカー)検査の普及で早期発見も多い。国立がん研究センター(東京・中央)が8月に発表した最新の3年生存率は99.2%、5年生存率は98.6%といずれも高く、適切に対処すれば、がんの進行よりも先に寿命を全うすることも少なくない。

2018年4月には全額自己負担の先進医療だった重粒子線や陽子線を使った放射線治療が健康保険の適用対象となった。大規模装置が必要なため、全国でも実施施設は約20カ所に限られるが、新たな選択肢として注目されている。原三信病院の横溝晃主任部長は「希望する患者には、佐賀県鳥栖市にある施設を紹介している」と話す。

新薬も相次いでいる。ホルモン抑制の新薬として14年に「イクスタンジ」「ザイティガ」が登場したほか、19年には「アーリーダ」も販売された。16年発売の「ゾーフィゴ」は放射性物質を含む新薬で、骨に転移がある患者が対象になる。

【前立腺がんの実力病院】

(2017年4月~18年3月に「手術なし」が180例以上)

▼北海道・東北地方

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▼関東地方(=東京、神奈川以外)

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▼関東地方(=東京、神奈川分)

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▼中部・東海地方

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▼近畿地方

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▼中四国地方

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▼九州・沖縄地方

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