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養育費の不払い 公的な関与議論する時だ(2019年10月28日配信『毎日新聞』ー「社説」)

 仕事と子育てに追われ、ひとり親家庭は経済的にも余裕がない。その実情に即した支援が必要だろう。

 離婚して子どもと別居した親の養育費不払い問題が、クローズアップされている。兵庫県明石市が行政の関与強化に向けた検討に乗り出したことがきっかけだ。

 養育費について母子・父子・寡婦福祉法や民法は支払いや離婚時の取り決めを求めている。

 しかし、実際には不払いが目立つ。厚生労働省の2016年度調査で養育費を受け取っていないと回答した家庭は、低収入であることが多い母子家庭の7割に上り、父子家庭では9割だった。

 母子家庭が養育費を取り決めていない理由は、「相手とかかわりたくない」「相手に払う能力・意思がないと思った」が上位を占めている。

 ひとり親家庭の子どもの貧困率は、15年に50・8%で、全体の子どもの貧困率13・9%を大きく上回る。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも高い。離婚しても子どもに対する扶養義務はあり、不払いは放置できない。

 このため、民事執行法が改正され、来年5月までに施行される。法的な手続きを取れば、相手の預貯金などの情報を得られるようになる。

 ただし、ひとり親家庭は仕事の掛け持ちもめずらしくなく、法的手続きに割く時間や金銭的な余裕がないと指摘されている。

 家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス)の被害者など、養育費の話し合いができない場合もある。

 明石市が検討しているのは、公正証書などで養育費が確定した場合の、実質的に強制力がある対策だ。

 養育費を払わない離婚相手の給与を独自に差し押さえや天引きすることや、支払い命令に従わない場合に氏名を公表するなどのペナルティーも選択肢とする。

 見せしめ的な氏名公表まですることには疑問があるが、現状を打開しようとする姿勢は理解できる。

 欧米では行政が一部を立て替えて養育費請求に当たったり、給与から天引きをしたりする制度がある。

 「民事」にどこまで介入するのか議論は必要だが、個人の自助努力は限界がある。あるべき公的関与について、検討を進める時だ。



養育費不払いに「反則金」 明石市、悪質ケースで徴収へ(2019年10月8日配信『朝日新聞』」)

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 養育費不払い解消に取り組む兵庫県明石市は、理由なく不払いを続ける人のうち、より悪質なケースには、反則金にあたる行政罰の過料を科す方針を決めた。同時に、養育費を受け取れずにいるひとり親家庭へ「養育支援金」の形で同額を給付。市が実質的に取り立てを担う形とする。現行の法制度では不払いに罰則はなく、過料が設けられれば全国で初の事例となる。市は検討中の新たな条例に加える形で、来年4月施行を目指す。

 制度の対象は、裁判の判決や公正証書などで養育費の額が確定したのに、正当な理由なく支払わない人で、市外在住者も対象とする予定。養育費を受け取れずにいる市内在住のひとり親側からの相談に基づいて事情を調べ、資力があるのに払わないなどの条件を満たせば過料を命じる。過料額は5万円を上限に、支払うべき養育費と同額とする。取り立て後、ひとり親側には養育費と同額の養育支援金(補助金)を支給する。過料の支払いにも応じない場合や、その後も不払いを繰り返した場合の対応策は別途検討するという。

 地方自治法に基づき、自治体は独自の条例を設けて、行政上の秩序を乱すなどの行為に5万円以下の過料を科すことができる。過料は裁判などを経ずに自治体が科すことができる行政罰で、他自治体でも路上喫煙などの罰則として設けられているケースがある。



養育費不払いで氏名公表 明石市の条例検討に賛否(2019年9月21日配信『神戸新聞』)

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養育費や面会交流などひとり親家庭への支援策を紹介する冊子

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明石市の離婚届。養育費や面会交流について取り決めの有無を記入する欄もある

明石市の離婚届➡ここをクリック(タップ)

面会交流・養育費の分担
 2012(平成24)年4月1日から民法の一部改正により、未成年の子がいる場合に父母が離婚をする時は、面会交流や養育費の分担など子の監護に必要な事項についても父母の協議で定めることとされた。(民法第776条)
 ※面会交流・養育費の分担について該当するものにチェックする。


 兵庫県明石市が、離婚相手が養育費を支払わない場合、氏名を公表する全国初の条例制定を検討している。同市の泉房穂市長は「ひとり親家庭の困窮を防ぎたい」と意気込むが、親の氏名公表は子どものプライバシー侵害につながりかねず、「子どもを守るつもりが、いじめなどを誘発する恐れがある」と危惧する声も出ている。子どもの人権や法律の専門家の賛否も分かれており、条例化には曲折が予想される。

 検討中の条例案は、裁判などで養育費の金額が確定した市民が対象。ひとり親から申し立てを受けた後、市が支払いを「勧告」し、応じなければ「命令」に移る。それでも従わなければ、ホームページなどで氏名を公表する。弁明の機会を設け、失職で収入がないなどやむを得ない場合は公表しない。来年4月の施行を目指している。

 「氏名を公表したいわけではない。ひとり親家庭が泣き寝入りしないで済むよう、養育費を払ってもらいたいだけだ」と泉市長は狙いを強調する。

 厚生労働省の2016年度調査によると、離婚相手から養育費を「受けている」母子家庭は24・3%にとどまり、不払いが困窮の一因になっている。同市は18年、不払いの養育費について年60万円を上限に保証する独自事業を始めるなど、積極的に対策を進めている。これまでに18人の申請を受け付け、既に3人に支払われている。

 国も動きだしている。来年4月には、養育費を支払う義務がある人の預貯金を裁判所が金融機関などに照会し、差し押さえやすくする仕組みを盛り込んだ改正民事執行法が施行される。

 明石市の条例案はこの改正法を受けた制度だが、法は氏名公表までは規定していない。これに対し、弁護士でもある泉市長は「厳格な要件と適正な手続きを定めれば条例化は問題ない」と自信を見せる。

 人種差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を抑止するため、大阪市が16年に制定した条例にも氏名公表の規定がある。ただ、専門家の間ではたとえヘイトスピーチでの公表であっても人格権侵害の議論があり、「養育費の場合、支払いを受ける親子のプライバシーに関わるため、より高度に個人情報を扱う必要がある」とも指摘される。

 ひとり親家庭支援に詳しい神戸学院大現代社会学部の神原文子教授(家族社会学)は、条例案の趣旨や明石市のこれまでの取り組みを評価した上で「氏名公表は脅しともとれる。強制執行的な発想より、支払いへの説得が重要だ。督促を市職員が仲介したり、市による立て替え制度を充実させたりした方が実効性が高まるのでは」と話す。

【棚村政行早稲田大教授(家族法)の話】 国や都道府県の制度が不十分な中、条例化検討は評価できる。ただ、氏名公表は資産隠しなど刑事事件相当の悪質なケースに限るなど厳格な要件を設け、「伝家の宝刀」として抑止効果につなげる方がよい。行政の中立性をどう担保するかなどの課題もある。公表することで得られるメリットとデメリットをしっかりと市民に説明するべきだ。

【子どもの虐待問題に詳しい曽我智史弁護士(兵庫県弁護士会)の話】 社会問題として捉える姿勢は評価するが、アプローチがおかしい。「離婚しても今まで通り父や母として信頼関係を持って付き合ってほしい」と考えるのが子どもの本音。親子関係に悪影響を与え、子どもの福祉や利益を損ねる恐れもある。公表により親同士や親族間の対立をあおり、余計に払ってもらえなくなるリスクもある。






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