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緊急報告 東須磨小教員暴行(上・下)(2019年10月25・26日配信『神戸新聞』)

【上】職場環境(2019年10月28日配信『神戸新聞』)

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 神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言問題は、発覚から3週間。取材で新たに浮かび上がったのは、被害に遭った男性教員(25)への嫌がらせが赴任1年目には始まっていたことだった。加害教員4人の行為はエスカレートする一方だったが、当時の校長が深刻に受け止めた様子はかけらもない。それどころか、「いじめられてないよな」と決めつけるような発言すらあったという。ハラスメントが許され、SOSは封じられる。そんな異様な土壌の実態も次第に明らかになりつつある。

 「激辛カレーを強要」「はげ、ボケ、ダボなどの暴言を吐く」「書類を投げて渡す」「椅子をける」…

 今月17日の市議会常任委員会。配布資料には加害教員4人の行為がずらりと列記され、「極めて悪質」なセクハラもあった。

 被害を受けたのは男女2人ずつの若手教員で、療養に追い込まれた男性(25)は教師3年目だった。当初、市教育委員会は嫌がらせの始まりを2018年としていたが、実は17年、つまり新人として赴任したその年から続いていた。

 先輩を見習おうと授業見学をお願いしたときのことだ。「来るな、教室が汚れる」。加害教員の一人はそう言い放った。それだけではない。この年の夏ごろ、アルコールが苦手で懇親会を欠席したいと申し出ると、当時教頭だった前校長は「新人なら行くべきだ」と強要した。

 18年度に入ると、ハラスメントは一気に深刻化した。宴席の際、ビール瓶で頭を殴られる。熱湯入りのやかんを顔につけられる。車に灰皿の水をまかれる。ズボンを破られる…。

 今のところ背景に見えているのは、以前の職場が同じだった前校長と加害教員の1人が特に親しかったこと。そして「神戸方式」と呼ばれる全国でも極めて特異な教員人事システムが50年も続いてきたことだ。

   ◆

 「いびつな人間関係の土壌を管理職がつくっていた」。東須磨小勤務経験者はそう指摘する。例えば互いの呼び方だ。通常、校内では年齢に関係なく「○○先生」と呼び合う。しかし、前校長は同僚の一部を呼び捨てにした。さらに加害教員の一人は、先輩をも呼び捨てにした。

 前校長は18年度、この呼び捨てについては1度注意した。3学期には一部の教員から「(被害教員への)ふざけの度が過ぎている」と訴えがあり、加害教員4人を個別に指導したとする。だが、具体的な内容には踏み込んでいない。

 同じ頃、被害教員は前校長に嫌がらせについて尋ねられた。当時のやりとりを、弁護士にこう証言している。

 前校長「お前ぶっちゃけ(加害教員のことを)どう思ってるん?」

 被害教員「お世話になってます」

 前校長「そうやんな。じゃ、お前はいじめられてないんやんな」

 一方的にSOSを封じ込めるかのような言い回し。後任の仁王(におう)美貴校長(55)にも引き継がれてはいない。ただし、前校長は市教委にこのやりとりを否定している。

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 今月16日、2度目の保護者会。仁王校長が子どもたちの様子を説明した。

 連日の報道が続く中、加害教員、被害教員が担任していた学級の子どもたちが心境を紙に書く時間が設けられた。言葉にならず絵で表現した子どももいれば、書いたものをビリビリに破く児童もいた。別室で号泣するケースもあれば、起きたことが信じられず「(加害者は)先生じゃない」とつづったものもあった。

 学校には苦情電話が殺到し、住民らが展開する地域活動も延期を余儀なくされている。前代未聞の不祥事が引き起こした激震は、いまだ収まっていない。



【下】神戸方式(2019年10月26日配信『神戸新聞』)

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 加害教員4人のうち、主導的な立場だった30代の男性教員は「神戸方式」で前々校長が引っ張った-。

 神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言問題で、複数の関係者はそう証言する。羽交い締めで激辛カレーを食べさせる。車の上に乗る。各メディアで繰り返し流れた動画や画像に写る、あの男性教員だ。

 東須磨小は2017年、人権教育を推進する指定校になっていた。モデル授業や指導法の研究を行い、成果を発信する役割を担う。実はこれに向けて呼ばれたのが先の教員。市の小学校教員でつくる「人権教育部会」のセミナーに積極的に参加していたからだ。

 校長が意中の教員を「引っ張れる」。それを可能にしたのが、半世紀以上も連綿と続いた独自の人事ルール「神戸方式」だった。

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 仕組みはこうだ。

 毎年冬になると、異動対象者の氏名や年齢、住所、勤務希望区などが一覧になったリストが各校長の元に届く。小学校の場合は20枚ほど、計数百人分という。

 校長はまず自校の異動対象を確認し、続いて後任の人材を選択。在籍校の校長とその教員に面談を申し込み、受け入れられれば市教育委員会に届け出る。ただし、教員には最大9年まで同一校に勤務することが認められており、異動の提案を何度でも拒否できる。

 校長側にとっては、学校の現状に応じて必要な人材を集めやすくなる。教員側にとっては校長に選ばれることで意欲が高まり、介護や子育てといった事情にも柔軟に対応できる。

 神戸方式が長く温存された背景にはこうしたメリットがある。だが、本来の人事権者である市教委は事実上、かやの外。学校を知るパイプは自然と校長に限られ、ときとして市教委は情報から隔絶される。

 実際、市教委が東須磨小の問題を詳しく把握したのは、被害教員側から相談を受けた9月。くしくもこのときには、数年の議論を経て神戸方式の廃止がほぼ決まっていた。

 「本当に中核教員だった」。東須磨小の仁王(におう)美貴校長(55)は今月9日の会見で、主導した30代の男性教員をこう評した。

 異例の配置がそれを物語る。特に重要とされる6年の担任を4年連続で任され、いじめ対策も担当。その理由を神戸方式による前々校長の“威光”が働いた-とみる関係者は多い。いつしか先輩教員への呼び捨てが始まり、周囲には加害仲間が集まっていた。

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 「改革すればするほど、現場との距離感が開く」。17日の市総合教育会議。市教委幹部からは現場との溝の深さをうかがわせる発言が相次いだ。久元喜造市長は、会見で仁王校長が何度も「教育委員会さん」と呼んだことに「赤の他人のようだ」と指摘。教育行政の支援担当課を市長部局に置くことを決めた。

 早速ある校長は反発する。「不祥事をだしに校長の裁量を狭めようとしている」

 信頼は地に落ちた。足並みがそろわなければ、回復の道筋を描くのは難しい。




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