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「お地蔵さんの前でなら、みんな心穏やかでいられる」(2019年10月29日配信『新潟日報』ー「日報抄」)

 穏やかな表情を浮かべる地蔵の背に、こんな文字が刻まれている。「阿賀の岸から不知火へ」。阿賀野川の石を使って作られた。建立された地は熊本県水俣市である。25年前のことだ

▼その4年後には、水俣の石で彫られた地蔵が安田町(現阿賀野市)を流れる阿賀野川のほとりに据えられた。背に刻まれた文字は「不知火から阿賀へ」。2体の地蔵は、水俣病が引き起こされた地を結ぶ。犠牲者の鎮魂と地域の安寧を祈る人々のよりどころになっている

▼償いを求めた被害者に「カネ目当て」という言葉が突き刺さった。理不尽に引き裂かれた地域社会の結びつきを、もう一度よみがえらせたい。地蔵になら、誰もが穏やかに地元の明日を託せるのではないか。そんな思いが形になった

▼阿賀と不知火を結ぶ地蔵をテーマにした企画展が水俣市立水俣病資料館で開かれている。先ごろ開かれたトークイベントには、現地の関係者とともに地蔵の建立を手がけた阿賀野市の旗野秀人さんが招かれた

▼不知火から来た地蔵は、阿賀野川のほとりに古くからあった延命地蔵と並んで座す。地元の人々は両方に自然に手を合わせるという。旗野さんは言う。「お地蔵さんの前でなら、みんな心穏やかでいられる」

▼地蔵は仏になるのを延期して人の罪苦を除こうとした菩薩(ぼさつ)だという。庶民の信仰があついのは自ら人の世を巡り救済に取り組んだためか。公害に損なわれた暮らしを取り戻そうとする道のりを、阿賀と不知火の地蔵はじっと見つめている。




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