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「少しの工夫でなくせる死がある」 社会医学者の訴え(2019年11月4日配信『朝日新聞』)

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滋賀医科大学社会医学講座教授・一杉正仁さん(50)=2019年10月31日午後5時19分、大津市月輪町7丁目


 事故や事件といった「突然の死」と向き合ってきた。「死因が明らかになれば、遺族は突然亡くなったその人の『最期』を知ることができる。再発を防ぐ方法を考えるきっかけでもあります」

 公募に応じ、滋賀医科大学(大津市)の教授となって今年で6年目。専門は社会医学だ。犯罪に関わる法医学に加え、交通事故や災害の対策、家族を突然亡くした遺族に寄り添った心のケアにもあたる。

 犯罪に関係、疑いがある遺体の司法解剖は年間約140人。亡くなった人の体に残った傷や病変から、多くのことを「教えてもらえる」という。

 東京都世田谷区生まれ。6歳から神奈川県川崎市で暮らした。医師の父の姿を見て医学を志し、24歳から内科医として働き始めた。

 最初に勤めた川崎市の公立病院で、すでに手遅れの状態で運ばれてくる患者に出会い、衝撃を受けた。道端で横たわっていたという身寄りのない老人や、重度の薬物中毒症状を示す若者。「もっと早く助けられなかったのか」と葛藤した。亡くなった背景や死因を追究することで、予防方法を考えられると思った。

 中でも注目したのは病院内の廊下で突然倒れた患者だった。「なぜ」。詳しく調べると、静脈内の血の塊(血栓)が肺に達して詰まった突然死だった。

 今でいう「エコノミークラス症候群」とみられたが、当時の日本ではあまり知られていなかった。飛行機の中だけで発症するという見方もあり、原因ははっきりしていなかった。

 研究の結果、足を長時間動かさないと血のめぐりが悪くなり、血液の粘り気が強まって血栓が生じやすくなることがわかった。30歳のとき、論文として発表。オフィスや病室でも起こりうることや、足首を動かしたり、もんだりすれば防げることをメディアなどを通して訴えると、人々の意識は変わっていった。

 その後、妊娠中の女性が車内でシートベルトをせずに亡くなってしまうという問題に取り組んだ。危険性を示す実験結果を公表し、着用率の向上につなげた。

 「がんによる死者を明日から半分にすることはできない。しかし、社会の中には少しの工夫で死者をなくせる問題があります」

 いま力を入れているのは子どもの不慮の死への対策だ。うつぶせで寝てしまい窒息死した幼児。車でチャイルドシートを使っていなかったために命を落とす子ども。大人の不注意による事故が目立つと感じる。

 「社会のひずみが弱い子どもに表れている」とし、虐待の疑いがある子どもの診察にもあたる。親を恐れて口をつぐむ子どもに代わって、体の傷から事実を見抜く重要性を訴える。

 「子どもの死ほど切ないものはない。救える命ばかりなのだから」(新谷(しんや)千布美)




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