マイナンバー「赤ちゃんでも親の口座使えない」に不満の声 「登録を急ぐあまり、見切り発車」(2023年6月9日配信『東京新聞』)
- 2023/06/09
- 13:23

マイナンバーと連携した公金受取口座で、本人ではない家族名義の口座が約13万件登録されていた問題では、子どもの手続きの際に親名義の口座を登録したケースが多かった。しかし、口座を持たない乳幼児は多く、口座開設は手間もかかるため、「親の口座を登録できるようにしてほしい」との声が相次いでいる。
◆赤ちゃん連れで口座開設が必要?

「長男のマイナンバーカードを作ろうと思っているが、私の口座を公金受取口座にできないとは知らなかった」
8日午前、東京都葛飾区役所。区内に住む教員女性(30)は、生後1カ月の長男を抱きながらこう明かした。女性は「生まれたばかりで銀行に行くのも大変だし、赤ちゃんの口座開設はハードルが高い」と不満をもらした。
公金受取口座は、公的な給付金を受け取るための預貯金口座。本人名義の1人1口座に限られる。児童手当など世帯主の口座に家族分を振り込む従来のケースとは異なる。河野太郎デジタル相は7日の会見で、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者を例に挙げ、加害者に給付金が振り込まれるリスクなどから「本人名義にならざるを得ない」と述べた。
◆「政府は不備を承知の上でスタート」の指摘も
しかし、金融機関の口座を持たない乳幼児は多い。また、持っていても親が管理しなければならず、一つの口座で済ませたいと考えるのは普通だ。ITジャーナリストの三上洋氏は「実際、親名義にならざるを得ない赤ちゃんや子どもは少なくない。政府が制度の不備を承知の上で、登録を急ぐあまり見切り発車でスタートしたことが問題」と指摘した。
今回、本人以外の口座を登録することができたのは、マイナンバーで使われる漢字氏名と、口座で使われるカタカナ氏名が照合できなかったため。デジタル庁は2025年6月までに、自動照合できるようにシステムを改修する方針だ。(嶋村光希子、山口登史)
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マイナンバーカードは本当に安全?今こそ知っておきたい悪用が困難な理由(2023年6月9日配信『LIMO』)
個人情報の誤登録などの問題によって、マイナンバーカードは改めてその信頼性が問われています。身分証明書として機能することや機密性の高い情報にアクセスできるツールであることなどから、安全性が気になるという方も多いでしょう。

【一覧表でチェック!】マイナンバーカードの記録情報とそのセキュリティ対策は?
運用する行政側の不備に関して国民ができることは少ないですが、自衛のためにもどのようにして安全性を担保しているのか知っておくことは重要です。今回はデジタル庁がホームページ上で公開している情報をもとにその仕組みを説明します。
【マイナンバーカードの安全性】記載されている情報
まずはマイナンバーカードに記載されている情報を確認しておきましょう。同カードに表記されている情報は以下の通りです。
<表面>
氏名、住所、生年月日、性別、顔写真、電子証明書の有効期限、臓器提供意思
<裏面>
氏名、生年月日、個人番号
これらは目視で確認できる情報なので、紛失や盗難にあった場合は流出する可能性があります。そのため、他の身分証明書同様に厳重に管理する必要があります。ただマイナンバーを用いた窓口の手続きは顔写真による本人確認が義務化されているため、悪用される可能性は低いです。
【マイナンバーカードの安全性】ICチップに記録されている情報
マイナンバーカードの裏面にはICチップが組み込まれており、以下の情報が記録されています。
<ICチップ>
カードに記載されている情報、署名用電子証明書、利用者証明書電子証明書
よく誤解されますが、ICチップには「税関係情報」や「年金関係情報」のようなプライバシー性の高い情報は記録されていません。なお、署名用電子証明書と利用者証明書電子証明書の有効期限は発行日から5回目の誕生日までとマイナンバーカードの有効期限(発行日から10回目の誕生日まで)より短く設定されています。
ICチップに記録されている情報はICカードリーダ/ライターにかざすことで読み取ることができます。利用には電子証明書とアプリそれぞれで暗証番号が設定されているので、仮に紛失しても取得した第三者はなりすましができない仕様です。暗証番号は一定回数以上間違えるとロックされます。
また、セキュリティの国際標準である「ISO/IEC15408認証」を取得しており、不正に情報を盗取しようとすると自動的に記録情報を消去する機能が備わっています。
【マイナンバーカードの安全性】番号の変更はできる?
マイナンバーの変更はマイナンバーカードが盗難されて不正利用の恐れがある場合に限り認められています。住んでいる市区町村の窓口で相談することができます。
【マイナンバーカードの安全性】紛失時の対処法
万が一、マイナンバーカードを紛失した場合は、利用を一時停止する必要があります。最初に取るべきアクションは個人番号カードコールセンター(24時間365日対応)に電話することです。屋外で紛失した場合は警察に届け出をする必要もあります。再発行は必要書類を住んでいる市区町村の窓口に持参して手続きを行います。
<再発行時の必要書類>
個人番号カード紛失・廃止届(市区町村の窓口に用意)
個人番号カード再交付申請書(市区町村の窓口に用意)
顔写真(4.5×3.5cm)
本人確認書類
(屋外紛失の場合)警察署に遺失届を届け出た警察署名・電話番号・担当者名・遺失届受理番号
【マイナンバーカードの安全性】考えられる悪用例
カードの仕様としては安全性の高いマイナンバーカードですが、流出した情報によって悪用の範囲は変わってきます。流失したのが「マイナンバー」のみであれば何の心配もありませんが、ここに氏名や住所が加わると個人情報の不正売買やなりすましの危険性が生じます。精巧な技術で偽の顔写真を貼り替えれば、婚姻届や死亡届などの行政手続きが勝手に行われてしまう可能性もあります。
特に注意したいのはマイナンバーカードと合わせて「暗証番号」が流出した場合です。こうなるとオンラインの手続きに関してはほぼガードがない状態になってしまいます。忘れないようにメモをとるなどの行為は絶対にやめましょう。行政のエラーに関しては自分が該当者でないか確認する以外にできることはありませんが、自衛できるものに関しては事実をよく認識して対策を講じることをおすすめします。
参考資料
・デジタル庁「マイナンバーカードのメリットと安全性」
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