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パワハラ防止指針 働く人、守り切れるのか(2019年11月27日配信『中国新聞』ー「社説」)

 職場でのパワーハラスメントを防止するため、厚生労働省が具体的な規制の指針案をまとめた。パブリックコメントを募り、年内にも正式に決定する。

 「企業任せ」から一歩前進したが、問題点は多い。

 今回示された指針案では、企業がパワハラの定義を恣意的(しいてき)に解釈して対策の範囲を狭めかねないからだ。

 深刻化する被害から、弱い立場に置かれた働く人を本当に守り切れるのか。不安を残した内容と言わざるを得ない。

 女性活躍・ハラスメント規制法が5月に成立し、大企業は来年6月から、中小企業は2022年4月から、パワハラ防止対策を取ることが義務付けられた。相談窓口の設置や社内規定の整備などが求められる。

 どんな行為がパワハラに当たるのか、業務上必要な指導との線引きが難しいとする企業側の主張を受ける形で、罰則付きの禁止規定は見送られた。そのため、パワハラの定義や企業の責務について具体例を盛り込んだ指針で対応することになった。

 厚労省が10月に示した指針の素案では、パワハラ行為を「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「過小な要求」「人間関係からの切り離し」など6類型に分類した。

 その上で「必要以上に長時間にわたる厳しい叱責(しっせき)を繰り返す」「仕事を外し、長期間別室に隔離する」などを、パワハラに該当する事例として示した。

 一方で「遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動を再三注意しても改善されない人を強く注意する」「経営上の理由で一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせる」などを、パワハラに該当しない事例として列挙した。

 労働者に落ち度があれば、パワハラまがいの行為も許されるとの誤解を与えかねない内容である。これでは、被害者や労働者側が「責任を逃れるための使用者の弁解カタログだ」と反発したのも無理はあるまい。

 素案の一部は修正され、「マナー」などの文言が削除された。パワハラの判断に「相談者の心身の状態や受け止めなどにも配慮」するとの一文も新たに加えられた。

 しかし当初の素案の内容はほぼ踏襲された。「社会的ルール」や「強く注意する」といった記述の基準はあいまいで、「経営上の理由」などは企業の弁解にも利用されかねない。

 厚労省は指針に書き込めなかった対応は、通達などで補うとしている。実効性ある具体例を示し、企業に有効な対策をとらせるよう促してほしい。

 指針が原則として保護の対象を企業の社員に限定しているのも問題だ。個人で仕事を請け負うフリーランスが取引先から受けるパワハラや、就職活動中の学生が受けるハラスメントなどへの具体策は乏しい。対象の拡大も検討すべき課題である。

 パワハラ被害は後を絶たない。トヨタ自動車の男性社員がパワハラを受けて自殺し、今年9月に労災認定されていたことも発覚した。実効ある対策は急務である。

 ハラスメントは被害者の命や健康に関わる重大な問題であり、企業にとっても大きな損失となる。どうやって職場から被害をなくすのか、企業は誠実に対応すべきだ。




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Author:gogotamu2019
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