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IR判断、揺れた知事 本音は「誘致した方が」(2019年11月30日配信『北海道新聞』)

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 鈴木直道知事は29日の道議会一般質問で、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の誘致見送りを表明したが、検討を継続する考えも示す玉虫色の言い回しに終始した。政府や自民党の動向、世論の反発、計画申請までの日程などをにらみ、知事の思いは決断に至るまで揺れ動いた。一方、道側の働きかけで議会決議を取り付けるなど奔走した苫小牧市側の憤りは収まらない。

 「私は熟慮に熟慮を重ねた」。鈴木知事は道議会一般質問の後、報道陣の取材に苦悩をにじませた。その後、札幌市内のホテルであった国会議員の懇親会に参加したが、あいさつではIRについて一言も触れなかった。

 検討がヤマ場に差し掛かった今月13日、道のIR担当幹部が道庁3階知事室に集まった。候補地とする苫小牧市植苗地区の環境保全などの課題解決が難しくなり、一部幹部は誘致断念に向けて知事の説得を試みた。

 猛禽(もうきん)類などの希少生物が確認され、環境影響評価を行うと約1年半後の申請期限には間に合わないことなどが報告された。「やりたかったな」。次々と伝えられる情報に、知事がつぶやいた。そして「どうすれば、こうした課題を克服できるかを考えてほしい」と指示を出した。

 知事は今春の知事選で「道民目線で早期に決断する」と掲げたが、公約をまとめた選対幹部に対し、IRを盛り込むことに抵抗感を示した。就任後は「適時適切に判断する」と繰り返し、周囲にも「私は高橋はるみ前知事より慎重」と打ち明けていた。

 転機はここ1カ月。菅義偉官房長官はかねてIRの道内誘致の推進を知事に求めていた。菅氏は知事の後ろ盾とされ、安倍政権でIRの旗振り役を務める。道幹部や自民党の中堅道議は「IR整備法の見直しも含めて、何らかの情報提供があったのではないか」とみる。

 知事は22日朝、道庁内の打ち合わせで「誘致した方がいいと思っている」と明言。ところが、誘致に向けた課題は残されたままで、事務方の説明を聞くうちに「誘致表明しても途中で断念する可能性もあるね」「これじゃIR事業者も興味を持たないだろう」とトーンダウン。道議会自民会派が26日に誘致への意見集約を見送ると誘致断念の流れが定まった。

 知事は自民党の推薦を受けて初当選し、支援組織は経済界をはじめとしたIR推進派が中心。「北海道のIRは大きな可能性が期待される」「来るべき時に挑戦する」。一般質問の答弁は、こうした支持層の批判を最小限にとどめたい思いがにじんだ。自民党のベテラン道議は「道民には分かりづらいだろうが、こうするより他はなかった」と指摘した。(犬飼裕一、竹中達哉)

■苫小牧「ただただ残念」

 「ただただ残念としか言いようがない」。IR誘致を目指してきた苫小牧市の岩倉博文市長は29日の記者会見で、鈴木直道知事が誘致断念を表明したことに無念さをにじませた。

 市は2013年、苫小牧をIR候補地にするよう苫小牧商工会議所とともに道に要望。IR事業者との接触も重ねてきただけに、衝撃は大きい。今月にはIR候補地の地権者からデータ提供を受け、約1800万円を投じる独自の動植物の調査に着手していた。岩倉市長は「(調査の)方向が出ない段階での判断はどうしてかな、という思いがある」。IR誘致を続けるかどうかは「知事か副知事かは分からないが、一度協議したい」と含みを残した。

 苫小牧市議会は10月、道の水面下の打診を受け、全会一致の慣例を破ってまでIR誘致推進の決議を賛成多数で可決した。与党市議は「喪失感が大きくて何も考えられない」と落胆と憤りを隠せない様子だった。

 市内経済界でつくる苫小牧統合型リゾート推進協議会の藤田博章会長(苫小牧商工会議所名誉会頭)は「知事の判断は納得いかず、あきらめられない」と話した。

■7年前から検討

 道は、IRの道内誘致について、高橋はるみ前知事時代の2012年から約7年にわたって検討を進めてきた。前知事は退任直前まで態度を鮮明にせず、鈴木直道知事は今年4月の就任から約7カ月で判断を迫られる形となった。

 道は12年にシンガポールや韓国など海外カジノの調査に着手。高橋前知事も14年にシンガポール・セントーサ島のIRを視察した。18年夏には、観光事業者や学者らで構成する有識者懇談会を設置し、誘致の是非を巡る議論を始めた。

 ただ、北海道新聞の世論調査で誘致反対が6割を超え、前知事は道民世論を強く意識して誘致への賛否を曖昧にし続けた。今年2月の道議会答弁で「誘致に向けた取り組みを進めることが重要」と前向きな姿勢を鮮明にしたが、既に退任まで残り2カ月となっていた。

 鈴木知事は道外都市が誘致活動を活発化させる中で10月、年内に是非を判断すると表明。本格的な検討を急いだが、候補地とした苫小牧市植苗地区に生息する希少動植物の保全対策など新たな課題が次々と浮上。「前知事が判断を留保し続けたため、鈴木知事は時間切れで断念に追い込まれた」(自民道議)との指摘もある。




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