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優生手術の救済 当事者に届かなくては(2019年11月30日配信『信濃毎日新聞』ー「社説」)

 多くの被害者が声を上げられずに埋もれてしまわないか。当初からの懸念が現実になっている。救済制度を設けても当事者に届かなくては意味がない。

 旧優生保護法の下で不妊手術を強いられた障害者らへの一時金の支給である。救済法の成立から半年で、支給の認定を受けた被害者は260人余にとどまる。本年度の予算に計上した3400人分の1割に満たない状況だ。

 支給を受けるには被害者本人の申請が要る。厚生労働省は、存命の被害者をおよそ1万2千人と推計しているが、申請自体もまだ700人ほどと少ない。

 制度の周知が足りないことに加え、プライバシーの保護を理由に国が個別の通知をしていないことが背景にある。障害のために手続きが難しい人や、偏見を恐れて名乗り出られない人は少なくない。それと分からない形で不妊手術を受けさせられ、本人が被害に気づいていない場合もある。

 自己申告に委ね、被害者を置き去りにするような仕組みは改めなければならない。個人が特定できる人には、プライバシーに最大限配慮しつつ、救済を受ける権利があることを知らせるべきだ。

 鳥取県や岐阜県は個別の通知を独自に行っている。不妊手術を強いた優生政策を実質的に担ったのは都道府県だった。国が動かないのならなおさら、率先して被害回復を進める責務がある。

 旧法は戦後の1948年に成立し、優生手術は40年余にわたって行われた。96年に法は改定されたが、その後も20年以上、政府は補償や謝罪を拒み、実態の調査にも応じてこなかった。

 その間に記録の散逸、廃棄が進み、被害者の把握は困難になっている。不妊手術を受けた人は国の統計で2万5千人近くに上るが、個人の手術記録が残っているのは3千人ほどにすぎない。

 被害の全容はつかめておらず、実態の掘り起こしが欠かせない。救済制度が申請の期限を5年と区切ったことも、被害者の切り捨てにつながり、容認できない。

 人権侵害の重大さと国の責任の大きさを踏まえれば、そもそも期限を設けるべきではない。1人も取り残さない仕組みでなくてはならないはずだ。

 議員立法で成立した救済法は、国の責任を明確にせず、旧法の違憲性にも触れなかった。核心をぼやかしたまま、形だけ救済を図って終わりにするわけにいかない。補償のあり方を国会で根本から議論し直すべきだ。




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