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虐待対応の基本徹底を/令和元年版犯罪白書(2019年11月30日配信『東奥日報』ー「時論」)

 法務省は2019(令和元)年版の犯罪白書を公表した。今年は「平成の刑事政策」と題し、平成の30年余りにわたる犯罪の動向や刑罰法規の変遷を特集した。刑法犯や交通犯罪など多くの犯罪が軒並み減少傾向にある中で、14年以降に一貫して増え続けている児童虐待の深刻さが浮き彫りになった。

 00年に虐待の早期発見・防止に向け児童虐待防止法が成立。児童福祉法とともに改正が重ねられ、04年に国民の通報義務拡大、07年に児童相談所が強制的に家庭に立ち入り調査できるようにする臨検制度創設など一連の対策が取られた。今年6月には親による体罰禁止の規定が設けられ、来年4月から施行される。

 政府は悲惨な虐待事件が起きるたびに、子どもの安全確認や児相の体制強化などを柱とする緊急対策を打ち出してきた。だが虐待は後を絶たない。国や自治体による事件の検証では児相や警察、自治体など関係機関の連携不足や児相の判断ミスが繰り返し指摘され、専門人材の育成・確保が急務となっている。

 虐待を受けている子どもの意見を親権者や児相以外の第三者が聞き、関係機関の対応に反映させる制度の整備にも大きな期待が寄せられている。子どもの安全確保を最優先するという虐待対応の基本を徹底し、山積する課題を着実にこなすことが求められる。

 白書によると、児童虐待を巡る検挙件数・人員は14年以降に急増し、18年は1380件、1419人。それぞれ03年の約6.5倍、約5.9倍だった。加害者は実父が622人で最も多く、これに養父・継父266人、母親の内縁の夫127人が続く。実母は352人。暴行が大幅に増え、傷害や性的虐待も多い。

 虐待と密接な関係にあるドメスティックバイオレンス(DV)の検挙件数も14年以降に大幅に増加。18年は8229件に上り、1989(平成元)年の約12倍となった。内縁関係も含め、DVに走る男性は子どもを虐待することが多く、女性が恐怖心などから一緒に虐待するケースもある。

 白書公表の前には、千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さんが今年1月に虐待死した事件で県検証委員会が報告書を公表した。心愛さんは2017年11月、学校アンケートで父親の暴力を告白。児相は一時保護したが、翌月に祖父母が引き取るのを条件に解除した。一時保護中に心愛さんは性的虐待も明かしていた。

 18年3月に「お父さんにたたかれたというのはうそ」という児相宛ての手紙を父親に書かされたことも分かった。だが児相は動かなかった。また市は父親のDVを疑わせる情報を把握していたが、支援はしなかった。

 検証委は「救える命だった」とした上で「ミスがミスを呼び、リスク判断が不十分なまま保護が解除され、漫然と推移した末に痛ましい結果を招いた」と結論付けた。

 全国の児相が18年度に対応した虐待の相談は15万9850件に達し、5年前に比べ倍増した。児相の業務は増加の一途をたどり、人的補充が喫緊の課題となっている。政府も児童福祉司や児童心理司ら専門人材を大幅に増やす方針を打ち出しているが、当面は厳しい人繰りが続くだろう。ただ、そうした中でも、虐待対応の基本が揺らぐことがあってはならない。




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