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パワハラ指針 深刻化を防ぐ見直し必要(2019年12月2日配信『山陽新聞』ー「社説」)

 パワハラの定義などを盛り込んだ指針が、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の分科会で了承された。意見公募を経て、年内にも正式決定される。

 防止策が動きだすのは大きな一歩だが、指針について労働者側は「企業の責任逃れを許す内容」と懸念を示しており、被害防止につながるかは見通せない。

 初めて企業にパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が来年6月に施行されるのに向け、指針の内容について労使が議論してきた。大企業は同6月から、中小企業は2022年4月から義務付けられる。

 労働者側が特に問題視してきたのは、指針にパワハラに該当しない例が列挙されたことだ。例えば、当初案では「遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない人に強く注意」などは該当しないとしたが、労働者に問題があればパワハラにならないと誤解を与えかねないとして、労働者側が見直しを求めていた。

 結局、「服装の乱れ」や「マナー」の文言が削られるなどしたものの、当初案の内容はほぼ踏襲された。「社会的ルール」や「注意」が示すものは曖昧で、企業や加害者に弁解の余地を与えかねないと労働者側は批判している。

 パワハラに当たるかどうかの判断について当初案は「平均的な労働者の感じ方」を基準としたが、これに「相談者の受け止めなどの認識に配慮」することも追加された。ただ、こうした労働者側の視点に立った修正は一部にとどまり、全体的には使用者側が押し切った印象が拭えない。

 また、労働法制の対象にならないフリーランスや就職活動中の学生へのハラスメントについて、指針は「相談があった場合は適切な対応に努めることが望ましい」とした。しかし、具体策は乏しく、当事者からは被害が防げないとの不満の声が上がっている。

 パワハラによる精神疾患の労災申請は年々増え、自殺に追い込まれる人も少なくない。指針を巡る議論の間も、トヨタ自動車で2年前に自殺した当時28歳の男性社員が労災認定されていたことが分かった。上司から日常的に「ばか」「あほ」などと叱責(しっせき)され、「死んだ方がいい」などの暴言も受けていたという。

 労働者の命にかかわる問題であり、パワハラの深刻化を防ぐことは急務だ。労働者の声を十分に聞きながら、今後も指針の見直しを重ねる必要がある。

 今年6月には国際労働機関(ILO)の総会で、職場でのハラスメントを全面禁止する条約が採択された。日本は採択に賛成したものの、批准していない。批准国は禁止を法律で義務付け、違反に制裁を設けるよう求められる。ハラスメント規制法には罰則がない。今後、同法の見直しも求められよう。




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