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中村哲さん殺害 アフガン混迷の中の死を悼む(2019年12月7日配信『読売新聞』ー「社説」)

 アフガニスタンの復興に身をささげながら、理不尽に命を奪われた。卑劣で許し難い凶行だ。

 民間活動団体「ペシャワール会」の現地代表で医師の中村哲さんがアフガン東部で銃撃され、死亡した。さぞかし無念だっただろう。

 中村さんは1984年にパキスタンのペシャワルでハンセン病患者の診療を始め、隣国アフガンに拠点を移した。2000年の大干ばつを契機に、井戸や農業用水路の整備を始めた。

 「薬で飢えは治せない」「100の診療所より1本の用水路」と訴えた。土木を独学し、重機を自ら運転した。地元の住民と1600本以上の井戸を掘り、1万6500ヘクタールの農地に水を供給して、65万人の生活を支えた。

 アジアのノーベル賞と呼ばれるマグサイサイ賞を受け、アフガン大統領から勲章や市民証も贈られた。現地の人々の厚い信頼を得ていた証しである。

 海外の紛争地では、現地政府への揺さぶりや身代金目的で、外国人や国際支援団体を標的にしたテロや誘拐が絶えない。中村さんは移動の際に警備員を付けるなど、細心の注意を払っていた。

 自らの安全を確保しながら、人道支援活動を続ける。その過酷さを改めて認識させられる。

 アフガンでは、治安の悪化に歯止めがかからない。中村さんが活動していた地域は、旧支配勢力タリバンが影響力を持つ。イスラム過激派組織「イスラム国」も活動を活発化させている。

 2001年の米同時テロで実行犯をかくまっていたタリバン政権は、米国の攻撃で崩壊した。だが、その後に勢力を回復し、アフガン治安部隊や駐留外国軍との戦闘を続け、テロも行っている。

 テロや戦闘などによるアフガンの民間人の死傷者は、14年から5年連続で1万人を超えた。

 問題は、治安維持の責任を担うアフガン治安部隊が機能していないことだ。5年前に米軍などから治安権限を移譲されたが、能力と装備の不足は否めない。

 トランプ米政権は1万4000人規模の駐留米軍を削減する方針を示している。拙速な撤収は情勢のさらなる悪化につながりかねない。慎重に対応すべきだ。

 9月末に行われたアフガン大統領選は、不正投票疑惑で集計が進まず、いまだに当選者が決まらない。国際社会の支援先細りを避けるうえでも、すみやかに新政権を発足させ、政治と治安の安定に取り組む努力が欠かせない。




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Author:gogotamu2019
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