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進め、農福連携 浜松市のユニバーサル農業研究会(2019年12月15日配信『朝日新聞』ー「静岡版」)

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ミニチンゲンサイを収穫する京丸園の鈴木厚志社長(中央)と従業員=2019年12月12日午前9時半ごろ、浜松市南区鶴見町

 障害者、高齢者でも従事できる「ユニバーサル農業」。その一環で、担い手不足に悩む農業と、雇用を求める障害者のマッチングを目指す「農福連携」が浜松市で進んでいる。今年農林水産大臣が視察に訪れ、全国規模の賞を受賞するなど注目を集めている。

 12月中旬、浜松市南区の農業用ハウス内で、ミニチンゲンサイの収穫が行われていた。黙々と作業していたのは農業生産法人「京丸園」の従業員たち。役員を含め総勢100人のうち39人が知的・身体的な障害を持っている。

 苗を植える際に使うトレーには円錐(えんすい)形の穴が開いていて、「苗を穴に落とすだけで、誰でも百点満点の植え付けが出来る」と、社長の鈴木厚志さん(55)。25年ほど前から障害者を雇用するようになり、作業の工夫を重ねてきた。健常者にとっても使いやすくなり、会社全体の作業効率も上がったという。

 障害者雇用のきっかけは、求人募集に応募してきた障害者の母親が「給料はいらないから働かせて欲しい」という言葉だった。当時、仕事はお金を稼ぐためのものと思っていた。「『(世の中に)自分の力が役に立つ場所がどこかにあるはず』という思いが伝わってきた」と鈴木さん。

 他の従業員がどう思うのか、足手まといにならないか。不安もあって、1週間の研修ということで引き受けた。心配は無用だった。パートの女性たちは、障害のある研修生が困っていると、「どうしたの」と声をかける。「職場が明るく、優しくなった」という。

 障害者の雇用は年々増えた。ただ、「ちょっと水をかけて」と指示しても、うまく出来ない。障害者施設に相談すると、「それは指示じゃない」と手厳しかった。「気温が何度になったら、根元から何センチの場所に、何ccの水を」。それが指示だ、と。「自然という言葉で全てをあいまいにして、農業は経験と勘でやってきた。それでは、技術を人に伝えられない」。鈴木さんは農業の人手不足の原因の一端を実感した。

 看板商品のミニチンゲンサイを扱う部門は、ほぼ障害者が担う。手間がかかることから大手は手を出しにくく、差別化をはかった。売り上げは年間1億円。鈴木さんによると全国でも有数の規模という。「彼らの力をどう生かすか。『戦わない』という戦略です」

 福祉の側からアプローチもある。その一つが、農業と福祉の相性の良さに気付いた障害福祉サービス事業所「だんだん」(同市北区)だ。

 働きたいと願う利用者のため、15年ほど前に近所の農家に頼み込んで作業させてもらった。畑に出るようになると、休みがちだった利用者も元気に通ってくるようになった。「体力が付く。ご飯をいっぱい食べる。疲れるから眠る。生活のリズムが安定するんです」と、施設長の金田祥史さん(50)は話す。

 現在は京丸園の障害者がだんだんの就業支援事業に登録し、京丸園では対応が難しい家庭内トラブルも含め、アドバイスしたり悩み相談に乗ったりしている。

 農業との相性はいいものの、障害者にとっては難しい面もある。雨が降って畑から室内作業に移る場合など、障害者は急な変化には対応しきれないことがある。「福祉の知識がある農家が増えてくれるといいのですが」。農閑期があって通年雇用の場が少ないことも課題に挙げた。

 浜松市では、京丸園、だんだんを含め、農業や福祉施設のほか、行政や企業、大学などが参加する「浜松市ユニバーサル農業研究会」が06年に発足しており、さらなる連携の深化に向けて活動している。




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