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就活で70社に落ち摂食障害、うつ病、ひきこもりに… 43歳ロスジェネ男性を襲った現実(2019年12月17日配信『アエラドットコム』)

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1997年、氷河期世代が新卒採用だったころの就職説明会。バブル崩壊の影響で企業が採用を控える一方、団塊ジュニア世代で人数が多かった 

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内閣府の担当者(右端)に要請書を手渡す就職氷河期世代の人たち。正規雇用への移行とともに、貧困から生まれる将来の不安解消も必要だ 

 政府が示した就職氷河期世代への支援プログラムによれば、支援の対象は100万人ほどいると見込まれる。その半数は不本意に非正規雇用で働く人たち、ほかにも長期無業者、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする人たちがいる。

 千葉県の不破徳彦さん(42)は、1日9500円の日雇いの仕事に月に何度か就きながら、社会復帰を目指す。生活費は主に両親を頼っており、貯金はおよそ20万円。12月上旬、ネクタイをしめてスーツ姿で取材に現れた不破さんは、この20年間を語ってくれた。

●アルバイトを転々と、摂食障害とうつ病を患った

 首都圏の私立大を00年3月に卒業した。企業に勤め、そのうち結婚もして、子どもができる。こう想像していた将来は、第一歩目の就職でつまずいた。

「エントリーシート(ES)を書いても足切りされてばかりで、実際にSPI試験(総合適性検査)に進んだのは2社くらいでした。そこは、ESがなかったから受けられたんですけど」

 鉄道会社を希望し、私鉄を中心に就活した。難しそうだと察知すると、アルバイトの経験を生かして食品関係の企業などにも対象を広げた。約70社にアプローチしたが、大学4年の夏に心が折れた。いったん就活はやめた。

 卒業後はアルバイトを転々とし、精神疾患とも闘う生活が始まった。食品関係や、美術品の燻蒸(くんじょう)処理のアシスタントを経験した後、求人に応募して警備会社に契約社員として採用されかけた。しかし、健康診断で引っかかり、内定が取り消しに。当時は、身長180センチで体重105キロ。脂肪肝による健康状態の不良を指摘された。ダイエットしながら、リバウンドの怖さにおびえて摂食障害に。うつ病も患った。24歳だった。

 しばらく引きこもり、次に働いた食品工場ではミスをした。ギョーザをつくるのに粉の配分を間違えた。3日目の昼、派遣会社の営業担当者と食事をしながら言われた。

「今日付で退職になった。申し訳ない」

 想像していた人生からどんどん離れていった。デイケアに通い、福祉施設の作業所での軽作業などを転々とした。

「定職に就きたいとは今も思っています。ただ、年齢や体調のことを考えると……」

●働きたくても働けない、社会に参加できる支援を

 仕事のない日はなるべく自宅から出て近所を自転車で走ったり、相談支援の事業所に顔を出して、プログラムに参加したりしている。正規雇用は考えていない。自分に合ったところで生きていく。だから、政府の支援プログラムにはこう感じている。

「支援から漏れてしまって、敗北感だけが残る人が出てこないか心配です」

 政府の支援には、どこまで期待ができるのか。支援に取り組むNPO法人育て上げネットの工藤啓理事長(42)は言う。

「3年間の限定だが、取り組むこと自体に意味はある。働けていない方々を支援の対象に入れたことは特徴的だ」

 ただ工藤理事長は、この政府の支援プログラムは基本的な設計が雇用政策であり、欠けている視点があるという。

「病気や精神的不調などですぐに働きたくても働けない人たちが存在する。この人たちの居場所を作らなければいけない」

 働けないことで貧困と直面したり、社会とのつながりを持てなくなったりするケースも多い。

「彼らが力を発揮できる働き方が可能な社会、つながりたい社会をつくることと、そこに参加できるための支援が必要だと考えています」(工藤理事長)

 正規雇用者を増やすことだけでなく、その「つながりたい社会」を見つけられるような支援、例えば、その「社会」に参加するための交通費の補助なども求めている。

 12月10日、前出の不破さんや、自ら当事者でもあり、氷河期世代の雇用問題の調査などを手がけている「氷河期世代ユニオン」代表の小島鐵也さん(44)ら7人が内閣府を訪れた。担当者に要請書を手渡し、「最低賃金に代わる最低保証所得の導入」など5項目を求めた。小島さんは訴える。

「氷河期世代の問題はずっと置き去りにされてきた。雇用の確保と同時に、本人が努力したくてもできない場合、所得が少なくても困窮せずに生きていける仕組み作りを強く求めたい」

(編集部・小田健司)※AERA 2019年12月23日号



ロスジェネ再挑戦支援 正規雇用30万人増やせるか(2019年12月17日配信『アエラドットコム』)

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宝塚市の採用試験の1次試験。安定した公務員を希望する人は多いが、求人は人手不足の業界が多くなりそうだ。マッチングが課題 

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ハローワーク池袋にできた氷河期世代の専用窓口「ミドル世代チャレンジコーナー」。専門スタッフによる支援を受けることができる

 たまたまこの世代に生まれたというだけで不利益が続く。就職が厳しく、不安定な人生を余儀なくされた。そんな世代に再挑戦の機会をつくるため、社会が動きだした。AERA 2019年12月23日号で掲載された記事を紹介する。

*  *  *
 11月25日、兵庫県の宝塚市役所で2020年1月に採用される40代の男女3人が記者会見に臨んだ。就職氷河期世代を対象に絞った採用で、世間の注目を集めた合格者たちだ。

 同市では今年7月、30代半ばから40代半ばの氷河期世代を対象にした正規職員の採用試験の実施を発表すると、3人の募集枠に1816人が殺到した。1次試験を受験したのは1635人。実際は1人増やして4人を採用したが、すさまじい倍率だ。

 合格者の1人が、宝塚市の女性(45)。地元の公立高校を出て、九州にある大学の農学部に進学。幼いころから将来は動物園で働きたいと思っていた。業界の将来を見据え、就職の際に武器になると思って学芸員の資格も取得した。就職活動を始めたのは大学3年生の初めごろ。意中の動物園に手紙を送り、採用があるかどうか尋ねた。

「高卒の募集しかありません」

 期待していた返事はなかったが、諦めもつかない。他の動物園も当たったが、同じ答え。乳業メーカーを中心に幅広い企業を検討し始めた。

 気になる企業をノートに書き出し、手当たり次第にアプローチ。その数、100社以上に上った。ノートに書き留めてあった企業名には、次々と横線が引かれていった。

 内定が出たのは外食産業の1社だけ。この企業は、合同説明会でブースをのぞいた。乳製品の研究をしていることを伝えると、社長の男性は言った。

「うちでも研究をする部署を立ち上げたい。来てもらえないか」

 その言葉を信じて就職を決めたが、その部署ができることはなかった。しばらく悩んだ後、退職した。在籍期間は2カ月だった。

 その後はフィットネスクラブやレジャー施設でのアルバイトで生計を立てた。結婚して専業主婦の期間もあったが、のちに離婚。その直後に、宝塚市の採用に応募しようと決めた。生活の不安だけではなく、宝塚は住みやすく、子どもの送迎などで地域の人たちに助けられてきたことから、「地域に貢献したい」と考えた。

女性は大学生の当時の就活をこう振り返る。

「大変で、つらい思いをすることも多かったのですが、みんながそうでした。厳しい時代だったのだと思います」

 現在の30代半ばから40代半ばにかけては、バブル経済崩壊後の厳しい不況期に新卒採用を迎えた就職氷河期世代だ。失われた世代、ロストジェネレーションとも言われる。総務省の調査によると、非正規で働く35~44歳は、18年現在で371万人いる。25~34歳の非正規より100万人以上多い。

 たまたまその世代に生まれただけで、機会を奪われ、著しく不利益を被っていいのか──。ロスジェネ世代に再チャレンジの機会を与えようという機運が広がっている。

●正規雇用を30万人増やす、民間企業にも働きかけ


 政府は19年6月、経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。その目玉が、ロスジェネ世代への支援プログラムだった。数値目標を掲げており、今後3年間で正規雇用者を30万人増やすことが目標とされている。

 施策は「相談、教育訓練から就職まで切れ目のない支援」と「個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援」の2本柱。20年度の概算要求では1344億円を計上した。ただ、第1次安倍政権でも「再チャレンジ支援」を掲げ、看板倒れとなった経緯もある。

 政府の方針を受け、まず始まったのが、この世代を対象にした公務員の採用だ。宝塚市のほかにも、兵庫県や愛知県、和歌山県、兵庫県三田市、千葉県鎌ケ谷市、滋賀県甲良町といった自治体が採用に乗り出した。11月には国家公務員でも取り組むことが発表され、採用人数などの詳細を詰めている。

 ただ、公務員だけでは数は限られている。実態としては民間の採用に多くを頼ることになるだろう。

 まず、採用に動く企業は人手不足の業界が中心になりそうだ。いち早く手を挙げたのが総合物流の山九(本社・東京都)だ。

 同社は8月、氷河期世代の中途採用活動に取り組むことを発表した。人数は1年間で100人、3年間で計300人としている。1990年代後半、同社でも定期採用が少なくなり、現在、社内でもロスジェネ世代がほかの世代より1割ほど少ないという。

 物流と建設工事、プラントメンテナンスなどを主な事業とする同社では、その後事業が急激に拡大し、今は採用難が続いている。青山勝巳人事部長(54)によると、定期の採用では年間800人ほどを目標とし、さらに中途採用でも補う形が続く。ここ4、5年、年間1千人規模の採用を続けている。中途採用の枠はロスジェネ世代も対象とされるが、非正規などで働くこの世代が求人に殺到したわけではなく、これまでの採用では年代構成のアンバランスを解消できなかった。

 今回、あらためて取り組みを表明したのは、年齢制限をつけた求人ができるようになったのが大きいという。マッチングの問題は残るが、効果も期待する。10月末までに4人を採用した。

「景気が悪い時期に学校を出ただけで、実際に働いている人たちをみていると、離職率も低いし、戦力としてとても期待している世代だ」(青山部長)

 内閣府では、こうした民間の求人を増やすよう経済団体などに働きかけを続けている。ただ、現段階では、どこまで求人があるかは未知数だ。(編集部・小田健司)

※AERA 2019年12月23日号




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