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性暴力の告発 被害者に寄り添う社会に(2019年12月23日配信『山陽新聞』ー「社説」)

 性暴力の被害をためらわずに告発できる社会をつくるための議論を、深める契機としたい。

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが性暴力被害を訴え、元TBS記者に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は「酩酊(めいてい)状態で意識がない伊藤さんに合意がないまま性行為に及んだ」と認定し、330万円の支払いを命じた。元記者側は控訴する意向を明らかにしている。

 刑事手続きでは元記者は嫌疑不十分で不起訴となっており、結論が分かれた。とはいえ、判決の意義は小さくない。改めて浮き彫りになったのは司法における立証の難しさである。

 刑法の強制性交罪や準強制性交罪は相手の同意がないというだけでは成立しない。被害者の抵抗が著しく困難なほど「暴行・脅迫」があった、意思決定の自由を奪われ「抗拒不能」な状態だった、など罪の判定には厳しい要件が課されている。2017年の刑法改正時に被害者や専門家から撤廃するよう要望もあったが見送られた。

 ただ今春、実父による娘への性的虐待など性犯罪を巡る裁判で無罪判決が相次いだことを機に、抗議の草の根運動「フラワーデモ」が始まり、全国に広がり続けている。被害の声を上げづらくなるとの危惧は当然だ。

 改正刑法の付則では来年をめどに状況を検討し、必要があれば見直すとしている。被害実態に即した法整備に向けさらなる議論を進めたい。

 告発に真摯(しんし)に応えられるか社会のありようも問われた。伊藤さんは17年に性暴力問題の深刻さを訴える著書を実名で出版した。性被害をなくそうという世界的な動き「#MeToo」の日本での先駆けと言われたが、同時に「あなたに落ち度があった」「売名行為だ」などの数々の誹謗(ひぼう)中傷に苦しんだという。

 世間からの偏見や中傷は被害者を立ちすくませる。内閣府が行った17年度の調査で「無理やりに性交等された経験」がある女性は7・8%で13人に1人。うち約6割がどこにも相談していなかった。法務省が今年、過去5年間の犯罪被害の実態を探るために行った調査でも、性的被害に遭った人で捜査機関に届けた割合は14・3%にとどまった。

 性暴力の被害者を年6~7万人とする民間の推計もある。支援の強化が欠かせない。

 国は相談受け付けや治療、法的手続きを一元的に行う「ワンストップ支援センター」の全都道府県への設置を昨秋までに実現したが、周知が行き届いているとは言いがたい。支援員や運営費の拡充、24時間・365日体制の整備や、まだ数少ない被害後すぐに診察や証拠採取ができる医療施設拠点型のセンター増設も急がねばなるまい。

 被害に遭った人が心身を回復するために必要な有形無形の救済網を社会全体に広げることが求められる。




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