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詩織さん勝訴 「黒箱」の中が見えない(2019年12月24日配信『東京新聞』-「社説」)

 性暴力被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんが民事訴訟で勝訴した。「#MeToo(ミートゥー)」の声が高まる契機にもなった事件だが、ブラックボックスの中はまだ見えない状況だ。

 勝訴の報は海外メディアでも大きく取り上げられた。米国のワシントン・ポストは「日本人女性の権利の勝利」と。CNNテレビも、英国のBBC放送なども一斉に報道した。台湾などでも同じだ。伊藤さんの著書「Black Box」は、中国では「黒箱」と題し出版、注目されている。

 海外メディアの主張はどれも正当なものだ。例えば日本では性暴力に遭っても警察に相談するケースは少ないとか、刑事罰を科す困難さを挙げて、日本の性犯罪に対する後進性を説いたりした。何より首相と親しい山口敬之(のりゆき)元TBS記者を訴えた裁判だったことに焦点を当てたりした。

 内閣府が昨年まとめた調査では、女性の13人に1人は無理やりに性交をされた経験があった。だが、被害を受けた女性の約六割はどこにも相談していなかった事実も浮かんだ。伊藤さんが記者会見で「誰もが被害者になるリスクがある。声を上げられない人もいる。傍観者にならないことが大事」と語ったのも、そんな背景があるからだ。

 確かに性犯罪の現場は密室が多く、立証は困難だ。それでも判決は、性行為に合意がなかったことを認めた。飲食店からタクシー、さらにホテルでの原告と被告の状況を時系列で詳細に検討し、導いた事実認定である。ひどい酩酊(めいてい)状態だったのだ。

 刑事事件の準強姦(ごうかん)罪(現在は準強制性交罪)などでは暴行や脅迫などで抵抗が著しく困難な状態にあったことが要件となる。だが、今回の民事裁判での事実認定ならば、刑事上、なぜ東京地検は不起訴としたのか疑問視する専門家の意見もあった。

 「Black Box」には山口氏に逮捕状が発行されながら、警察上層部の判断で逮捕が取りやめになったと記されている。これこそ明らかにされねばならない最重要の問題ではないか。日本の刑事司法がこの事件を闇に葬ったことと同じだからだ。

 不正義に国家権力が絡んでいたら、もはや法治国家と呼べない。山口氏は「法に触れる行為は一切していない」と主張するが、真相は解明されねばならない。「黒箱」の中を開けるように…。




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