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回顧2019 新時代の実相見極めたい(2019年12月30日配信『北海道新聞』ー「社説」)

 どことなく浮ついた雰囲気が漂う年の瀬である。

 今年、天皇の代替わりと「令和」への改元で祝賀ムードが広がったことと無縁ではあるまい。

 ラグビーワールドカップでは日本チームの活躍に沸き、来年は東京五輪パラリンピックがある。

 「新しい時代」を意識した人は多いだろう。だが、実質的に何が新しいのか首をかしげたくなる。

 政治は国民の期待に応える結果を残しただろうか。国際社会を覆う不安はぬぐえない。私たちの暮らしは豊かになったのか。

 世の中を覆う空気の背後に何があるか、見極める目を持つ大切さを痛感する1年だった。

■長期政権が招く劣化

 安倍晋三首相は1月、通常国会冒頭の施政方針演説で「平成の、その先の時代に向かって」という言葉を執拗(しつよう)に繰り返した。

 売り込んだのは「1億総活躍社会」「農林水産新時代」「日本外交の新たな地平」。何のことか、具体的イメージがわかない。漠然と未来に希望があるかのように思わせる印象操作の疑いが強い。

 事実に目を向ければ、際立ったのは「1強政権」の長期化による政治の劣化ではなかったか。

 9月の内閣改造で入閣した複数の閣僚が政治とカネの問題を巡り辞任した。本人が説明責任を拒むばかりか、首相までもが「任命責任は私にある」と言ったきり、真相を明らかにしようとしない。

 「桜を見る会」疑惑では首相が自分の支持者をもてなす「私物化」が疑われた。第1次政権で批判された、「お友達」を優遇する体質は変わっていないのだろう。

 加えて、公文書である参加者名簿を官僚がシュレッダーで廃棄したことが隠蔽(いんぺい)疑惑を招いた。森友文書改ざんの反省は見られない。

 官僚側には、安倍政権を支えることが組織防衛につながるとの計算が働く。国民より政権の側を向いた政策執行がはびこっている。

 大学入試への英語民間試験や国語、数学への記述式問題は、批判を抑えて導入ありきで進めた結果、実施が見送られた。欠けていたのは受験生第一の大原則だ。

■米国追従目立つ外交

 米ハーバード大のスティーブン・レビツキー教授らの著書「民主主義の死に方」には「選挙で選ばれたリーダーが、自分が権力をつかんだプロセスを破壊することで民主主義は死ぬ」とある。

 選挙を経て国会で選出された首相の正当性を担保するのは憲法である。その憲法をとにかく変えると叫ぶ首相の姿勢は自らの権力基盤や民主主義の否定につながる。

 7月の参院選で参院の改憲勢力が、改憲発議に必要な3分の2を割り込み、衆参両院の憲法審査会の議論も進まない。改憲の必要性を感じない国民も多い。現実を認識して行動してもらいたい。

 同様に民主主義の基本を顧みない指導者が米国にいる。トランプ大統領は「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追された。民主主義と相いれない容疑だ。

 「自国第一主義」を掲げ、気候変動の「パリ協定」や世界貿易機関(WTO)の意義を否定する。中国と高関税合戦を演じ、世界経済を暗雲で覆った。

 日本はその米国に追従する外交を展開した。日米貿易協定では農産物市場を大幅に開放したのに、日本車の関税撤廃は盛り込めなかった。高額な米国の防衛装備品購入はとどまるところを知らない。

 日ロ交渉でロシアの態度が硬かったのも、日米の軍事的な連携の強さへの懸念があった。

 日韓関係悪化の中で安倍政権は韓国政府の責任ばかりを主張したが、米国が仲介に入るとあっさり日本の輸出制限を緩めた。外交の自主性はどこにあるのか。

■国民生活にしわ寄せ

 劣化した政治のしわ寄せを受けるのはいつも国民だ。

 女性の活躍が叫ばれるが、幼い子供を持つ母親が子供を預ける保育所は相変わらず空きが少ない。非正規雇用が多い不安定な生活が明治期以来の出生数90万人割れにつながった。

 100年安心と言われた年金制度だが、2千万円の老後資金が別に必要だと金融庁が指摘した。70歳まで高齢者の就業機会を確保するというが、元気な高齢者に頼った社会保障制度は心もとない。

 消費税率の引き上げは本来社会保障充実が目的だったが、方向性は教育無償化に変わった。財政健全化の目標は遠のき、将来世代に借金を先送りする。

 ポイント還元や軽減税率に気を取られているうちに、長期的には国民の負担が増していることに注意を払う必要がある。

 納得できる将来像を示してこそ「新しい時代」は説得力を持つだろう。指導者たちの行動が日常生活にどう影響するのか、常に目を光らせなければならない。




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Author:gogotamu2019
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