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【2019回顧(下)】新しい時代を創れるか(2019年12月30日配信『高知新聞』ー「社説」)

 5月1日、新しい天皇陛下が即位され、元号が令和に改まった。2019年の社会の最大の話題はやはり改元であろう。

 平成はバブルが崩壊し、経済の閉塞(へいそく)感が長く続いた時代だった。大地震も相次いだ。多くの国民が令和という時代に希望を抱き、初年を過ごしてきたといってよいだろう。

 初めて日本で開催されたラグビー・ワールドカップ(W杯)の盛り上がりと日本代表の活躍は時代の変化を印象付けるものだった。

 日本代表は多国籍の選手らで勝利を積み重ね、注目を集めた。チームが団結するために掲げたスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」は流行語大賞にも選ばれた。

 消費税の税率が10月、8%から10%に引き上げられた。平成元年に税率3%で始まった消費税は改元の年についに税率が2桁に乗った。

 問題は、目的である社会保障の充実を実感できないまま、負担感だけが増していることだろう。

 増税に伴って「キャッシュレス決済」へのポイント還元制度も導入された。消費の低迷を防ぐ狙いがあるが、現金を使わず、クレジットカードや電子マネーなどで買い物をする社会を目指す目的もある。

 だが、たくさん買い物をする富裕層ほど還元額が大きく、高齢者に多い現金派は何ら恩恵がない。地方はキャッシュレス決済の対応店が少ない問題もある。弱者放置の制度になっていないだろうか。

 コンビニが相次いで24時間営業を見直したり、働き方改革関連法が施行されたりと、労働の在り方の変化を意識させる一年でもあった。

 一方で、ことしも変わらなかったのが自然災害の猛威だ。

 10月の台風19号は東日本を中心に各地で河川が決壊。死者・行方不明者は100人を超えた。住宅5万4千棟以上が損壊し、いまも多くの被災者が避難所生活を強いられている。

 数十年に一度といわれるような規模の豪雨が毎年起きたり、東日本でも台風災害が相次いだりしている。地球温暖化に伴う気候変動への対策やもう一段高い防災に真剣に向き合いたい。

 大企業の不祥事が相次いだことも変わらなかった点だ。

 特にかんぽ生命の不適切な保険契約は、かんぽや郵便局を信じて疑わなかった高齢の消費者らが食いものにされた。大企業の倫理観の劣化を感じざるを得ない。

 高齢者ドライバーの交通事故や子どもたちへの虐待も後を絶たない。ことしの出生数は1899年の統計開始以来初めて90万人を割り込み、86万4千人になる見込みだ。

 こうした現実に正面から向き合っていかないと新しい時代に展望は開けまい。政治はもちろん、企業も国民もそれぞれに責任がある。

 元号が変わったからといって、自動的に夢がかなったり、理想的な社会になるわけではない。新しい時代を自分たちで創っていけるかどうかが問われている。



【2019回顧(上)】誰のための政治なのか(2019年12月29日配信『高知新聞』ー「社説」)

 政権は不都合な事実にふたをし、国民への説明責任から逃げる。官僚は国民共有の知的資源であるはずの公文書を隠し、廃棄する。

 11月に歴代最長となった安倍政権下で常態化した光景が、また繰り返された1年ではなかったか。

 秋の臨時国会で噴き出した「桜を見る会」を巡る疑惑は、政権の体質が凝縮されたような問題である。

 「身内優遇」は森友、加計学園問題と根が同じだろう。真相の究明に欠かせない招待者名簿は内閣府が廃棄した。官僚の忖度(そんたく)で決裁文書などが隠され、改ざんされ、廃棄された森友問題や、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題に通じる。

 与党は、野党が求めた予算委員会での集中審議を拒み通した。共同通信の世論調査では、安倍晋三首相が十分に説明していると思わないとする回答が83・5%に上った。

 主権者である国民への説明責任よりも、政権与党へのダメージを打ち消すことが正しいリスク管理だといわんばかりの姿に疑問が募る。

 説明責任でいえば、臨時国会の会期中に「政治とカネ」の疑惑で辞任した前経済産業相、前法相もその後、公の場から姿を消し、国民への説明を果たしていない。

 不都合な事実を隠す安倍政権の体質は、金融審議会がまとめた「老後資金2千万円問題」の報告書の受け取りを麻生太郎金融担当相が拒否した一件でもあらわになった。

 通常国会でも与党は、この問題や日米貿易交渉を巡る野党の予算委開催要求に応じなかった。公的年金制度の健全性をチェックする「財政検証」の公表も参院選後の8月に先送りされた。

 7月の参院選は与党が勝利を収めたものの、選挙区の投票率は48・80%と過去2番目の低さになった。有権者が知るべき情報を伏せたまま、選挙で判断を仰ぐ手法は正常な民主主義といえるだろうか。

 1強政治が長引く中、行政の劣化も目立ち始めている。

 毎月勤労統計に始まった統計不正は政府統計の信頼を損ない、雇用保険の過少支給など国民生活にも影響を与えた。ここでも真相究明は曖昧なまま、再発防止策を前面に出した幕引きが急がれた。

 2020年度に始まる大学入学共通テストは、英語民間検定試験と記述式問題の導入が相次いで見送られた。安倍政権が旗を振る入試改革の目玉だったが、ずさんな制度設計に50万人を超える受験生が振り回された。導入ありきで進めてきた文部科学省は、どこに顔を向けてきたのか疑問がわく。

 政権の思想や実績を言う前に、政治や行政が守るべきモラルや矜持(きょうじ)が崩れてはいないか。主権者である国民に顔を向け、説明を尽くしているのかどうか。首相官邸に顔を向けた忖度ばかりがはびこるようでは代議制民主主義の根幹が揺らぐ。

 誰のための政治なのか。主権者の側もより厳しく監視の目を向けなければなるまい。




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