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国内この1年 民主主義の土台が危うい(2019年12月29日配信『熊本日日新聞』ー「社説」)

 元号が平成から令和に変わった。消費税率が引き上げられ、自然災害や凶悪事件が続発。時代の変わり目と混沌[こんとん]とした世相を実感する1年となった。

 戦後生まれの天皇陛下は5月1日に即位された。陛下は即位のお言葉などで、世界平和や先の大戦への反省、憲法に基づく象徴天皇の立場など上皇さまの思いを引き継ぐ姿勢を示された。

 大嘗[だいじょう]祭など代替わりの行事の多くは前例踏襲となった。政教分離など憲法との整合性の問題はくすぶったままだ。皇室を巡っては、今回特例とされた退位や女性宮家創設などを含む皇位継承策を中心に多くの課題が残されている。政府は丁寧に議論を積み上げ、速やかに結論を見いだすべきだろう。

 どうなる地方自治

 4月の統一地方選では、首長や議員の「なり手不足」が浮き彫りとなった。熊本など41道府県議選では、実に4人に1人が住民の審判を受けずに議員になった。候補者が議員定数に届かない「定数割れ」も前回より倍増した。投票率は道府県議選、市町村長・議員選いずれも過去最低を更新。少子高齢化と人口減少が続く中、地方自治を支える議会をどう維持するか。対策は待ったなしだ。

 参院選は、与党が改選過半数を獲得して安倍晋三首相は大型国政選挙6連勝。野党は改選1人区で候補者を一本化したものの、擁立・調整作業が遅れ、共闘の脆弱[ぜいじゃく]さを露呈した。「1票の格差」を巡り弁護士らが選挙無効を求めて起こした訴訟の判決では、「合憲」が大多数を占めたが、選挙制度の抜本改革には達していないとする指摘が相次いだ。国会は、真摯[しんし]に向き合い改革を進めるべきだ。

 長期政権の緩みも

 安倍首相の在任期間は11月に歴代最長となった。ただ、閣僚の相次ぐ辞任や大学入試改革を巡る混乱、首相が主催する「桜を見る会」の私物化疑惑など、長期政権の緩みを象徴する出来事も露見した。

 記録の廃棄や隠ぺいが常態化。沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設では、県民が何度も「反対」の意思を示したにもかかわらず、埋め立て工事が強行されている。愛知県で開催された「表現の不自由展・その後」を巡る一連の騒動を含め、憲法や民主主義の土台が崩れる危うさを感じざるを得ない。

 10月の台風19号は、東日本の広い範囲を襲い、土砂災害、浸水被害が続発。90人以上が死亡した。政府や自治体は、被災者の生活再建支援やケアの継続はもちろん、堤防の整備や住民の避難対策を着実に進めてもらいたい。

 消費税率の引き上げでは、軽減税率が導入された。対象となる飲食料品と対象外との区別が分かりにくく、外食や小売り各社は対応に追われた。増税による景気の腰折れを指摘する声も出始めている。政府は財政健全化に目配りしながら、消費者の不安を軽減する対策を忘れてはなるまい。

 問われる企業倫理

 原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から関西電力幹部への多額の金品提供が判明。かんぽ生命保険と日本郵便の保険販売を巡り、不正が疑われる契約が大量に見つかった。企業統治や企業倫理とともに、原発政策や郵政民営化を巡る政府の姿勢も問われよう。

 死者36人を出した京都アニメーションの放火殺人事件や、川崎市多摩区でのスクールバスを狙った無差別殺傷事件など凶悪犯罪も相次いだ。屈折した心理を抱えるこうした容疑者と社会はどう向き合えばよいのか。問い掛けは重い。

 今年のノーベル化学賞に、旭化成名誉フェローの吉野彰氏が選ばれた。日本の科学技術力の高さを改めて世界に示したが、続く若手研究者の育成と研究環境の整備が課題として残ったままだ。



「故郷もどき」(2019年12月29日配信『熊本日日新聞』ー「新生面」)

 東京生まれの作家・向田邦子さんのエッセーには鹿児島がよく登場する。父親の転勤で小学生の頃に2年間住んだだけなのに、どの土地よりも印象が強い。向田さんは、そんな鹿児島の存在を「故郷もどき」と呼んでいる

▼40年ぶりに訪れた鹿児島の旅を描く文章がある。そこは「見たこともない新しい街」。海水浴場は埋め立てられ、動物園はスーパーになった。あれもない、これもない。「結局変わらないものは、人。そして生きて火を吐く桜島であった」

▼級友たちと名物の豚骨などを囲むが、一番のごちそうはみんなの顔。「何をしゃべってもおかしく、なつかしく、黙っていると鼻の先がツーンとしてくる」。だから、やたらに肩をたたきあい、笑ってばかり。同窓会で同じような気持ちになった人もいるのでは

▼年末の帰省ラッシュが始まった。古里の風景は帰省客の目にどう映るのだろうか。再建が進む熊本城、サクラマチの活気に、復興の確実な歩みを感じるのか。閉校となった母校、空き店舗が目立つ商店街に寂しさを覚えるのか

▼風景は変わっても、変わらぬ古里のぬくもりが帰省客を出迎えてくれよう。たとえば、映画『男はつらいよ』シリーズで、旅から帰った寅[とら]さんを迎える家族のように。「ただいま」「お帰り」から、長い会話が始まる

▼この半年、1年のこと、あるいは、もっと長い時間にあったこと。変わったことも、変わらない大切なこともある。お互いの時間を重ねていけば、なつかしさを上書きする新しい絆になる。





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