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国内/不安な時代こそ寛容さを(2019年12月31日配信『神戸新聞』ー「社説」)

 「平成」が終わり、「令和」が始まった2019年。新時代への期待よりも、将来への不安を抱かせる出来事が記憶に刻まれた。

 多くの災害が列島を襲い、特に台風被害は甚大だった。千葉県などで大規模停電を起こした9月の台風15号に続き、10月は19号が関東から東北を縦断し、死者は90人を超えた。警戒区域外で発生した土砂崩れで犠牲が拡大した。地球温暖化の影響で気象災害は激しさを増しており指定基準の見直しが急務だ。

 10月からの消費税率引き上げは暮らしを直撃した。増収分を活用した幼児教育・保育の無償化が始まる一方で、年明けには介護保険や医療費の自己負担を増やす議論が本格化する。

 20年度予算案は総額102兆円超で過去最大に。増税しても国の借金は減らず、漫然と歳出拡大を続ける政府に、国民の不安と向き合う覚悟は見えない。

 悲痛な児童虐待事件が今年も相次いだ。「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」。1月、千葉県野田市で虐待死した小4女児が学校に発したSOSは父親に筒抜けだった。教訓はいつになったら生かされるのか。

 7月、36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件で、国内外のファンが怒りと悲しみに震えた。再起を願い33億円を超える支援金が寄せられ、被害者の実名公表や長期的な支援のあり方が改めて問われた。

 9月には、関西電力幹部ら数十人が高浜原発がある福井県高浜町の元助役から金品を長年受領していたことが発覚した。原発マネーの闇は深く、第三者委員会の調査は越年する。

 「表現の自由」にも危機が迫る。一部作品への抗議が殺到し、あいちトリエンナーレの企画展が一時中止に追い込まれた問題は、文化庁の補助金不交付や神戸市など他の自治体のイベント自粛、海外での芸術展の政府公認取り消しへと連鎖した。

 そんな中、多様な個性が結束する強さを示したのは日本初開催のラグビー・ワールドカップで8強入りした日本代表の姿だ。異なる価値観を認めず、いがみ合う社会は危機にもろい。不安な時代だからこそ、寛容さを取り戻す必要がある。



国際/一段と深まった不透明感(2019年12月31日配信『神戸新聞』ー「社説」)

 国際協調の足並みの乱れや大国同士の対立激化などを受け、世界の不透明感が一段と深まった1年だった。

 8月にフランスで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、首脳宣言の採択が初めて見送られた。トランプ大統領が「米国第一主義」を掲げ、他国との溝が埋まらなかったためだ。来年のサミットは大統領選を控えた米国が議長国を務める。存在意義を各国が確認し合うことから始める必要があるのではないか。

 核兵器を巡る世界の安全保障環境も悪化の一途をたどった。北朝鮮の非核化を巡る米朝協議は中断し、ミサイル発射実験を再開するなど北朝鮮は強硬姿勢を見せている。

 米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は失効し、米国が核合意から一方的に離脱したことに反発したイランは核開発を拡大した。国際社会全体で自制を促さねばならない。

 丸腰の市民に警官が銃を向ける映像は世界に衝撃を与えた。香港の大規模な民主化要求デモだ。激しい衝突に巻きこまれるなどして犠牲者も出た。

 端緒となった逃亡犯条例改正案の撤回で香港政府は譲歩した。だが市民の多くは、中国の習近平指導部が香港の「一国二制度」を骨抜きにしようとする点に反発している。混乱の収拾は容易ではなさそうだ。

 長引く米中貿易摩擦も世界に影を落とした。両国は12月、協議の「第1段階」に合意したと発表したが、交渉の行方から目が離せない。

 一方、膠着(こうちゃく)状態が続いていた英国の欧州連合(EU)離脱問題では変化が見られた。12月の下院の総選挙で、ジョンソン首相率いる保守党が圧勝し、公約として掲げた来年1月末の離脱が確定的になった。

 今後の焦点は「移行期間」の来年末までにEUとの間で貿易協定をまとめられるかどうかだ。欧州だけでなく、世界経済の混乱回避にも関わる。

 日本は外交課題の多くを積み残している。日韓関係は戦後最悪とされる状態のままで、拉致問題やロシアとの北方領土交渉も進展が見られない。安倍政権は来年こそ、着実に成果を上げねばならない。



来年はまあまあふうふう(2019年12月31日配信『神戸新聞』ー「正平調」)

6月に亡くなった伊丹在住の作家、田辺聖子さんはあるとき心に思ったことを日記帳の余白に書きつけた。〈過ぎしこと なべてたのしく/むかしびと/われにやさしき 人多かりき〉

「われにやさしき人多かりき」は自伝的随筆集のタイトルにもなっている。楽しかった歳月を顧みれば、有形無形のご恩をあちこちで受けていたことに気づかされた、と。今年旅立ったやさしき人たちの言葉を

◆30年で地球を180周分。紀行番組「兼高かおる世界の旅」は見る者に海外への憧れを抱かせた。「訪ねたかったのは場所というより人間。人に会えるから旅に出るんです」。神戸出身の兼高さん。90歳だった

◆姫路生まれの池内紀さんは78歳。さすらいの歌人、若山牧水の旅を評した文章がある。「ちょうど水のように、まっすぐ流れず、よどんだり、渦巻いたり、ときには逆流したりする」。人生とはそんな旅に似て

◆深く、静かに人の心にしみこんでいく女優に-。そう語っていた八千草薫さんは88歳だった。気に入りの言葉は「馬馬虎虎」。まあまあふうふう、という中国の言葉で、ほどよく力を抜いていこう、の意味とか

◆西の空を赤く染めて、この1年が暮れていく。来年はまあまあふうふう。熱々の年越しそばに唱えてみる。





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