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海外回顧 自国第一の広がりに懸念(2019年12月31日配信『徳島新聞』ー「社説」)

 米国と旧ソ連による冷戦終結から30年がたち、中国を含めた新たな冷戦の時代に突入した。核の脅威が高まる一方、国際社会は内向きで強権的な指導者に翻弄され、混迷の度を深めている。

 香港での反政府デモは世界に衝撃を与えた。

 6月9日のデモは参加者が103万人(主催者発表)に上った。その後、デモは交通妨害やストライキ、破壊行為に発展。警官隊との衝突が頻発し、実弾による負傷者も出るなど世界有数の金融都市は未曾有の混乱に陥った。

 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案が引き金だったが、市民や若者らは高度な自治を認めた「一国二制度」の危機と捉えたのだ。

 半年が経過した今も抗議の声を上げ続ける。これに対し、香港統治に強圧的な習近平指導部は力による対抗姿勢を変えていない。習氏は、人権軽視との欧米の批判に耳を傾けるべきだ。

 国際社会の最大のリスクとなったのが、トランプ米政権の外交政策だ。

 中国との貿易摩擦は12月、追加関税の一部引き下げなど「第1段階」では合意したものの、米国が求める中国の構造改革は先送りされ、対立の火種は残ったままである。

 北朝鮮との非核化交渉も停滞した。2月にハノイで行われた2回目の米朝首脳会談は事実上決裂。双方が強硬姿勢に転換する動きもみられ、再び緊張が高まっている。

 米国が旧ソ連と1988年に発効させた中距離核戦力(INF)廃棄条約は8月2日に失効した。冷戦終結の象徴でもある核軍縮の枠組みが消滅し、二つの核大国に中国も巻き込んだ軍拡競争に発展する恐れが出てきた。

 イランの核開発も現実味を帯びてきた。一方的に核合意から離脱した米国が経済制裁を再開したことで、イランは合意履行の一部停止を宣言した。核兵器廃絶に逆行する事態を招きかねず、トランプ氏の責任は大きい。

 欧州連合(EU)離脱問題で、長く混迷状態が続いていた英国は来年1月にも離脱が確実になった。2月以降、EUと通商交渉が開始される見通しだが、交渉によっては再び混乱する懸念もある。離脱を主導したジョンソン首相の指導力が問われよう。

 印象深かったのが、地球温暖化を巡るスウェーデンの少女の言動だ。

 9月23日に国連で開かれた「気候行動サミット」で、16歳のグレタ・トゥンベリさんが「私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない」と演説、各国首脳らに温暖化対策の実行を訴えた。精力的な活動ぶりは世界の注目を集め、米誌タイムの「今年の人」に選出された。

 グレタさんの訴えは、世界的に広がる「自国第一」に警鐘を鳴らすものだ。各国首脳はそのことを強く胸に刻むとともに、国際協調の重要性を再認識すべきだろう。



国内回顧 自然災害の猛威さらに(2019年12月30日配信『徳島新聞』ー「社説」)

 平成から令和へ。元号が改まり、気持ちも新たにいい年になってほしい。そう願った人は多いに違いない。

 だが、今年も大きな自然災害から逃れることはできなかった。想定外の事態からどう身を守るのか。地球温暖化が進む中、改めて厳しく突きつけられた課題と言えよう。

 新天皇陛下が即位されたのは5月1日である。前天皇陛下は4月30日に退位し上皇となった。退位による代替わりは202年ぶり。憲政史上初の歴史的な出来事だった。

 大嘗宮の儀やパレードなど儀式、行事も行われ、祝賀ムードに沸いたが、その一方で、安定的な皇位継承策の検討という懸案は手つかずのままだった。

 有力な案とされる女性・女系天皇を認めることに賛成する人は、世論調査で7~8割に上っている。政府は本格的な議論を来春以降に始める方針だが、いつまでも先送りすることは許されない。

 災害で目立ったのは、台風と豪雨である。9月に台風15号が上陸し、千葉県を中心に最大約93万戸が停電、全面復旧まで2週間もかかった。広い範囲で電柱が倒れたためで、広域支援の在り方など多くの課題を残した。

 10月に上陸した台風19号は東海から東北まで各地の河川を決壊させ、甚大な被害をもたらした。死者は90人超。雨のすさまじさは、観測史上1位の記録を塗り替えた地点が続出したことでも分かる。

 巨大台風と豪雨の頻発は海水温の上昇が影響しているとされる。今年の平均気温は速報値で、統計開始以来122年間で最も高かった。異常が通常になるのを見通した対策を急がなければならない。

 政治では、安倍晋三首相の「1強」が続いた。首相は11月、通算在職日数が歴代最長となったが、レガシー(政治的遺産)は見えてこない。

 悲願の憲法改正は、7月の参院選で改憲勢力が3分の2を割り、遠のいたと言えよう。国会で議論を進めたいのなら、まずは謙虚な姿勢に改めるべきだ。

 ところが、不誠実な対応は変わらなかった。最たるものが、首相主催の「桜を見る会」を巡る問題である。地元後援会員が多数招かれ、前日にはホテルで夕食会が開かれていた。疑惑は深まるばかりなのに、招待者名簿はいち早く廃棄し、ホテルの明細書は「ない」の一点張りだった。

 先週には、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡み、元内閣府副大臣の現職議員が逮捕された。桜を見る会と合わせ、「政治とカネ」の問題は越年する。

 36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人など、悲しい事件や事故も多かった。

 そんな中、国民に希望を与えてくれたのがラグビー・ワールドカップでの日本代表の活躍である。「ワンチーム」という言葉は多くの共感を呼んだ。そうした盛り上がりを、来年の東京五輪・パラリンピックにつなげたい。




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