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[2019年回顧] 多事多難だった新時代(2019年12月31日配信『南日本新聞』ー「社説」)

 天皇陛下の代替わりに伴い、「平成」「令和」と二つの元号を持った年が幕を閉じようとしている。祝賀ムードの一方で、人口減少の進む日本の未来は見通せず、国民の間に漂う不安が消せない一年でもあった。

 急激な少子高齢化の中、消費税率が10%に引き上げられた。これからの社会保障の在り方に注目が集まるが、将来像は増税が経済に与える影響とともに不透明なままだ。

 桂太郎の2886日を抜いて憲政史上最長の在職記録を更新中の安倍晋三首相は、「桜を見る会」で自ら疑惑を招くなど、長期政権のおごりがはっきりと現れてきている。

 地球温暖化の影響も指摘される大規模な災害は、今年も東日本を中心に多発し、避難や情報伝達といった面で重要な課題を突きつけた。

 人々を笑顔にした話題としては、分断と対立が世界を覆う中、肌の色の違う選手たちが「ワンチーム」で戦った日本が、国内初開催のラグビーワールドカップ(W杯)で8強入りした。

■極まった政治不信


 5月1日、新天皇陛下が即位され、30年余り続いた「平成」が終わり、「令和」の時代が始まった。前天皇陛下は退位し、上皇となった。

 代替わりの際の10連休、秋の「即位礼正殿の儀」、パレードなどもあり、多くの国民が祝った。ただ、皇位継承権を持つ男性皇族は3人となり、継承と皇室維持の議論が急がれる。

 政府は消費税率を10月、8%から10%に引き上げた。食料品への軽減税率やポイント還元が実施され、増収分の一部を活用した幼児教育・保育の無償化も始まった。

 だが、2019年生まれの赤ちゃんは想定より2年早いペースで過去最少の86万4000人に落ち込みそうだ。22年には団塊の世代が75歳以上になり始める。

 子育て支援や高齢者の経済力に応じた医療・介護の負担増といった対策の強化は、将来世代にツケを回さないためにも待ったなしの状況と言える。

 その改革を担う政府・与党に明らかな「緩み」が見えている。野党がまとまりを欠いたこともあり、「安倍1強」下の7月の参院選は与党が改選過半数の勝利を収めた。

 ところが、第4次安倍再改造内閣は経済産業相と法相に公選法違反の疑いが浮上、相次ぎ辞任した。さらに首相が公費で主催する「桜を見る会」に安倍首相の地元後援会員が多数招待されていた事実が発覚。臨時国会後半は防戦に追い込まれた。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業参入を目指していた中国企業側からの収賄容疑で現職の衆院議員が逮捕される事件も起き、国民の政治不信は極まっている。首相は信頼回復へもっと努力すべきである。

 大きな自然災害が、今年も列島を襲った。9月の台風15号は千葉を中心に最大約93万戸が停電。10月の台風19号は関東から東北を縦断、各地で河川が氾濫し、死者は90人を超えた。

 鹿児島も6月末から7月初旬にかけて記録的な大雨に見舞われ、土砂崩れで2人が犠牲になった。鹿児島市では土砂災害や浸水の恐れがある避難所が見つかり、再点検が求められた。

 近年の天候は急激な変化が特徴で、かつての常識が通用しなくなっている。情報伝達方法を含めて不断の検証を行い、国民の考え方を変える必要がある。

■子ども守る体制を

 中年世代の社会的孤立を背景にした事件が続いた。40代男による7月の「京都アニメーション」放火殺人は霧島市出身の女性を含む36人が死亡、衝撃を与えた。東京では元農林水産事務次官が40代長男を刺殺した。

 児童虐待も全国で繰り返された。鹿児島でも児童相談所(児相)に育児放棄と認定された出水市の4歳女児が浴槽で溺死する事件があった。児相の充実や関係機関との連携体制の整備が急務と言えよう。

 高齢ドライバーの重大事故が止まらない。東京、福岡では80代男性の車が暴走し、多数の死傷者が出た。移動手段の少ない地方では免許返納が難しい面もある。「安全運転サポート車」など技術の発達を生かしたい。

 安全保障では北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、トランプ米大統領が乗り出した米朝の非核化交渉は膠着(こうちゃく)状態に。元徴用工問題に端を発した日韓の関係悪化は、米国を交えた東アジアの安保体制に影を落とした。

 鹿児島では3月、奄美大島に陸上自衛隊の駐屯地が開設されたのに続き、政府が西之表市馬毛島の6割強を買収した。自衛隊基地を整備し、米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転の「候補地」とする。

 中東情勢悪化を踏まえ、海上自衛隊の派遣も決まった。国連は先日、東京五輪・パラリンピック期間中の休戦を決議した。来年は、平和の祭典にふさわしい穏やかな年であってほしい。



キャッシュレス化(2019年12月31日配信『南日本新聞』ー「南風録」)

平成、令和と二つの時代をまたいだ年も残すところきょう1日となった。正月の買い物や大掃除に忙しく過ごす人も多いだろう。

 かつて大みそかは1年の収支を総決算する日で、今よりも慌ただしかったようだ。昭和の初め頃、鹿児島市の天文館では、大半の商店に深夜まで明かりがともっていたという。当時はツケで買い物をする人が多く、商売人は集金にかけずり回った。

 井原西鶴の「世間胸算用」は、大みそかに金策に追われる庶民と、取り立てる側の悲喜劇を描く。包丁を振り回して借金取りを追い返す男や、家にある物を売って正月の酒代を稼ごうと悪戦苦闘する人らが登場し、身につまされる。

 令和の世は、現金がなくても買い物ができるキャッシュレス化が加速しそうだ。10月の消費税増税に伴うキャッシュレス決済のポイント還元制度は、2カ月足らずで決済総額が1兆9000億円に達したという。

 派手な宣伝文句につられて、スマートフォンにキャッシュレス決済ができるアプリを入れた。財布を持ち歩かなくて済む便利さは捨てがたいが、いわばツケのようなもので、使いすぎてしまわないか怖い。

 西鶴は「人間は欲に手足の付いたるものぞかし」と書いた。元禄(げんろく)の世から300年の時が流れても人間の本質は変わらない。煩悩を取り除くという除夜の鐘に耳を傾けながら、身の丈に合った暮らし方を考えてみようか。





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