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引退後のうつ病、どう対処するべきか(2020年1月2日配信『forbesjapan』)

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 仕事を退職して生活が激変すると、多くの人がふさぎ込んだり憂うつになったりしやすくなる。そうして、うつ病や不安障害に悩まされるようになると、頼りたくなるのが抗うつ剤だ。

 けれども私たちは、そうした薬に依存しすぎるようになってしまったのではないだろうか。60歳以上の高齢者だけをとっても、5人に1人が現在、抗うつ剤を服用している。抗うつ剤はいまや、あらゆる薬の中で最も広く処方されているもののひとつだ。

 抗うつ剤について、製薬会社はほぼ問題ないと主張する。たしかに、ほかの多くの薬と比較すれば、安全性は高いかもしれない。しかし、まったく無害というわけでもない。

 抗うつ剤の副作用には、感情の鈍麻のほか、性欲の減退や勃起障害などの性機能問題、体重増加などが挙げられる。なかには、不眠症や皮膚炎、頭痛、関節痛や筋肉痛、胃腸障害を訴える患者もいる。

 また、抗うつ剤には依存性がないと言われているが、服用を止めようとすると「離脱症候群(中断症候群)」を引き起こすおそれがある。すなわち、禁断症状だ。抗うつ剤の服用を突然止めると、めまいや倦怠感を覚えたり、神経が過敏になったり、不眠や不安に悩まされたり、涙もろくなったりする場合がある。身体的に依存することはなくとも、心理的に依存することになりかねない。つまり、服用者が依存していると「感じる」ようになるわけだ。

 そうは言っても、抗うつ剤による副作用が蔓延しているということではないし、たとえ副作用が起きても、軽度か一時的であることが多い。

 心理学者である筆者が副作用よりも危惧しているのは、医師があまりにも気安く抗うつ剤を処方することだ。その理由を想像するに、抗うつ剤の処方は、患者と医師の両方にとって好都合だからではないだろうか。医師が患者に心の状態を尋ね、「憂うつな気分になることがある」という答えが返ってきたら、「ではこの薬を飲んでみてください」と提案する。これで問題は解決だ。

 これは、患者にとってもラクな解決策だ。定期的に薬を飲めば、ふさぎ込んだ気分が晴れるし、延々とセラピーに通う必要もない。感情が麻痺して喜怒哀楽をあまり感じなくなるかもしれないが、不安になるより無感覚のほうがまだましだ。

 感情面の問題に対処しようとするこのような姿勢からは、ほかの疑問が浮かび上がってくる。それは、「医師は心理療法について、どのくらい知識を持っているのか」という疑問だ。その答えは、「詳しいことはほとんど知らない」。従って、一般の医師が患者のうつ病や不安障害について手助けできることと言えば、薬を処方するだけとなる。

抗うつ剤を処方する前に

 だからといって、抗うつ剤を処方することは、どんな場合でも間違いだという意味ではない。命を救うために抗うつ剤が欠かせない患者がいるのはたしかだ。研究者は、うつ病の40%は遺伝性のものだと推定している。すなわち、生化学的な問題や神経系の問題があって、うつ病になりやすい人がいるということだ。そうした患者にとっては、薬を服用するのが合理的であるように思われる。

 とはいえ、うつ病は複雑な病気であり、環境的な要因とも関連している。具体的には、十分に眠れていないことや栄養不良、ストレス、病気、服用中のほかの薬、さらには人生が一変する退職などの変化や出来事といったものだ。主要なリスク因子は遺伝的要因かもしれないが、遺伝子がどのように発現するかを決定づけるのは、遺伝的要因と環境的要因の相互作用だ。

 言い換えれば、遺伝的な傾向があったとしても、実際にうつ病が発症するかどうかは、人生でどのような出来事に遭遇するかで決まるということだ。ゆえに、薬物治療が必ずしも適切だというわけではない。遺伝的な傾向があったとしても、少なくとも、最初に取るべき選択肢は薬物治療ではないのだ。

 それよりも確実な対処法は、抗うつ剤を処方する前に、まずは心理療法を試してみるよう助言することではないだろうか。適切なカウンセリングを受ければ、患者は、神経症的傾向(うつ病に結びつく性格的な特性で、ふさぎ込んだり、不安や悩み、怒り、不満、嫉妬、罪悪感を持ったりする傾向を特徴とする)を軽減するためのさまざまな方法を学ぶことができる。

 要は、自分はうつ病ではないかと疑ったら、まずはセラピストに相談することを考えてほしい。時間をかけて取り組めば、自分のうつの根底原因を突き止めて、気分が落ち込んだときにどう対処すべきかを学ぶことができる。このほうが、感情を麻痺させる薬を飲んで、問題を覆い隠してしまうよりも賢明だ。

 最終的に、自分には抗うつ剤が最も効果的だという結論に達するかもしれないし、それには問題はない。しかし、抗うつ剤が最初の選択肢であるべきではないし、唯一の選択肢であるべきでもないのだ。

<翻訳=遠藤康子/ガリレオ




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