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【インクルーシブ教育最前線】知的障害受け入れ全県へ 教育環境を整備 神奈川県教育長に聞く(2020年1月3日配信『(2020年1月3日配信『時事通信』)

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インタビューに答える神奈川県の桐谷次郎教育長

 県立高校普通科3校に、知的障害のある生徒が入学しやすい仕組みを取り入れた神奈川県。県教育委員会は2020年度から、インクルーシブ教育実践推進校を14校に増やして全県をカバー。募集人数は、毎年最大300人近くになる。桐谷次郎教育長は「選択肢を増やし、一人一人に合った教育環境をつくりたい」と話す。(横浜総局・田幡 秀之)

◇「多様な学び」創る

 -知的障がいの生徒受け入れの経緯は。

 これまでにも県立高校では、障害があっても意欲があり志願する子どもたちについては可能な限り、受験などで一定の配慮をして、合格すれば入学してもらっている。それが基本。

 だから車椅子の子が入れば、その高校にスロープ等を設置したり、教室配置を工夫するなどの対応をしている。視聴覚障害のある生徒も在籍している。

 知的障害がある子は今まで、小中学校の特別支援学級や特別支援学校の小中学部から、特別支援学校高等部知的障害教育部門に入学することが多かった。

 しかし、特別支援学校小学部にいる子が個に応じた支援の積み重ねなどによって、地域の中学校に入る例はある。同様に中学校の特別支援学級や特別支援学校中学部などからの進学先として、高等部だけでなく、他の選択肢があってもいいというのが基本的な考えだ。

 選択肢を増やすことで、多様な学びを創る。考えなければいけないのは、その子に合った教育の場を環境として用意しておくことだ。

 2015年度から行った「みんなの教室」という小中学校段階のモデル事業は、すべての子どもができるだけ同じ学級で学びながら、一人一人のニーズに応じた指導・支援を行うという仕組みづくりである。その仕組みを高校段階に応用すれば、高校にも知的障害のある生徒が入学しやすくなる。

 同時に入学者選抜については、学力検査を課さず、面接で行っている。スタート時点の茅ケ崎、足柄、厚木西の実践推進校3校については、周辺地域の中学校を指定し、中高が連携する形で教育の一貫性をつくった。

 中学3年生の段階で高校での説明会や学校見学に参加してもらうなどの取り組みを、入学要件に付けた。そうすれば、具体的な高校生活がイメージでき、不安の解消にもつながると考えたからだ。

 -受け入れから2年半がたった。成果と見えてきた課題は。

 高校段階で知的障害のある生徒がいわゆる通常の学級で学べ、部活動もできる場ができたということは積極的に評価している。

 しかし、今の仕組みでは、高校に通って同じ教育課程で学ぶことが前提となり、自力通学などの要件は付さざるを得ない。結果として軽度の知的障害のある生徒に限られる。

 これまでの取り組みとして、特別支援学校高等部知的障害教育部門の分教室を置いている高校もあるため、知的障害の子どもたちの行き先を分けているのではないかという批判もある。

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知的障害のある生徒を受け入れている神奈川県立茅ケ崎高校

 しかし、あくまでも選択する権利は生徒にある。一番成長できる場はどこか、それは子どもたち一人一人違う。そのために多様な選択肢を用意しておくことが、私は豊かな社会だと思う。

 インクルーシブ教育の推進においては、同じ場所で一緒に学べばよいというだけではなく、子どもたち一人一人に合った支援も同時に用意されているということが必要だ。

 だから、われわれがインクルーシブと言うとき、「できるだけ」同じ場で共に学び、共に育つということを現段階では付さざるを得ない。

◇卒業生の進路をバックアップ

 -推進校の一つ、茅ケ崎高校では、就労についてのノウハウが不足していることを課題に挙げていた。

 卒業生の進路は優先すべき課題だ。卒業後の受け入れ先となる社会が、どこまで認知し得ているか。

 一つの取り組みとして、セブン-イレブン・ジャパンと職業体験に関する覚書を結んだ。茅ケ崎高校の生徒をインターンシップで受け入れていただいた。

 重要なのは、受け入れ先を増やし、実社会へどのようにつなげていくかだ。専修学校各種学校協会にも働き掛けている。

 先を見据えて動いているつもりだが、3年生の進路先によっては、今後どうするか当然、考えていかなければいけない。

 すべての子どもたちに、進路という面でこれまで以上に夢や希望を持ってもらえる環境を各学校に整えたい。県教委としても生徒を全面的にバックアップする。

 -2020年度からは受け入れ校が14校に増え、全県をカバーする。

 県内全域から、おおむね1時間で通える範囲に配置した。中学校の進路指導が進む中で、多くの子ども達が志願を検討してくれていると聞いている。

 -実践推進校3校には県単独予算で、教員を手厚く配置している。

 これからは手厚さの合理性をどこまで考えるかだ。

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神奈川県庁の本庁舎[同県提供]

 インクルーシブ教育実践推進校に対する社会的認知が広がる過程において、3校の経験を踏まえて、それぞれの高校の教員たちがこの取り組みをよく理解して指導・支援に当たれるようになってくれば、将来的には、3校のような手厚さは必要なくなると考えている。

 ただ、今は取り組みをスタートさせたばかりであるため、19年度も新たに対象となる11校に1人ずつ準備のため専任の教員を配置している。学校現場からすれば全く新しい取り組み。推進するためには人的資源は必要だが、いずれは、どの教員も推進役になれるのが理想だ。

 -14校で完成形となるのか。

 今後の配置については、県立高校改革の再編統合の中で、子どもの数を推計しながら考えていく。小中学校については、モデル地域で行った「みんなの教室」の成果を広げていく。

 特に小学校の早い段階から、すべての子どもが共に学び、共に学校生活を送ることができるようにすることが大切だ。

◇思い満たすシステムづくり

 -共生社会を掲げる神奈川県が目指すインクルーシブ教育は、選択肢を増やすということか。

 選択肢を増やすのは手段だ。どういう教育環境を用意することが、その子の成長にとっていいのかという問題。

 最終的には、皆が地域の一緒のクラスで学び、育つということ。一つの場で、それぞれの子にあった教育を行えるシステムがあるということだ。

 各地域においても、共に学ぶ取り組みが少しずつ進んでいるものの、特別支援学校での学びを希望する保護者も多い。また、その子に合った教育は特別支援学校の方がふさわしいという判断と、保護者の地域の学校で教育を受けさせたいというニーズとが乖離しているというケースもある。

 重度の障害が有っても地域で学ばせたいというニーズに対して、地域の学校に適切な支援をするための機能が用意できていないという実情もある。

 この課題を解決するためには、例えば、車椅子の利用者がいれば施設整備が必要であり、医療的ケアが必要なら、看護師を配置するなど、学校が十全の準備をしなければならない。

 また、現在は特別支援学校が担っている支援の機能を、地域の学校にも用意して行く取り組みを進める必要もある。

 理想を言えば全員が同じ学校に通って、そこには医療的ケアが必要な子に対する医師、看護師が配置され、施設的にもインクルージョン(包摂)できればみんなと一緒にその子に合った教育ができる。

 人的・財政的な課題は常にあるが、その中でどれだけ多くの人たちの価値観、思いを満たすことができるシステム、環境をつくれるかだと考えている【「内外教育」より】。




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