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今年は戦後75年(2019年12月5日配信『日本経済新聞』―「春秋」)

 昔、ある高僧のもとに年賀にやってきた男が、なにか縁起の良いことを書いてほしいと頼んだそうである。それで僧がしたためた言葉は「親死に、子死に、孫死ぬ」。正月から不吉だと怒る男に僧いわく「いや、この順番ならばめでたい。逆になったら大変なことだ」。

▼金田一春彦の名著「ことばの歳時記」を繰っていたら、おせち料理に添える「ゆずりは」の項にこんな話があった。この植物は、新しい葉が成長すると古い葉がポトリと落ちて代をゆずる。「親死に、子死に」の順縁だ。しかし顧みれば、人間はしばしばそれに背いてきた。多くの若者を戦争で死なせる過ちを重ねている。

▼今年は戦後75年――。四半世紀の節目を3つも経るのだから、この時代の長さがいよいよ際立つというものである。日本の近現代史のなかで、どれほどたくさんの人が子や孫を失ってきたことだろう。そう思うと、75年間も不戦を守ってきた「ゆずりは」の世のありがたさがわかるのだ。「戦後」を蔑(ないがし)ろにしてはならない。

▼いまの日本は、かたちの違う戦争にも直面している。古い葉に取って代わる新しい葉っぱ自体があまり芽吹かず、木そのものの衰退が心配なのだ。くだんの高僧を訪ねたら、なにか縁起の良いことを書いてくれようか。平和の尊さを忘れがちな私たち。少子化に手をこまぬいた社会。揮毫(きごう)どころか、一喝されるやもしれぬ。

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