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[ゴーン被告会見] 正当化できない密出国(2020年1月10日配信『南日本新聞』ー「社説」)

 身の潔白を一方的にまくし立てた会見は説得力を欠いた。日本から中東レバノンに逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告である。

 日本の司法制度を批判し、事件は日本政府関係者や日産による「陰謀」だとする自説を展開した。一方、逃亡の経緯や日本政府関係者の氏名は明かさなかった。

 逃亡を計画した理由として、公平な裁判を受けられる望みを失い、妻に会いたかったと説明した。だが、密出国は犯罪行為であり、決して正当化できない。無罪を主張するのなら日本の法廷で堂々と争うべきである。

 ゴーン被告は2018年11月に初めて逮捕され、金融商品取引法違反の罪など計4事件で起訴された。19年4月に2回目の保釈が認められ、公判前整理手続きが進められていたが、昨年末、突然逃亡した。

 被告は会見で、起訴内容を一つ一つ否定したが、いずれも従来の主張の域を出なかった。日本の司法制度については「推定有罪」の原則がはびこり、「1日8時間も取り調べを受け、弁護士も同席できなかった」と批判した。

 日本の司法制度を「時代遅れで非人道的」と国際世論にアピールすることで、不法な出国を正当化する思惑があったに違いない。森雅子法相が未明に臨時の記者会見を開き、「誤った事実を殊更に喧伝(けんでん)した」と反論したのも、被告の影響力を考え、看過できなかったからだろう。

 レバノンと犯罪人引渡条約を結んでいない日本は今後、外交ルートを通じて身柄の引き渡しを求めていく。しかし、レバノン国籍を持つ被告の送還にレバノン政府が応じる可能性は低いとみられ、日本で公判が開かれる見通しは全く立たなくなった。

 密出国した被告に非はある。しかし、それを許してしまった司法当局は経緯を改めて検証すべきである。

 どうやって出国審査をすり抜けたのか。また、レバノン入国時にはフランスの旅券を提示したとされる。旅券は鍵付きのケースに入れ、鍵は弁護団が保管していたのに、なぜ持ち出せたのか。こうした疑問を解明し、再発防止策を講じる必要がある。

 保釈制度の在り方も問われる。日本の刑事司法は、罪を認めないと勾留が長引く「人質司法」と海外から批判されてきた。否認を続けたゴーン被告の保釈を裁判所が認めたのは、こうした批判を回避する狙いがあったのではと推察する司法関係者もいる。

 被告が弁護人と十分準備できるよう保釈を認める流れは強まりつつあるものの、国内でも保釈後の被告による再犯や逃走が後を絶たない。衛星利用測位システム(GPS)端末の装着など被告を監視する方策について論議を深めなければならない。




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