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伊方差し止め 司法はどこまで判断するのか(2020年1月18日配信『読売新聞』-「社説」)

 原子力発電所の安全性を巡り、裁判官が独自の解釈と判断で、結論を導いた印象は拭えない。

 広島高裁が、愛媛県の四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分を決定した。山口県の住民の申し立てを却下して運転を認めた山口地裁岩国支部の決定を覆した。四国電力は不服を申し立てる方針だ。

 3号機は定期検査のため停止中で、4月に営業運転を再開する予定だった。仮処分は直ちに効力が生じるため、今後の司法手続きで決定が変わらなければ、再稼働できない。電力の安定供給の観点から影響は深刻だと言える。

 ポイントの一つは、伊方原発の近くに活断層が存在するかどうか、という問題だった。

 高裁は、四国電力が十分調査しないまま存在しないと判断したと認定し、原子力規制委員会の安全審査についても「過誤ないし欠落があった」と批判した。

 だが、調査の妥当性については、専門家の間でも肯定する意見があった。そもそも、規制委の審査は厳格で長期にわたり、世界的にも高水準の安全性の確保を原発に要請している。伊方原発はこの審査に合格していた。

 原発の安全審査に関しては、高度で最新の科学的、技術的知見に基づいた行政側の審査結果を尊重する司法判断が、これまで積み重ねられてきた。今回の高裁決定は、こうした枠組みからはみ出すものと言わざるを得ない。

 もう一つの争点だった火山の噴火の影響について、高裁は四国電力の想定が過小と断じた。伊方原発から約130キロ離れた熊本県の阿蘇山で、大規模噴火が起きた場合の火山灰の噴出量を、少なく見積もりすぎているとの指摘だ。

 しかし、大規模噴火の発生頻度は著しく低く、噴出量を正確に予想することは極めて難しい。規制委は四国電力の想定を合理的なものだと是認していた。

 高裁の判断には、「ゼロリスク」を求める姿勢がうかがえる。

 近年、各地の原発の運転差し止めを求める仮処分申請が相次いでいる。2017年には、伊方3号機を巡る別の仮処分手続きで、広島高裁が運転を差し止め、その後、高裁の保全異議審で、差し止めが取り消された。

 迅速な審理が要求される仮処分の手続きでは、通常の訴訟よりも限定的な証拠で判断される。こうした特徴を踏まえ、原発の再稼働を阻止するために仮処分を申し立てているとすれば、裁判の乱用と言うほかない。




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Author:gogotamu2019
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