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日米安保条約60年(2020年1月23日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆多角的外交の中で再定義を◆

 日米の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約は今月、署名から60年を迎える。戦後日本の外交・安全保障政策の「基軸」と位置付けられ、アジア太平洋地域の安定に貢献してきた安保条約は今、重要な課題に直面する分岐点に立っている。

 「米国第一主義」を掲げて国際秩序の混乱を招いているトランプ米政権、中国の台頭―。不安定さを増す中で、国際社会の真の安定と繁栄のために日米両国がどう協力していくのか。グローバル時代における日米安保体制の在り方を再定義する必要があろう。

 安保条約と同時に署名され、在日米軍人らの特別な法的地位を定めた日米地位協定の改定にも取り組まなければならない。沖縄の過重な基地負担の解消も日米安保を支える国民の信頼を確保するためには不可欠だ。

 1960年に全面改定された日米安保条約は、51年に署名された旧安保条約を見直し、両国の「対等性」を目指したものだ。旧条約で抜け落ちていた米国の日本防衛の義務を盛り込む一方、日本側は米軍に国内施設の利用を認め、「双務的」な条約とした。それから60年。日本は米国の「核の傘」を含む抑止力の下で、軽武装・経済重視の路線を進んだ。

 ただ、政治や経済分野も含む幅広い相互協力を掲げた条約は、軍事的な「同盟」が柱となってきたのが現実だ。日米同盟の下で、自衛隊の活動範囲は米国の世界戦略に従うように地球規模に拡大し、自衛隊と米軍は運用の一体化が進んでいる。

 96年に署名された日米安保共同宣言は、日米同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的な繁栄」と再定義し、安保条約が定めた「日本と極東」という範囲を踏み越えた。

 さらに、2015年に安倍政権下で成立した安全保障関連法は、集団的自衛権の行使を解禁し、日米の軍事的一体性をさらに深める道を開いた。

 にもかかわらず、日米同盟は盤石とは言えない。今、揺るがしているのはトランプ大統領自身だ。トランプ氏は、防衛義務と施設提供という「非対称」の負担の関係を「不公平だ」と強調、在日米軍駐留経費の負担増を求める。安倍政権下で膨らみ続ける防衛予算は、米政権が迫る巨額の米国製防衛装備品の購入による面が大きい。

 60年続いてきた日米安保体制とはいえ、基盤となる信頼関係は丁寧な対話を心掛けなければ維持はできない。日米安保体制を基軸としながら多角的な外交を展開し、安全保障の枠組みを築く必要がある。中国との互恵関係、対北朝鮮での韓国との連携、日本独自の国際貢献策など、取り組むべき課題は多い。



三つの初心(2020年1月23日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 室町時代の能役者、世阿弥による秘伝書「花鏡」の中でも秘伝中の秘伝とされる奥の段に出てくる初心についての言葉。「是非初心を忘るべからず 時々の初心を忘るべからず 老後の初心を忘るべからず」。

 「是非初心」は初めて能を習ったときの好奇心、謙虚で慎重だった態度、失敗して悔しいと思い、向上を誓ったこと。「時々の初心」は若い時から年齢の盛りを経て老後に至るまでの折々に、自分の未熟さを感じたことなど(亀井勝一郎人生論集/人生の知恵)。

 第2次安倍内閣発足から丸7年の感想を問われた首相は昨年末、「初心を忘れずにしっかりとやっていきたい」と記者団に語った。歩きながらの対応で統合型リゾート施設に絡む容疑で元内閣府副大臣が逮捕されたことを質問されると、無言でエレベーターに乗り込んだ。

 世阿弥が「花鏡」で説いた最後の「老後の初心」については続く次の言葉に注目すべきだという。「生命には終わりあり、能には果てあるべからず」。いよいよ晩年になって、人生のゴールが近づいたが芸道は完成しそうにない。「これは一大事」だという焦りに似た気持ちが老後の初心だという。

 「初心を忘れない」と言うそばから不都合なことには口をつぐむ姿勢が残念で世阿弥の秘伝書にあるという言葉が頭をよぎった。首相が一大事とする政治目標を国民に理解してほしいと考えるなら通常国会で初心に帰るべきだ。政治の道も果てあるべからず。




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Author:gogotamu2019
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