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黒と青(2020年1月25日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

「はじめて夫に殴られたのは十九歳のときだった」で始まるアナ・クィンドレンの小説「黒と青」。ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者心理を繊細に描き、2001年、DV防止法成立後の日本に紹介された

▼絶え間ない叱責(しっせき)や暴力に感情も思考も奪われ、孤立した主人公。家庭内の「秘密」に表情をなくしたわが子を見て、支援組織を頼り、別人として生きる決意をする

▼「なぜ逃げないの」。DV被害者はそう責められる。恐怖の深さは理解されない。目黒女児虐待死事件でも母親は心理的DVを受けていたが、判決では最終的に自ら夫に従ったと指弾された

▼「母親は本当に何もしなかったのか」。日米で女性や子どもへの暴力防止の専門職を養成してきた「エンパワメント・センター」(大阪)の森田ゆりさんは、札幌の研修会で問うた。DVがあるかもしれない、という目で事件の経過を見ると、多くのサインに気付く。分かりにくいが、夫の呪縛下で母親が発した精いっぱいのSOSだ。関係機関はDVを疑いはしたが、呪縛を解き、母子を救う「あと1歩」が出なかった

▼相次ぐ事件はDVと児童虐待の併発の危険性を示す。支援機関同士の連携はもちろん、被害親子を機敏に保護し、加害者の更生を促すための法整備が急がれる

▼「黒と青」は主人公の心に沈潜したあざの色。社会が見ないふりをしてきた暴力の色である。



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