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「やまゆり園」事件 自分の内面 見つめる契機に 詩人・颯木さん 本紙へメッセージ(2020年1月29日配信『東京新聞』)

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颯木あやこさん

 前代未聞の事件には、この世界を反映する自分の内面を見つめ、変化を促すしか出口はない-。詩人の颯木(さつき)あやこさん(川崎市麻生区)が、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者らが殺傷された事件についてのメッセージを本紙に寄せた。事件は、私たちそれぞれに問題提起したという。 

 颯木さんは17歳でプロテスタントの洗礼を受け、ミッション系大学の社会福祉学科に進学。卒業後に障害者のグループホームなどで働いた。

 福祉の現場は「愛」の実践の場だったと振り返る。「『美しいから愛する』というレベルなどはるかに超え、山積みになった排せつ物やマイナス感情、貧しさに踏み入って、なお諦めずに連帯する。たくましさと体力を要求された」

 健康上の理由で福祉の現場を離れ、療養中に、子どものころから親しんだ詩歌創作の道へと進んだ。2016年、日本詩人クラブ新人賞を受賞した。その年の7月に事件が起き、関心を寄せ続けた。

 「加害者の優生思想を支持する声がネットでは多く恐ろしいが、一方で、福祉現場で働いたこともないのに口先で加害者を非難するだけの人も信用できない」との思いを強めていた。

 颯木さんは「私は、美を選び現場で仕えることを二の次にした。このことを自覚している」という。そして「詩歌と引き換えに棄(す)てたものを思い出さねば美と愛は決裂してしまう」と、自身の経験を踏まえ、今回のメッセージを書き下ろした。

 事件について触れたメッセージの一部(抜粋)。

 この事件、被告が国家とか社会が内包している志向を先取りして行動化したのではないか、という点が一番気掛かりでした。幼い子どもが親の意向を汲(く)むように。

 この前代未聞の事件の問題提起は、各人が加害者にも被害者にもなり得るということをどれだけ自覚できるか、にかかっていると思います。

 芸術に限らず生きることは取捨選択の連続ですから、棄てたもの、ふだん忘れている存在、美を撰(えら)んだときに抹殺したもの、に再会することが愛に立ち返る行為の一つだと思います。

 一人の人間の一生は短く、できることは多くない。何を撰ぶか、それは個々人の向き不向きもあるし、自由です。しかしこの事件を契機に、この国この世界の、歪(ゆが)んでいる面に気づき、世界の様相を反映している自分の内面を見つめ、改善していく、変化を促す、それしか出口はないのではないでしょうか。そしてその変化を社会に作用させていく。

<さつき・あやこ> 1973年旧西ドイツ・ベルリン生まれ。草野心平、中原中也らが創刊した「歴程(れきてい)」の同人。日本現代詩人会会員。2009年第8回詩と創造奨励賞受賞。詩集「七番目の鉱石」(15年、思潮社)で16年、第26回日本詩人クラブ新人賞受賞。詩集に「やさしい窓口」(09年、土曜美術社出版販売)、「うす青い器は傾く」(12年、思潮社)。





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Author:gogotamu2019
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