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【特集】12年間、刑務所に服役も…覆る”殺人事件”「捜査のヤミ」を追跡取材(2020年1月31日配信『関西テレビ』)

2月に始まる注目の「再審」…“やり直し“の裁判。

2003年、滋賀県の病院で入院患者を殺害したとして、元看護助手の女性が12年間も刑務所で服役しました。

しかし、その「殺人事件」の存在そのものが覆り、女性に「無罪」が言い渡される見通しになっています。

その背景にある「捜査の闇」を追跡取材しました。

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「自白」が決め手で…12年間、殺人罪で服役

1月11日、多くの参拝客に交じって、1人の女性が初詣に訪れました。

西山美香さん(40)。
――Q:どういったことをお願いした?

「家族みんなが仲良く、そして無罪判決をもらえるように…」

今年は、長年苦しめられてきた”冤罪”を晴らす、特別な年です。

【西山美香さん】
「あ、大吉ですわ!いいことありそうですね。持って帰ってお母さんに見せますわ」

西山さんは、滋賀県の湖東記念病院の看護助手だった2003年、男性患者の人工呼吸器のチューブを外し殺害したとして、24歳の時に逮捕されました。

犯行を目撃した人や物的証拠もないなか、逮捕の決め手とされたのは、「捜査段階の自白」でしたが…。

【西山美香さん(2017年取材)】

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「(患者が)亡くなられた時の写真を机に並べて、『これを見て何も思わないのか、責任を感じないのか』と。厳しい取調べを受けていたから、『否認しても無理や』と思って、この人(刑事)の言うことを聞いておかないと、痛い目に遭うと思って、自白した」

厳しい取調べから逃れようと、やってもいない殺人を”自白”。
さらに、取り調べの刑事に「好意」を抱いてしまい、警察が描いたストーリー通りに供述したというのです。

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その後、西山さんは裁判で無罪を主張しましたが…

裁判所は、司法解剖を行った医師の鑑定書から、男性患者の死因は「人工呼吸器のチューブが外されたことにより、酸素の供給が途絶えた結果」と判断。

そのうえで、捜査段階の自白についても、供述調書などから「信用できる」として、懲役12年を言い渡し、西山さんは37歳まで服役しました。

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担当の刑事ではなく…「滋賀県警」への恨み

これに納得できない西山さんは、獄中から再審(=裁判のやり直し)を求めていました。

その結果…

【記者リポート】

「”再審開始決定”と書かれた文字が大きく掲げられました!」

3年前、大阪高等裁判所は、弁護側が提出した死因に関する新証拠から、「患者が自然死した可能性がある」と指摘。

西山さんの自白についても「警察官などから誘導され、迎合した可能性がある」として、裁判のやり直しを認めたのです。

『殺人事件の存在』そのものに疑問を投げかけた、大阪高裁の決定。

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西山さんは現在、支援団体の集会への出席を通じて、冤罪被害の実態を伝えています。

【西山美香さん】
「うまいこと私の好意を手玉にとった刑事なので、恨んで恨んで恨み倒したらいいというが、その刑事は恨んでいない。でも滋賀県警のやり方に対しては恨んでいる」

“ウソの自白“をさせた刑事ではなく、滋賀県警に対する怒りを露わにするのは、ここ最近明らかになった「重大な事実」が、大きく影響しているのです。

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【西山さんの主任弁護人・井戸謙一弁護士(去年4月)】

「事件が起こってから、西山さんが自白するまでの約1年2か月の間に収集された捜査資料が、ほとんど証拠提出されず、検事の手元で眠っている」

西山さんの弁護団はやり直しの裁判に向け、これまで明らかにしていない「証拠」を出すよう、検察に強く求め続けてきました。

すると去年10月、西山さんが逮捕前に人工呼吸器を故意に外したことを「否定した」自供書の存在が明らかに。

さらに、出てきたのが…

<他殺を”否定する”捜査資料――>

患者を司法解剖した医師が「チューブ内で”たん”が詰まったことが原因で死亡した可能性がある」、つまり他殺ではない可能性があると警察に話した、重要な捜査資料が見つかったのです。

しかもこの資料は、やり直しの裁判が決まった後の去年7月になって、滋賀県警が初めて、検察に送ったものでした。

【井戸謙一弁護士(去年11月)】

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「これは、検事が起訴・不起訴を適切に判断するうえで重要な証拠だと思う。これが検事の目に届いていなかったのは大きな問題だし、(当時、検察に送らなかったことに)意図的なものがあるのではないかという疑いを抱かせる」

【西山美香さん】
「滋賀県警は汚いやり方をするんだと。自分たちの都合が悪い情報は今まで隠してきて。(隠している証拠が)まだまだたっぷりあると思うんです」

関西テレビは、こうした資料を当時、検察に送らなかった理由などについて、滋賀県警に質問状を送りましたが、回答は…

<今後、再審公判が予定されていることから、すべての質問に対し、お答えを差し控えます―>

長年、警察の手で闇に葬られていた、西山さんにとって“有利な証拠“。

これで、真相解明に一歩近づいたか、と思いきや…

【井戸謙一弁護士】

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「検察官は開示を拒否しました」
「大きな壁にぶつかった」
「真相はやぶの中」

検察は、これまで開示されていなかった証拠が約480点あることを”一覧表”として弁護団に明らかにしたものの…開示したのはわずか180点ほど。

約300点もの証拠が、いまだ検察の手元で眠り続けているのです。

開示されない証拠…背景に「検察の驕り」?

なぜ、証拠を開示することに、検察は後ろ向きなのでしょうか…?

検察官を12年務めた市川寛弁護士は、その理由について、「自分たちは間違っていないという”驕り”にある」と分析します。

【元検察官・市川寛弁護士】

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「検事が全部正解を出している。弁護士は邪魔、裁判官は俺の言っているようにやっていればいいという、思い上がりの発想。そういう意味で、証拠を見せないのはなぜかというと、弁護士に見せると、正しい証拠が破壊されると思っているから。それは検察庁の教育の賜物。検察官は全部証拠をみている、というのが前提だが、まさに反証となるのがこの事件。(警察が未送致だった証拠があり)全部見ていないじゃないかお前、となったじゃないですか」

2004年に逮捕されてから服役を終えるまでの13年間、自由を奪われ続けた西山さん。

【西山美香さん】
「まだもうちょっと感覚が…向こうの世界というか、刑務所の方に行っているかなという場面があるかなと」

やり直しの裁判では、検察が有罪の立証を事実上、断念したことから「無罪」が言い渡されることが確実となっています。

一方で、なぜ”冤罪”に巻き込まれたのか…?
その真相を解明することは、証拠を開示しない捜査機関が「大きな壁」となって、阻んでいます。

【西山美香さん】
「警察や検察がやることはそういうことだから、仕方ないとあきらめていたので、あ、やったんだと思うしかない。諦めモードに入っている」

――Q:再審で(真相が)明らかにできないのは?
【西山美香さん】
「それは心残りですね」

2月から、ようやく始まる裁判。

しかし、わずか2回の審理で、判決が言い渡される予定です。

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冤罪の真相解明を阻む「証拠開示の壁」

裁判で懲役12年を言い渡され、服役までしたにもかかわらず、やり直しの裁判で「無罪」が言い渡される見込みの西山さん。民間企業でもし、重大な不祥事が起きた場合は、第三者委員会を設置するなどして、徹底的に原因究明にあたるのが普通です。

しかし、司法の場では「なぜ冤罪が起きたのか」の原因究明が出来ない現状となっています。

その理由は、検察が証拠開示に後ろ向きだからです。

今回のやり直しの裁判でも、検察は当時有罪を言い渡した裁判にも提出していなかった証拠が、全部で480点あることを“一覧表“として弁護団に示しましたが、開示されたのはわずか180点に留まっています。

通常、自分たちが正しいという絶対の自信があれば、他の人にも見せても何ら問題がないはずです。

にもかかわらず、検察がそれをしないのは、むしろ開示していない証拠のなかに、西山さんの「無実」を証明する証拠があることを事実上、認めているようにすら思えます。

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では、こうした状況を改めるには、どうしたらいいのか?

甲南大学の笹倉香奈教授は「“再審法”の整備」を訴えていて、検察がすべての証拠を開示することを義務付けるような法改正が必要としています。

というのも、いまの刑事訴訟法には、再審における証拠開示や、そもそもどう進めていくか、というルールすらありません。つまり、現状では証拠開示がされるか・されないかは、裁判所の“さじ加減”に大きく左右されてしまっています。

そのため、証拠は全部出すことを法律でルール化すれば、当然弁護側も同じものを目にすることが出来、複数の目でチェックすることが出来るようになり、真相解明も可能になるのではないかと、笹倉教授は指摘しています。

冤罪で有罪を言い渡され、その後やり直しの裁判で「無罪」を言い渡されるケースは、今回の西山さんを含め、後を絶ちません。

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負の連鎖を断ち切るためにも、再審を「冤罪の真相究明の場」とする制度作りが、一刻も早く求められます。

カンテレ「報道ランナー」 2020年1月30日放送 「特命報道ツイセキ」より




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