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呼吸器事件再審 冤罪の闇に十分な光を(2020年2月4日配信『東京新聞』-「社説」)

 「呼吸器事件」の再審が、大津地裁で始まった。無理な捜査、虚偽自白、証拠開示の遅れ-を乗り越え、3月にも無罪判決の運び。半面、冤罪(えんざい)を生んだ経緯の検証は短期間の法廷では困難になった。

 3日の再審初公判で、元看護助手西山美香さん(40)は、きっぱりと無罪を主張。検察側は短時間の冒頭陳述で「新たな有罪立証はせず裁判所に適切な判断を求める」と早口に。西山さんへの被告人質問は「特にありません」で終わり、有罪立証は断念された。

 来週の第2回で結審し、3月の判決公判で無罪が言い渡されるのは確実だ。西山さんが待ち続けた「名誉回復」が近づいている。

 ただ、検察が求めた早期の結審・判決は「西山さんはなぜ冤罪に陥れられたか」を法廷でじっくりと検証できず、背景の追及ができなくなることも意味する。

 事件を振り返る。2003年5月、滋賀県の病院で男性患者が死亡。西山さんは「人工呼吸器のチューブを外した」と自白し、殺人容疑で逮捕された。公判で否認したが懲役12年が確定し、服役した。患者の死因は低酸素状態(窒息)による急性心停止とされた。

 しかし、第2次再審請求審で大阪高裁は「事件ではなく、不整脈による自然死かも」「供述が目まぐるしく変遷する自白調書に信用性はない」と再審開始を決定。昨年3月、最高裁で確定した。

 その後、検察は迷走する。同四月、いったんは「再審での有罪主張」を表明した。だが「呼吸器を故意に外していない」との西山さんの自供書や、他殺でない可能性ありとの鑑定医の所見を載せた捜査報告書が滋賀県警から送られていなかったことが判明した。

 いずれも捜査側に不利な書類。受け取った検察側は10月、これらを弁護側に開示し、有罪立証を事実上あきらめる方針も伝えた。

 (1)軽い知的障害のある西山さんは刑事の取り調べに誘導されて殺人を自白してしまった可能性がある(2)患者の死因の不審点が見過ごされた(3)警察・検察側に不利な証拠が開示されなかった-。冤罪のたびに指摘される「刑事司法の闇」が今回も輪郭を表した。

 まずは、西山さんの無罪の見通しを喜びたい。しかし、3回で終わる再審公判では、刑事司法のよどみや曇りを十二分に解明できないだろう。弁護団は、国家賠償を求める民事訴訟を検討しているとも聞く。せめてそういった場で、冤罪が生まれる構造に光が当てられることを望みたい。




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