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ハンセン病問題の啓発 熊本モデルをつくりたい(2020年2月3日配信『熊本日新聞』-「社説」)

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5年に及ぶ協議の内容をまとめた報告書を承認した県ハンセン病問題啓発推進委員会=1月29日、熊本県庁

 ハンセン病問題の啓発のあり方を検討してきた「県ハンセン病問題啓発推進委員会」(委員長・内田博文九州大名誉教授)が、5年間にわたる協議をまとめ、報告書を蒲島郁夫知事に提出した。

 昨年のハンセン病家族訴訟熊本地裁判決によって、改めて偏見差別を根絶する啓発活動の強化が迫られている中での報告である。提案された理念と具体策を基に、行政と各界が広く連携し、全国をリードするような熊本モデルをつくりたい。

 現在進行形の問題

 報告書では、ハンセン病問題を「過去のものとして清算されたものではなく、未解決のまま存在する現在進行形の問題」と位置付けた上で、国の強制隔離政策に「官民挙げて関わってきたことを忘れてはならない」と、行政と民間がともに加害の当事者であったことを強調。ハンセン病問題の解決は「国や地方公共団体、各界そして県民一人ひとりの責務である」とし、「教訓を風化させないためにも不断の啓発が必要である」と訴えた。

 熊本では、日本最大規模の強制収容である「本妙寺事件」(1940年)、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(合志市)入所者を親に持つ子どもたちの就学が拒否された「黒髪校事件」(53~55年)、県のふるさと訪問事業を巡る「宿泊拒否事件」(2003年)など、数々の偏見差別の歴史を重ねてきた。

 一方で、ハンセン病違憲国賠訴訟(01年)とハンセン病家族訴訟というともに熊本地裁で下された判決が、これまでの負の遺産を乗り越え、ハンセン病問題の解決に大きな影響を与えた。

 歴史を学び教訓に

 「二度と過ちを繰り返さない」ためには、こうした人権侵害と回復を重層的に刻んできた熊本の歴史を学び継承し、教訓として生かしていくことが必要だろう。これは、今回の報告書の前提となった県設置の「『無らい県運動』検証委員会」報告書(14年)が、既に指摘したことである。

 今回の報告書ではそのためにも「入所者らが人権をどう守り、闘ってきたか」を学ぶことの重要性を強調。入所者の高齢化を踏まえ「語り部機能」の維持を喫緊の課題とし、具体策として証言の記録化や伝承者の育成を挙げている。

 証言の記録化については恵楓園の社会交流会館が、伝承者の育成については入所者と支援者によるボランティアガイド養成講座が既に行っているが、行政と各界が連携して支援し、さらに拡充することが必要だ。

 入所者だけでなく家族も語ることのできる環境づくり、入所者の話を聞いた人たちが、単なる受け手でなく主体的な伝承者となる仕組みなどを構築したい。特に次世代の啓発を担う教育者の研修充実は必須である。また、恵楓園に残された貴重な資料の公開・活用方法も早急に検討すべき課題だ。

 報告書は国の隔離政策の一端を担った医学、福祉、マスコミなど各界にも努力を求めた。それぞれが加害の当事者であったことを認識し自省することを、啓発の輪を社会に広げる当事者となるための原点とすべきだろう。

 マスコミにも課題

 マスコミに対しては、ハンセン病問題報道を一過性のものとしない持続的な取り組みと、読者、視聴者をミスリードしない冷静な分析力を課題として挙げた。一方で、マスコミと学校が連携するNIE(教育に新聞を)の取り組みについて「(人権教育についても)高い効果が得られるのではないか」と期待を掛けた。

 熊日はこれまでも啓発推進委の活動に協力してきたが、報告書の指摘を重く受け止め報道活動などに取り組み、ハンセン問題解決の社会的責務を果たしていきたい。



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「熊本県ハンセン病問題啓発推進委員会報告書」➡ここをクリック



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